長崎県ゆかりのファッションデザイナー 山縣良和さん(42) 長崎との結び付き感じて

「自分のルーツと結び付けたファッション表現を続けていきたい」と話す山縣さん=長崎市、県美術館

 長崎県で幼少期を過ごしたファッションデザイナー、山縣良和さん(42)が昨年12月、長崎から着想を得て制作した作品の展覧会を県美術館で開いた。新型コロナウイルスの影響で本格的なコレクションの発表は約2年ぶり。作品制作や自身のルーツへの思いを聞いた。

 -自身がデザイナーを務める「writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)」はどのようなブランドか。
 ファッションの歴史をひもときながら、ファッションが持つ可能性やいとおしさを表現している。近年取り組んでいるのは素材の分解性に着目した作品作り。デザインや物づくりの分野では大量生産や大量消費の価値観が広がったが、以前からそのシステムに息苦しさや疑問を感じてきた。そんな中でコロナ禍となりショーや生産などの動きが止まった時、素材や生命の循環に向き合いたいと考えるようになった。紙の布など土に帰る素材を使うことで始まる新しいストーリーをデザインに取り入れようと考えている。

 -最新コレクションのうち約20点を県美術館で先行展示した。作品を手掛ける過程で大事にしたことは。
 普段の自分の物づくりではファンタジーの要素が(作品に)出てくることが多いが、リアルに向き合うことを大切にしてきた。例えば、シルクロードのリサーチをした際に五島列島が歴史的に関わっていることを知ったため、養蚕で使われていた袋をコレクションの衣服の一部に取り入れた。一つ一つの作品が長崎とひもづいている。

 -制作を通じて感じたことは。
 コレクションに合わせて長崎のさまざまな場所を訪れたが、文化や宗教が混ざり合って共存する長崎の特殊性に気付いた。さまざまな文化がこれほど混在する町は他にはなかなかない。加えて(生地の鳥取県や本県などさまざまな場所で暮らした)自分自身もさまざまな要素で形成されている感覚が年々強くなっている。長崎という土地が持つ特別な融合感や寛容さを通じて世界に伝えられることがあるかもしれないと感じた。

長崎から着想を得た山縣さんのコレクションの作品=長崎市、県美術館

 -今後、本県にどう向き合っていきたいか。
 長崎にルーツがあるファッションデザイナーとして新しい物語を描く試みを続けたい。特に五島列島は今後注目したい土地。父親の出身地である島原半島とは潜伏キリシタンの歴史という接点があり、何かしら自分とつながりがある場所ではないかと考えている。長崎との結び付きを感じてもらいながら、「こんなファッション表現が日本にあったのか」と思ってもらえる活動をしていきたい。

 【略歴】やまがた・よしかず 1980年鳥取県生まれ。2005年にイギリスのセントラル・セント・マーティンズ美術大学を卒業。07年に自身のファッションブランド「writtenafterwards」を設立し、国内外で高い評価を受けてきた。表現の実験と学びの場としてファッションスクール「coconogacco」を主宰し、教育活動にも力を入れている。


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