レストラン亀遊亭 ~ 観光地ならではのおもてなしを。和風建築の洋食レストラン

倉敷の代表的な観光地、倉敷美観地区。

町並みと柳並木が美しい場所です。

白壁の建物が並び、古いものは江戸時代に建てられたものも。

建物を改装して、土産屋や飲食店などを営業しています。

古民家の飲食店は一見すべて和食店に見えますが、洋食店であることも。

そのひとつ、「レストラン亀遊亭」も外観は和食店ですが、メニューは洋食です。

では、倉敷美観地区のメイン通りにある洋食「レストラン亀遊亭」を紹介します。

亀遊亭の場所について

レストラン亀遊亭(以下、亀遊亭)がある場所は倉敷美観地区の入口近く、倉敷川畔にあります。

倉敷美観地区のメイン通りが倉敷川沿いの通りなので、非常に立地がいい店です。

亀遊亭のすぐ隣には2匹の白鳥がすいすい泳いでいて、ちょっとした撮影スポットに。

倉敷美観地区のアイドル白鳥、ユメとソラです。

ユメとソラの向かいには、日本初の私立の西洋美術館「大原美術館」が鎮座。

見どころが集中している場所にあるのが亀遊亭です。

亀遊亭の建物について

では、亀遊亭の建物を紹介しましょう。

手入れが行き届いている白い塀に囲まれ、門も立派な出で立ち。

和風建築の外観から想像がつかないかもしれないですが、亀遊亭は洋食レストランです。

建物自体は1911年に建てられましたが、初めから飲食店ではありませんでした。

現在はJR倉敷駅近くの倉敷市鶴形の地にある、倉敷教会の会堂だったそうです。

レストランとして開業したのは1978年。

店のパンフレットを見ると、教会の会堂時代と現在と外観はほとんど変わっていないとわかります。

建物内に入ると、すぐ正面にはオープンキッチンがあります。

和の外観から予想もしなかったオープンキッチン!

和と洋が融合している内観です。

建物は細長く、奥へ奥へと客席が並んでいます。

テーブルの間の仕切りには、倉敷帆布を用いていておしゃれ。

2階は完全予約制の特別室で「川蝉(かわせみ)」の名前が付けられています。

窓からは倉敷川と大原美術館がちらり。

何度も倉敷美観地区を訪れている筆者ですが、この眺めは初めて!

川蝉に入らないと見ることはできません。

撮影日は雨でした。晴れの日や夕暮れ時も美しいそうです。

4~8名が利用できる長テーブルが部屋の真ん中に。

無垢材の一枚板です。

個室なので優雅な時間を過ごせそうですね。

亀遊亭のメニュー

亀遊亭の食事は幅広い年代から愛される洋食メニューです。

美星豚のポークステーキや大きなエビフライ、ハンバーグなどがあります。

2023年(令和5年)4月時点の情報。価格は消費税込

亀遊亭の目玉商品、倉敷流オムハヤシ

どれにしようか迷いますが、まずは亀遊亭の目玉商品「倉敷流オムハヤシ」を選ぶことに。

若いかたを中心に人気メニューとなっているそうです。

サラダとスープ付き

チキンライスにふわっとかけられている半熟卵はとろっとろ。

たっぷりと注がれたハヤシは創業時から40年受け継がれる伝統のもの。

昔ながらの味と現代的なふわふわオムライスを融合させたメニューです。

半熟卵を絡めて、ぱくり。

トマトの甘みがするハヤシで、40年間愛されていることに納得します。

地元食材を使用した洋食メニュー

期間限定の「スペシャルランチ」も食べました。

時期によって、メインが変わります。

2021年12月に食事したときのメインは、美星ポークのグリルでした。

メインに本日のスープ、サラダ、パンまたはライスが付きます。

岡山県の牛窓産マッシュルームのキノコソースがかかっています。

美星ポークは名前のとおり、岡山県の美星町産。

程よく脂がのっていて、肉の旨みをしっかりと感じられます。

しっかりと焼かれていますが、すっとナイフが通るほど柔らかい!

地元の食材をたっぷりと使用したランチでした。

観光地、倉敷美観地区のメイン通りに面する亀遊亭。

観光客も地元客も訪れる亀遊亭の店長・馬越 鉄也(うまこし てつや)さんにお話しを聞きました。

亀遊亭の店長・馬越 鉄也さんにお話を聞きました

1978年に開場した亀遊亭。

運営は倉敷国際ホテルです。

倉敷国際ホテルに入社しすぐに亀遊亭に配属され、その後は他の部署も経験し、現在は店長の馬越 鉄也(うまこし てつや)さんにお話を聞きました。

インタビューは2022年1月の初回取材時に行った内容を掲載しています。

こだわりは地産地消

──地産地消にこだわっているとのことですが?

馬越(敬称略)──

ゴボウやレンコンは岡山県産のものを使用するようにしています。

カツカレーやポークカレーのお肉は美星のものですね。

ポークカツカレー(提供:亀遊亭)

店が観光地にあるので、なるべく地元産の食材を使用するようにしています。

お客様は観光客のかたが8割です。

ランチいただきます(倉敷観光コンベンションビューロー主催の食のイベント)のイベントに参加している期間は地元のかたも増えますが。

亀遊亭は運営の倉敷国際ホテルの名前を掲げて料理を提供しています。

ホテルの名前があることで、観光客のかたに安心してご利用していただいているようです。

倉敷国際ホテルは倉敷美観地区に隣接した、倉敷を代表するホテル

ただ私たちはホテルよりはもう少しカジュアルにと思っておりますので、お子様にも楽しんでいただけるメニューをそろえています。

そのためカレーやハヤシライスなどがあります。

創業以来、変わるものと変わらないこと

──創業当時から変わらないものはありますか?

馬越──

私は18歳で倉敷国際ホテルに入社してから40年間働いています。
入社の4、5年前に亀遊亭ができました。

私が亀遊亭に配属した頃、今の建物の半分は民家だったんです。

民家にお住まいだったかたがお亡くなりになって、当ホテルが買い取ることになりました。

そののちに改装して、現在の大きさに。

写真の部分は元々民家だったそうです

変わらないことでいえば、門構えと建物全体の外観です。

伝統建造物保護条例により外観が変えられないからです。

入口のアーチ型の瓦も変わっていません。

店内はオープンキッチンですが、創業からこちらも変わっていないですね。

当時から、とくにこの美観地区辺りでは珍しかったと聞いております。

棟方志功氏の作品も最初から壁に掛けております。

亀遊亭の店名は、この書の「亀遊」から付けました。

チューリップランプも変わっていないです。

数は増築に合わせて増やしていますが。

これは特注なので、割らないように気を付けています。

お客様のなかには、このレトロなランプを珍しく思われて写真を撮られることも。

電球の色は蛍光灯の白色ではなく、昼白色にしています。

光が白色よりも昼白色のオレンジがかったほうが、よりお料理がおいしく見えるからです。

──創業当時から変わったことはありますか?

馬越──

この建物は、教会とその集会所と、そして幼稚園だったときもあるようです。

店を増築した際に、2階の特別席がご提供できるようになりました。

4年前(2017年)にも改装し、靴を脱がずにそのまま2階へ上がっていただけるように。

メニューはオープン当初から残っているものもあります。

ビーフシチューやカレー、ハヤシライスが残っていますかね。

ビーフシチュー(提供:亀遊亭)

あとは失くしたメニューが復活することも。

昔はステーキハウスとして営業していたころもありました。

ステーキハウスにしているとステーキが中心に思われてしまいますよね。

しかしみなさまに食べていただきやすい、親しみやすい店をと思いレストランにしました

観光客のかたでしたら余計にステーキハウスよりレストランのほうが入りやすいですよね。

川舟ステーキ膳(提供:亀遊亭)

ただ、良くも悪くも立派な門構えなのでお客様が入りにくくなっているようですけどね。

倉敷流オムハヤシは3年ほど前(2018年)に亀遊亭の目玉商品をと考えて誕生したメニューです。

メニュー自体は新しいですが、オムライスにかけているハヤシは昔からあるものを使用しています。

とろとろの卵に昔ながらのハヤシをかけてご提供させていただいています。

観光地にある店ならではの店づくり

──今後の展望を教えてください。

馬越──

忙しい日々のなかで、亀遊亭で食事をしてやすらぎの時間を過ごしていただきたいですね。

そして倉敷の町並みなども一緒に楽しんで、少しでもいい旅行にしていただけたらなと。

今よりももっと、お客様に親しみをもって楽しく食事をいただけたらと思っています。

明るい店づくりをしたいです。

倉敷に来て、亀遊亭で食事してよかったと思って、感動していただける店にしていきたいなと。

料理がおいしいと言っていただけるのが一番いいんですけどね。

料理のおいしさって店の雰囲気が大きく関わってきませんか。

いくら料理がおいしくてもそこで働くスタッフがよくなければ、満足度が半減しますよね。

そのため料理のおいしさはもちろん、お客様に岡山・倉敷に来てよかったと思っていただけるために、店の明るい雰囲気づくりも大切だと思っています。

ですから親しみを持っていただけるよう、方言を出せるときは出すように。

市のおもてなし処に認定されています

方言を使うことは、岡山・倉敷に来てよかったと思っていただける、ひとつの方法なのかなと思っています。

その地の方言で話しかけられたら和むじゃないですか。

でも崩し過ぎはよくないので、お客様の反応を見ながらポロッと出しています。

お客様と適度な距離を取りつつ、方言を使うことを普通にできるようになれば、店の雰囲気が明るくなるのではないでしょうか。

そしてお客様に「倉敷に、亀遊亭に来てよかった」と思っていただけるかと思います。

おわりに

取材をする前までは、観光地にある店のおもてなしとして「地元をPRするために地産地消にこだわっていること」が頭に浮かびました。

亀遊亭では「方言を使う」こともお客さんに対するおもてなしだと知りました。

観光地にある店ならではの考えではないでしょうか。

観光客も地元客も「倉敷に、亀遊亭に来てよかった」と思える店づくりをする亀遊亭に行ってみてはいかがでしょうか。

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