オリ宮内オーナー、阪神との日本Sを期待 「もう一つのチームに頑張ってもらって」

今シーズン限りでオーナー職を離れることを発表した宮内義彦オーナー【写真:橋本健吾】

「日本シリーズを負けた後の悔しがり方を見ましたが、それは決してマイナスではない」

オリックスの宮内義彦オーナーが21日、京セラドームで会見を行い、今シーズン限りでオーナー職を退くと発表した。1988年11月から、ここまで33年間と長きにわたりオリックスを見守って来た宮内オーナーの一問一答は以下の通り。

――なぜキャンプ前に勇退を発表したのか

「理由は特にない。次の世代に渡したいとここ数年間、考えていた。ところが最下位チームのオーナーが辞めるのは、こんなに面白くないことはない。優勝ということであれば良いなと。個人的、願望としても今シーズンでおしまい。何が何でも日本一になって胴上げしてくれないかなと。選手がどう思うか分からないが(笑)。シーズン前に言っておこうと」

――今年は日本一に期待?

「それが理想です。明日のことは分からないが。理想は中々、難しいがハッパをかけたい」

――今後、球界にはどう関わっていくのか?

「去年はオーナー会議で議長をやった。今年は巨人の山口さんだね。オーナー会議では私も長くなる。色々な事情、過去の経緯などご存じない方もいる。そういったところで役に立つのではと。お手伝いは新しい人より、古い人の方がやりやすい。具体的なことはないが、何かあれば」

――昨シーズンは25年ぶりにリーグ優勝

「私はオーナーですが、熱烈なファンでもある。ファンの目線で言うと、チームが低迷すると『今シーズンはもういいや!』という諦めになる。これまで夏頃には、今シーズンでいいやということが何度もあった。昨季は最後の最後まで緊張感があった。日本シリーズは負けたが、本当に高校野球をそのまま持ってきたような試合をやってくれた。周囲の話を聞くと、物凄くいい試合だったと。プロ野球にとっては良い日本シリーズだった。最後の回まで緊張した、非常に稀有なシーズンだった」

――チームの強さとは?

「勝っていくと次は負けたくないというガッツがでた。パ・リーグは均衡していたし、どのチームが勝ってもおかしくない。最後まで執念があった、執念があるチームは強い。今シーズンも持続してほしい。諦めてしまうチームは落ちていく。(過去には)そういう癖があったかもしれない。監督、指導者がそれじゃダメだという指導をしてくれた、選手も勝つという思いがあった。日本シリーズを負けた後の悔しがり方を見ましたが、それは決してマイナスではないと思う」

中嶋監督の手腕を絶賛「やはりプロフェッショナルな監督」

――昨年はリーグ優勝時に胴上げも経験

「25年前にも(胴上げを)してもらっている、それから(時間が)経って『今度はオーナー胴上げする』と言っていた。なかなか良いものでした」

――中嶋監督の手腕について

「これまで、ずいぶん沢山の方に監督をしてもらった。本当に皆、頑張ってもらった。その中で中嶋さんは、やはりプロフェッショナルな監督。選手生活が長く、コーチ歴も長い。尚且つ、武者修行でアメリカで勉強していた。指導者としてのベースをきっちり学んできた。選手じゃなく指導者としての中嶋監督は、きっちりと教育を受けてきた。最初は2軍監督をお願いして、(2020年の)途中で急遽、1軍をやれと。ビックリしたと思うが、そういう意味では2軍の選手を知っていたことが大きい。他の人ならああいう形はできなかった。この差は大きい。指導者としてのベース、実戦を戦うバックグラウンドが両方合致した」

――選手の成長も大きかった

「いつも監督やコーチには、若い人で野手、投手1人ずつ化ける人を作ってくれと言っていた。それはなかなか難しいのに、去年はたくさん化けた。予想以上に活躍してくれた選手がたくさんいてくれた。そういう意味では、化ける選手がちょうど孵化する時期だったのかも。若い選手が出てきて、そのまま活躍することは、今まであまりなかった。おそらく指導者の力、選手の潜在能力が合致したのだろう」

――裏方、フロント、メディアなど企業努力もあった

「裏方の隅々まで、盛り上げようという意識が大きかった。全体が底上げして最後に実った。この力を継続することが大きな課題。継続してさらに伸ばす、あつかましいがそう思っている」

――今年のチームへの期待

「選手は去年のシーズンで、もの凄い疲れたと思う。疲れがあり2年間連続して活躍できなかった選手も、さらに伸びた選手も見てきている。そういう意味ではうちのチームは若い。疲れてへたるんじゃなくて、さらに伸びるのを期待している。それがあれば私はもう1度、胴上げしてくれると信じている」

吉田正は「稀有な才能を持っている」山本は「七色の魔球、現代版」

――やり残したことは?

「スポーツはエンターテインメント。ビジネスとして成長途上にある。長い目で見るとスポーツはビッグビジネスになると思う。野球だけじゃなく、たくさんのプロスポーツがあって、競技間競争になると思う。今は野球が圧倒的な支持を受けているが。欧米のプロスポーツは日本より発展している。一つのスポーツが一つのビジネス。アメリカでいうとMLBは30チームで1つのビジネスという考え方が浸透している。その上で30チームの努力と、双方があると伸びる。日本の場合は12球団が自己努力していて、共同で頑張ろうというのは少なかった。一緒になって頑張ることが、今後のスポーツビジネスに置いて一番重要なのだろう。侍ジャパン、パ・リーグTVがいい例だ。12球団の努力が続けば、チャンピオン競技として続けていける。野球ほど日本人に合っている競技はない。それに相応しい経営をしていく」

――吉田正尚、山本由伸がイチロー並のスターになる期待感は?

「技術的なことは分からないが、吉田選手はシーズン最後に怪我をして残念な状況だったが本当にリーディングヒッターとして頑張ってくれた。彼の力強さ、おそらく両リーグを通じ稀有な才能を持っている選手。人が真似できない、まだ伸びるんじゃないかなと。年齢からいっても伸びしろはあると思っている。山本選手については、七色の魔球の現代版じゃないかなと。1つ1つの球の完成度が高い。この技術は才能か分からないが凄いなと。スピードも。日本を代表する選手、チームとして非常に嬉しい。この2人をみると非常に安定度が高い、まだ上にいくと思っている」

――どの世界にいっても2人の活躍は見てみたい?

「オリックスに縁のあった人は。今でもイチローとは付き合っている、そういう関係はずっと続く。(吉田正、山本の)2人に関しては、(オリックスに)ずっといるという前提で考えている」

――勇退のタイミングはどう決めたのか

「誰にも相談しておりません。家族はいつかそういう日がくると思っていたのでは。決めたのは年末、お正月ぐらいかな。ちょうどいいなと思ったのは。シーズンが終わった直後は日本一まで行こう(続けよう)と思っていたが。冷静に考えると、そこまで思っちゃいかんと。皆さん、オーナー会議は若い人ばかり。色々と考えると思うじゃないですか(笑)」

イチロー氏について「野球少年が立派に育った。彼も若い、色々なところで活躍してほしい」

――ファンからは熱心なオーナーだと言われている

「本当に野球が好きだと。最高峰のプロ野球で、一つのチームを持たせてもらえるのは本当にありがたいこと。阪急ブレーブスのファンがいて、神戸のブルーウェーブのファンを作り、近鉄と合併して大阪のファンにも一緒に応援してもらえる。複雑なファン層だったと思うし、気持ちの面で大変ご負担をかけ申し訳ない面もあるが、ファンはだんだん心を一つにしてもらえたんじゃないかと思う。気持ちとしては今のチームを応援してもらえている。今、関西には2チームしかない。セ・パで一つずつはバランスが取れている、切磋琢磨するのはいい。両方のファンはいない。もう一つのチーム(阪神)にも頑張ってもらって日本シリーズやってもらいたいなと。こういう大口を叩くオーナーです。はっはっは(笑)」

――オリックスの今後

「チームとして、地域密着が一番大事。震災の時に地域密着が評価されたのは大変良かった。私も震災直後に神戸へ行ったが、球団はこれはもう神戸で試合やるのは不可能だと思って、一生懸命空いてる球場を探していた。その話を聞いて違和感を持った。『それは違う、今こそ神戸でやらないと意味がない。お客さんが来なくていいからスケジュール通りでいこう』と。結果的に、震災の中でたくさんのお客さんに来て頂いた。選手も励まされたのは印象深い。エンターテインメントの鍵は地域密着と認識させてもらった。オリックスは関西、大阪に、何かプラスになることをやることに尽きる」

――イチロー氏について

「ここ最近はコミュニケーションがないが、彼が入ってきて2軍のバッティング練習しているときから鮮明に覚えている。大選手に育ってくれた、努力と才能。野球が大好き。プラス仰木監督の慧眼。世界的な選手になって言うことはないが、個人的には義理堅い人間です。色々と垣間見えた。野球少年が立派に育った。彼も若い、色々なところで活躍してほしい」(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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