現代学生百人一首

 はくしょん。しまった。途端にみんなの視線が突き刺さる。もちろん「しんがたコロナ」のせいだ。〈やすみじかん/くしゃみをするといっせいに/じろみをされてうごきがとまる〉と教室の緊張感を詠んだのは南島原市立布津小4年の大平桃聖(ももせ)さん▲同じ学校の山下昴さんは〈弟はへんなおどりをするけれど/みんながいうよぼくににてると〉。「血は争えない」って聞いたことあるかな。倒置法が効いてる。新上五島町立青方小6年の吉田歩華(あゆか)さんは〈妹が回転花火に火をつけた/目が回るほど怖がっていた〉。妹を見守る姉の目が優しい▲東洋大学が主催する「現代学生百人一首」、今年は小学生の部の入選作品に県内からの応募作が3首並んだ▲高校生の作品も3首。聖和女子学院高・前田智花(ちか)さんは〈蝉時雨ポニーテールのうなじ灼く/コーラの瓶当て涼む午後二時〉と真夏の日差しを31音に。長崎女子高・木屋希芽(のどか)さんは〈鐘の音街中響く爆竹と伝統つなぐ精霊流し〉とふるさとの夏を▲長崎女子高・畑地夢愛(ゆめあ)さんの〈今晩も筆を走らす受験前/雪の代わりにスマホの光〉は令和版の“蛍雪の功”だろうか。勉強の場でも広がる動画やアプリの存在感▲コロナが変えてしまったもの、負けずに変わらないもの。短い詩型にぎゅっと詰まってきらっと光る。(智)

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