保健所「もはや限界」 コロナ感染急拡大の佐世保 疫学調査、人手が足りず 現場から悲痛な声

急拡大する新型コロナの対応に追われる佐世保市職員=市中央保健福祉センター(画像の一部を加工しています)

 新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」が長崎、佐世保両市に適用された。驚異的なスピードで「第6波」が広がる中、陽性者の入院・療養調整や健康観察などを担う保健所は対応に忙殺されている。「もはや限界にある」-。県内でいち早く感染が拡大した佐世保市の現場からは悲痛な声が上がっている。
 今月10日まで感染者数の発表が7人以下で一定落ち着いていた同市。翌日、約5倍の36人に跳ね上がり、過去最多を更新すると、15日にはその倍の72人に膨らんだ。18日には100人を突破。県都の長崎市より先に波が襲った。
 佐世保市が保健所を置く市中央保健福祉センター。新型コロナ対応の拠点がある8階では11日以降、ひっきりなしに電話が鳴る。体調不良を訴える市民の声を保健師が聞き、ホワイトボードに容体などを書き込む。職員数人が慌ただしく集まり、その場で入院や療養先につなぐための協議を始めた。別の保健師は自宅療養者の健康状態を電話で確認。深夜0時を過ぎてもフロアの明かりが消えない日が続く。
 患者の感染経路をたどる疫学調査は、通常、発症から2週間前までの行動を追う。だが、感染の急拡大で人手が足りず、2日前までしか確認できない事態に。一方、感染者を医療機関や宿泊療養施設へ送迎する業務などは増え、職員が現場へ出る機会は多くなっている。市新型コロナウイルス感染症特別対策室の辻英樹室長は「職員の疲労度はかつてなく大きい。心身ともにぎりぎりの状態にある」と危惧する。
 加えて、気掛かりなのは米軍人らの感染者が急増した米海軍佐世保基地の状況。基地からの情報提供が限られ、直接対策を打てない中、市は今月上旬に防衛省九州防衛局を通じ、基地で働く日本人従業員に県の無料検査を受けるよう促した。ウイルスの早期発見と抑制が狙いだが、連日のように従業員の陽性が判明。8~22日に計37人が発表され、“水際対策”も難しくなっている。
 佐世保市では保健師約50人が交代で業務に当たる。第6波に備えて一定の態勢を整えたが、多くの大病院や大学医学部がある地域と比べ、検査や健康観察などの面で保健所の仕事を軽減する医療資源は少ないという。市保健所の井上文夫所長は「限られた人員でこの事態に耐えるしかない。保健所の負担を減らすためにも、市民には感染防止対策の徹底をお願いしたい」。厳しい表情で語った。


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