見たい未来@長崎 2022知事選<4> 「シュシュ」代表取締役・山口成美氏 女性が活躍できる環境を

「働く意志や能力がある女性が本当に働きやすい社会を」と話す山口さん=大村市弥勒寺町、おおむら夢ファーム・シュシュ

 -長崎県大村市で運営している農業交流拠点施設「おおむら夢ファーム・シュシュ」では、女性がたくさん活躍している。
 農産物直売所やレストラン、食育・農業体験などさまざまな事業を展開する中で、女性スタッフには主に製造や販売などの業務に従事してもらっている。70人の従業員のうち、女性は8割を超える58人。今春の新入社員も4人中3人が女性だ。
 女性は消費者の視点を持ち、お客さまからさまざまな意見を吸い上げて課題を解決する能力に優れている。年間約50種類を開発している加工品やスイーツなども、その多くは女性スタッフが携わっている。
 昨年、「第60回農林水産祭」の多角化経営部門で、シュシュは最高賞の天皇杯に選ばれた。農業者の所得向上や後継者育成のほか、多くの女性が活躍していることも評価された。今後も女性が能力を発揮できる環境づくりに取り組みたい。

 -女性活躍推進の面で課題に感じていることは。
 女性スタッフの中には、産休や育休の取得後に「子どもを預ける保育施設が見つからない」と、仕事になかなか復帰できない人がいた。「両親の介護のため時間的な制約ができた」というスタッフもいる。
 そうした人たちをサポートするという意味でも、子育てしやすい環境や介護人材の充実が求められるだろう。最低賃金が引き上げられる一方、これに伴い、扶養控除を受けられる範囲内で働いているスタッフは勤務時間を短くせざるを得なくなっている。こうした現状も改善が必要だと思う。

 -新型コロナウイルスの流行下、これから職場で女性にどう活躍してもらうのか。
 コロナ禍を受け世の中は大きく変わった。ウェブ会議も浸透し、わざわざ東京に行かなくても大村にいながら会議に出席できるようになった。シュシュでも業務のデジタル化を徐々に進めている。特にリモートワークの環境を整備することで、子育て中だったり、夫の転勤で市外に出たりしたスタッフが継続して働けるようになるのではと考えている。新商品の企画など在宅でも可能なことは少なくない。そういった業務の洗い出しなど準備を進めている。
 都会で培われたセンスや経験を持つ女性の登用も進めたい。シュシュは全国に向けて加工品などを販売しており、都会でどういったニーズがあり、どんな商品が好まれるかは重要な視点。都会にいるよりも地方で「土に触れさせながら子育てしたい」と望む女性も多いため、「外部からの目」を持ったUIターン者の採用に力を入れていく。

 -県政に望むことは。
 人口減が進行し労働人口も減っている中で、女性は必要不可欠な人材。国は言葉では「女性活躍推進」をうたっているが、地方の実情に沿っていない。だからこそ県は、地方の現状や考えを国にしっかり伝えてほしい。働く意志や能力がある女性が本当に活躍できる社会を実現してもらいたい。

 【略歴】やまぐち・なるみ 1960年生まれ。大村市出身。JA営農指導員を経て就農。96年に農産物直売所を開設し、2000年に「おおむら夢ファーム・シュシュ」をオープン。年間利用者数は49万人に上る。内閣府地域活性化伝道師、全国直売所研究会長なども務める。


© 株式会社長崎新聞社