九州・沖縄県紙交換企画【SDGsの姿 2022】ー2ー 共生社会実現サポート機構「とんとんとん」(大分県佐伯市)

「食」を軸に交流拠点

食堂で会話と食事を楽しむ常連の高齢者。食堂はすぐに満席となり、至る所で笑顔と会話が弾む=佐伯市の子ども食堂

 医療・介護関係者らでつくる一般社団法人「共生社会実現サポート機構とんとんとん」(理事長・山内勇人医師)は、大分県佐伯市内町の商店街でカフェや食堂を運営している。誰もが住みやすい社会の実現を目指し、「食」を軸に共生社会のモデルづくりを進める。

 2018年6月に設立。週2回、空き店舗を利用してカフェを開く。訪れるのは障害者、高齢者、子ども、認知症患者ら顔触れはさまざま。スタッフとして対応するのも障害者や高齢者だ。毎月第1・3日曜には子ども食堂に。これまでに約3300食を提供した。客とスタッフが分け隔てなく“ごちゃ混ぜ”で会話や食事を楽しむ。小規模ながら地域の交流拠点として機能している。

 設立のきっかけは山内理事長(54)が6年ほど前に始めた、認知症患者と家族が集うオレンジカフェ。「さまざまな患者らと交流を続けるうち、理解が必要なのは認知症だけではないと感じた」。事業の規模を広げようと、有志と社団法人を立ち上げた。

 取り組みは地域共生社会づくりの実践例として注目を集め、県内外の行政機関や市民団体が視察に訪れる。メンバーは「同じ時間を共有することで、それぞれの個性が見えてくる。ハンディがあっても一人の人間として接することがどれほど大切なことかを実感できる」。

 食堂やカフェが軌道に乗り、昨年7月に3周年を迎えた。「これからの時代は少産多死社会。人口の増加が見込めない以上、地域が生き残るにはそこで暮らす人々が助け合う仕組みを作るしかない」と山内理事長。誰もが心豊かに暮らせる社会をしっかりと見据えている。
 (大分合同新聞南部総局・小松和茂)
 
 【メモ】「とんとんとん」は医師、看護師、介護福祉士や障害のある当事者ら29人で構成。佐伯市を中心に県内各地で認知症などの勉強会を開催する。メンバーの専門性を生かした講演、啓発活動にも力を入れている。

© 株式会社宮崎日日新聞社