ダニエル・デイ・キムが語る、初主演作「ホット・ゾーン:アンスラックス」の捜査官の執念

感染症の恐怖を描いたシリーズの第2弾で、2001年にアメリカで実際に起きた炭疽菌テロ事件を題材にした「ホット・ゾーン:アンスラックス」。本作の主演を務めるのが、ハリウッドで活躍を続けるダニエル・デイ・キムだ。炭疽菌テロ事件の捜査を任命され、執念の追跡で犯人を追い詰めていくFBI捜査官のマシュー・ライカーを演じている。本作でドラマの初主演を果たした彼に、作品の見どころを聞いた。

── 9・11のトラウマを抱えたFBI捜査官を演じました。このとても複雑なキャラクターを演じる上で、大変なことはどんなことでしたか?

「何が起こったのかは、このキャラクターにとってとても重要だった。自分のキャラクターが感じている重苦しさを考えないようにするのは、役者としての自分には難しいことだね。また、この作品はカナダで撮影したんだ。カナダはとても長い間、コロナで完全にロックダウンしていた。東京と同じようにね。それに冬はとても寒いんだ。あまりに寒くて、仕事の後にもどこにも出かけられなかった。僕は、少し自分のキャラクターから脱け出す必要があったんだけど、その機会はなかった。そしてそれは、僕が彼と6カ月間一緒に生きていたことも意味する(笑)。そういったことは、チャレンジだったね」

── FBI捜査官のライカーが犯人を捕まえるまで、長い時間がかかります。彼の執念はどこからくるのでしょう?

「いくつか人とは違うところからきていると思う。まず、何人かのFBIエージェントと話して、僕が彼らについて学んだことは、彼らは普通の人間じゃないんだ。クラスのトップの学生で、トップの大学に行っている。彼らはとても意欲的なんだよ。それが、FBIエージェントの一般的な気質なんだ。ライカーも、自分には証明しないといけないものがあると感じている。なぜなら、彼は科学者としてFBIに来たからね。彼はすでにアウトサイダーだと思われていて、それにアジア人だ。僕のような見た目の人がFBIにいるのは、普通のことではないんだ。だから、自分には何か証明しないといけないものがあって、それをやりたいと感じていたと思う。そのことが、この事件を解決する上でさらに大きな動機を彼に与えたと思うよ」

── 炭疽菌テロ事件の犯人が、アルカイダではなく、アメリカ陸軍感染症医学研究所で働くアメリカ市民であるのを知った時、彼はどのように感じたと思いますか?

「人々を型にはめることについての考えや、その人の宗教や民族性や人種をもとに何かをしていると考えることはできないという、僕ら全員にとって、覚えておくべき重要な点だよ。この捜査は、そういった種類の憶測をすることの危険性を示していると思う」

── 犯人は微生物学者でしたが、ライカーは犯人の心理や考え方を何らかの形で理解したと思いますか?

「そう思うよ。アメリカにはあることわざがある。それは、『その種の人だと分かるためには、その種の人が必要だ』というものだ。ライカーには科学のバックグラウンドがあるおかげで、犯人のように考えることができたと思う。そして科学は捜査において、彼が順序立てて考えるのを助けたと思う。僕らが先ほど話していた憶測をせずにね。ただ事実と証拠を頼りにするんだ。それ以上、何もないんだ」

── この犯人の育った家庭環境に、ライカーは同情したのでしょうか?

「彼が犯人と話しているシーンで、犯人に共感したと思う。なぜなら、彼らは2人ともどこかアウトサイダーで、それを自分でも認識している。彼らの行動は、そういったことで拍車がかかるんだ」

── この炭疽菌テロが起きた時、あなたはどのように感じて考えたかを教えてください。

「そうだね。9・11が起きた時、僕はロサンゼルスにいて、テレビ番組の仕事をしていた。そして、『こういったことはアメリカではありえない』と心の中で思っていたのを覚えている。アメリカ本土でこんな攻撃があったことはなかった。だから、炭疽菌テロが起きた時、僕は、『ちょっと待って。こういったことは今、定期的に起きることなの? アメリカ人は攻撃されるの?』と感じたよ。そしてメディアでは、このテロがアメリカの外から来ているという考えがとにかくまん延していた。僕らは、この国の中での生活に恐怖を感じないといけなかった。アメリカ人は今まで、ほかの人たちの土地で戦うために、その国のほかの地域に行っていたからね。だから、そのことは多くのアメリカ人の物の見方を変えることになったよ」

── 最後に、日本にいるファンにメッセージをお願いします。

「日本にいるファンの方たち、ありがとうございます! 僕は東京や日本のほかの街をよく訪れています。そして、いつも楽しく過ごしています。あなたたちが僕の番組や映画を見てくれることに、とても感謝しています。サンキュー!」

【プロフィール】

ダニエル・デイ・キム(Daniel Dae Kim)
1968年8月4日生まれ。韓国・釜山出身。2歳の時にアメリカに移住し、90年代初めから多くのテレビシリーズに出演。代表作に「LOST」(2004~10年)、「HAWAII FIVE-O」(10~20年)などがある。「ダイバージェント」シリーズや「ヘルボーイ」(19年)などの映画にも出演。

【番組情報】

「ホット・ゾーン:アンスラックス」(全6話)
2月22日スタート
ナショナル ジオグラフィック
火曜 午後10:00~11:00ほか(二カ国語)
※2月23日から字幕版も放送

微生物学を専門とするFBI捜査官のライカー(ダニエル・デイ・キム)は、炭疽菌テロの捜査を任されることに。捜査には、アメリカ陸軍感染症医学研究所の微生物学者・イビンズ(トニー・ゴールドウィン)も協力することになるのだが…。

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