カウンセリングの効果を5つの観点からわかりやすく解説

みなさんは「カウンセリング」を受けたことがありますか?
筆者は産業カウンセラーと活動する機会もあるのですが、クライエントの方から後日「実際にカウンセリングを受けることで心が軽くなった!」「相談してよかった!」と非常に嬉しい言葉をいただくことがあります。
しかし、果たしてそれにはどの程度・どのような効果が現れているものなのでしょうか。
客観的な心理学的尺度を用いた量的研究や、クライエントからの報告や聞き取りを分析する質的研究などによって、カウンセリングには種々の効果があることが確かめられてきているものの、カウンセリングは人間のさまざまな側面を扱うので、何をもってその効果とするのかはとても難しいと感じています。
今回は、カウンセリングの効果をわかりやすく解説します。

カウンセリングの主要な効果

カウンセリングには大きく分けて以下5つの効果があるとされています。

1. 問題となる行動や症状の改善:相談者(クライエント)のニーズや動機づけにもよるが、軽度のうつや不安をはじめとした症状の軽減や、怒りや依存といった直接的な問題行動の改善にカウンセリングの効果が見出される
2. 心理社会的な安定や機能性の改善:心理的苦悩の改善や心理的ウェルビーイング(健康で幸福な状態)の増進。さまざまな出来事(災害や事故など)の心理的影響からの回復、適切な認知や行動の増加、職場や学校への適応など
3. 対人関係上の問題解決や目標達成:家庭や職場、地域社会などにおける人間関係の特に心理的側面の問題解決、適切な主張性の向上や親密な関係の形成といった対人関係上の目標の達成など
4. 自己概念の変化や自信の増大:自分についての見方の変化、自己受容、自己肯定感や自己効力感の増大、より適切な人生設計やキャリア発達の達成など
5. 問題対処能力の向上や自己成長:問題に向き合い対処する能力の向上。ストレス耐性の増進、自己成長と全体的な心理社会的機能の水準向上など

また、2008年に英国で編集されたカウンセリングおよびサイコセラピーの効果に関する研究知見のレヴューによれば、これまでに以下のことが明らかになっています。(M.クーパー『エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究』より)

・ 数多くの実証研究のメタ分析から、カウンセリングやサイコセラピーには大きな効果量(百分率に換算して約80%のクライエントが好転しているという結果)があるとわかっている
・ 心理的苦悩の改善効果は、終結後1~2年後も維持される傾向にあるがより長期的な影響については明確なエビデンスはない

留意すべき要因

カウンセリングは、当然のことですが万能な方法ではなく限界もあり、効果に影響を与える種々の要因についても考慮する必要があるとされています。
留意すべき要因を認識したうえで、一人ひとりのクライエントに適切な援助が行われるための工夫や努力をすることが求められることを忘れてはいけません。

気軽にカウンセリングを受けられる環境を

カウンセリングには前述のような効果が確かめられており、アメリカなどではカウンセリングへの敷居が低く、成人アメリカ人の42%がカウンセリングを受けたことがあるという統計が出ている一方、日本ではまだまだ浸透しきれていない現状があります。
「カウンセリング=心の病」のイメージを強く持たれている方もいらっしゃるのはないでしょうか。

こうした先入観を払拭するうえでは、一日の大半を過ごすことにもなる職場にカウンセリング環境を整えることが重要です。
実際、最近では産業保健スタッフとして産業医や保健師に加えてカウンセラーの方を配置されるケースも増えています。
気軽に相談できる窓口として、ぜひカウンセリング環境の整備を検討してみてください。

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