【那須雪崩事故】「話し合いがしたかった」 調停不成立に遺族側落胆 事故は「人災」教訓残す

調停の不成立を受けて心境を述べる遺族の奥さん(右)と毛塚さん=24日午後、宇都宮市小幡1丁目

 那須雪崩事故で、遺族が栃木県(県教委)などに真摯(しんし)な謝罪などを求めて申し立てた民事調停。引率した3教諭の責任を重視する遺族側と、「教諭個人の責任ではない」とする県側の主張の溝は埋まらなかった。24日の協議後、「和解すれば『事故は自然災害』との間違った教訓が後世に残ってしまう」として、宇都宮地裁に損害賠償訴訟を提起する方針を固めた遺族側。「事故が(3教諭による)人災だと明確にしたい」と次を見据えた。

 「私たちは話し合いをしたかったのです。でも県側には話し合う態度がみじんもなかった」。長男公輝(まさき)さん=当時(16)=を亡くした奥勝(おくまさる)さん(50)は報道陣の取材に対し、無念さをにじませた。

 遺族側は2020年3月、「歩み寄るための話し合いがしたい」と民事調停を申し立てた。求めていた3教諭の出席が実現しなかったため、昨年9月には、県が支払う損害賠償金を3教諭に負担させる「求償権」の行使を内容とした和解案を提示した。3教諭に責任があると認めさせることが目的だった。

 一方、県側は事故を3教諭個人ではなく、組織全体の責任とする立場で、和解案には応じなかった。奥さんは「県側の主張は一歩も動かなかった」と肩を落とした。

 調停開始から2年近くが経過し、8回の協議を重ねてきた。事故で亡くなった大田原校山岳部第3顧問毛塚優甫(けつかゆうすけ)さん=当時(29)=の父辰幸(たつゆき)さん(69)は「何も進まなかった。すごく悲しい」と嘆いた。

 「息子は県側と争うことを望んでいると思えない」と想像し調停に臨んできたが、要望や和解に応じない県側の姿勢に怒りが募った。「真摯(しんし)に対応するとしながら、遺族側の主張はかたくなに無視してきた。県は二枚舌だ。私たちの願いが軽くあしらわれてしまった」

 提訴後は改めて、3教諭の責任の所在などを明らかにしていく考えだ。奥さんは「雪崩発生の危険が高い斜面までの歩行訓練を強行し、8人の命を奪った。県側は事故を部活動中の自然災害と認識しているが、人災だったと明らかにしたい」と声を震わせた。

調停の不成立を受けて心境を述べる遺族の奥さん(右)と毛塚さん=24日午後、宇都宮市小幡1丁目
調停の不成立を受けて心境を述べる遺族の奥さん(右)と毛塚さん=24日午後、宇都宮市小幡1丁目

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