見たい未来@長崎 2022知事選<6> 元諫早高陸上部監督・松元利弘氏 指導者が育つ環境整備を

「古い制度を現状に応じて改革してほしい」と語る松元氏=諫早市宇都町、長崎陸協事務局

 -長崎県のスポーツ振興について。県の競技力は2014年長崎がんばらんば国体以降、下降線をたどっている。何が必要か。
 まずは指導者。熱い指導者が減ってきている。自らの生活を犠牲にして選手たちと接する。全体的にその時間が少なくなっている。
 今の社会情勢では仕方ないのかもしれない。スポーツ庁が教員の負担を減らすような部活動の在り方を示しており、それはそれでいいところもある。でも、人間教育としての部活動とは少し違うような気もしている。生徒たちに「いい景色を見せてあげたい」という思いで全力で接する教員。この数が増えないと競技力向上は難しい。
 そのために行政はもう一度、原点に返って動いてほしい。コロナ禍の今は厳しいが、競技団体の枠を超えて指導者が集える場をつくってもらいたい。行政も一緒になって各競技の指導者と刺激し合う。そこから生まれるものは大きい。

 -その指導者育成について。公立校は常に人事異動の問題がついて回るが。
 自分のことで申し訳ないが、高校駅伝で全国優勝できたのは、じっくりと一つの高校にいさせてもらえたおかげ。公立校で実績を残している指導者の多くはそうだと思う。だから、一生懸命で有望な指導者は簡単に異動させず、ある程度長く残すべきではないか。「人事でそう決まっている」ではなく、現状を見ながら思い切って制度を改革する。そこを県のリーダーになる人に強く求めたい。それができなかったら、競技力向上などないと言える。

 -競技場、体育館などのスポーツ施設について。長崎県の現状はどうか。
 自分が居住している諫早市だけを見るとそろっている。大きな大会もやれる。でも、他県と比較すると、全県的に併設の宿泊施設や合宿所が整っていない。ホテルを使えばという意見もあるが、小学生などが安くで泊まれる施設は必要。特に離島勢の中には「本土に行くだけで金がかかるから、中学や高校で部活をするな」という家庭もあるという。県外からの合宿誘致という点も含めて整備してもらいたい。
 各学校の施設充実も課題の一つ。その地域の特性に合わせて人工芝のグラウンドなどを整備すれば、社会体育も含めて地域でスポーツを楽しめる場ができる。

 -高齢者を含めた生涯スポーツについて。
 各郡市のスポーツ推進委員がいま一歩、機能していない。委員の高齢化も進んでおり、もう一度、見直さなければならない。その指導は不可欠だと考える。

 -プロスポーツが盛んになってきた。アマチュアとより共存共栄していくために必要なことを。
 プロや実業団は子どもたちに夢や希望を与えてくれている。各地で続けている教室や講習会などを、もっと充実させてほしい。必要なことは、それに対する行政、各自治体の支援。子どもたちが頑張れば、地域に元気が出る。力を入れていってもらいたい。

 【略歴】まつもと・としひろ 1956年生まれ。鹿児島県頴娃町(現南九州市)出身。順天堂大を卒業後、89年に県立諫早高に赴任。陸上部監督として、2001、04年の全国高校駅伝で女子を日本一に導いた。18年から昨年末まで、実業団のデンソー(三重)を指導。長崎陸上競技協会顧問。


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