かつて国内有数の落花生の産地として知られた神奈川県二宮町。現在は生産農家が途絶えてしまったが、昨年1月、老舗落花生店や移住者ら有志が集い、地域の名産復活を目指すプロジェクトを立ち上げた。試行錯誤を重ねて丹念に育てた落花生は昨秋、初めて収穫を迎え、一般販売も視野に入れている。今月から新たなメンバーも加わり、共感の輪を広げながら2年目の挑戦へ踏み出す。
プロジェクトの発起人は、創業150年の落花生卸問屋「渡邉商店」(同町二宮)で家業にいそしむ阿部正美さん(43)。後継者不足などで遊休農地が増えている問題や、日本の食料自給率の低さに少しでも関心を持ってもらおうと、戦後衰退した地元産落花生の復活を目指し、「農家の未来、子どもの未来のために」と立ち上がった。
農業に詳しいベテランの指導を仰ぎながら自然環境に配慮し、肥料に頼らない自然農法にこだわった。昨年4月に高級品種「半立」200株を植えた後は苦労の連続。耕運機を使わず人力で畝を立て、夏場の雑草取りは過酷を極めた。
10月に収穫したのは約20キロ。豆の選別、乾燥、皮むきなどの行程を経て商品として提供できるのは半分の重さにも満たない。阿部さんは「大変な作業で農家の人たちの気持ちが分かった。みんなの力で私も走ることができた」と振り返る。