スバルで活躍した元WRCドライバー、クリス・アトキンソンがアウディをテスト/TCRオーストラリア

 かつてWRC世界ラリー選手権でスバル・ワールドラリーチーム(SWRT)に所属し、ファクトリー契約ドライバーとして活躍したクリス・アトキンソンが、地元オーストラリアで初のTCRマシンをサンプリング。2022年もリアム・マクアダムがステアリングを握る予定のアウディRS3 LMSをドライブし、将来的なシリーズ参戦にも意欲を見せた。

 また、ホンダ系チームとして参戦するウォール・レーシングはトニー・ダルベルトとの契約延長を発表するなど、新シーズンに向けたドライバーラインアップも続々と確定し、全7戦の暫定スケジュールもアナウンスされている。

 世界王者ペター・ソルベルグの僚友としてスバル・インプレッサWRC05などをドライブし、WRC通算77戦に出場。その後は北米のラリークロス・シーンでも活動を続けたアトキンソンは、今回地元誌が実施する特集の一環として、イプスウィッチにあるクイーンズランド・レースウェイにて複数台のロードゴーイング・モデルとともに、自身初のTCR規定レースカーをドライブした。

 2007年当時には、勝手知ったるスバル・インプレッサWRX STIスペックCでバサースト12時間に参戦した経験を持つアトキンソンだが、前輪駆動ツーリングカーでのサーキットアタックは新鮮な感覚をもたらしたようだ。

「僕自身はここクイーンズランド・レースウェイで多くのロードカー・テストを経験してきたから、同時比較した市販モデルに対してTCR規定マシンがどんなフィーリングかを確認したかったんだ」と語ったアトキンソン。

「走り出してすぐ自分のペースには満足したけど、もう少し『最後のコンマ1秒』を探求するのは良いことだろうね。TCRよりパワーが少ない(ポルシェ)GT3RSでほぼ同じ時間に走行したから、これらのタイムと結果がTCRカーのパフォーマンスを証明しているよね」

「市販モデルは数多くテストしたけれど、ここクイーンズランドでレースカーに乗れたのは初めてだから、本当に良い機会になった。市販のアウディと比較して、よりアグレッシブなラインとポジショニングが取れるのも面白かったよ」

「事実、ロードカーではそれほど大回りできないコーナーや、止まれそうにないポイントからのブレーキングでも、TCRカーではコース幅を目一杯使って簡単に処理することができた。本当に印象的な体験だったよ」

WRCでスバルやシトロエン、ヒュンダイなどをドライブした後、北米に渡りGRCグローバル・ラリークロスにも参戦した
「市販のアウディと比較して、よりアグレッシブなラインとポジショニングが取れるのも面白かった」と語ったクリス・アトキンソン
MPCは、新年度に向けルーク・キングに加えてリアム・マクアダムとの契約延長を発表している

■アトキンソン「TCRはレースもとても楽しい部類のクルマだと思う」

 その貴重な初体験を踏まえ、アトキンソンは今後も機会があれば地元TCRオーストラリアに「出場する機会があればうれしい」と、現代のレーシングシリーズ参戦にも意欲を見せた。

「最近はあまりレースをしていないし、良い機会があれば間違いなく僕のレーダーに載ってくるだろうね」と続けたアトキンソン。

「数あるレースカテゴリーの中でも、TCRはレースもとても楽しい部類のクルマだと思うよ。超接近戦が可能なドア・トゥ・ドアのバトルがどんなレースでも見られるし、本当にクールだと思う。得られるスピードとラップタイムの価値は、モータースポーツに参加するのに最適なレベルだね」

 今回、アトキンソンのテストにアウディを提供したメルボルン・パフォーマンス・センター(MPC)は、新年度に向け、ルーク・キングに加えてリアム・マクアダムとの契約延長を発表。一方で、2021年に2代目シリーズチャンピオンを獲得したRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの実力者、チャズ・モスタートの起用やその動向は明らかにしていない。

 また、ホンダ系有力チームのウォール・レーシングは、2021年のRSC最終戦『バサースト1000』出場でTCRのシーズンフィナーレを欠場したトニー・ダルベルトとともに、3年目のタッグで新シーズンに挑むことを発表した。オーストラリア市場に投入される現行FK8型ホンダ・シビック・タイプR最後の限定車にちなみ、イエローのカラーリングがお披露目されている。

 これに加えて、TCRオーストラリアの主催団体は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に翻弄され、ほとんどのラウンドでキャンセルの憂き目にあった2年目のシーズンを経て迎える3年目の暫定カレンダーを公開。2月11~13日にタスマニアのシモンズプレインで幕を開けた新年度は、2回のマウント・パノラマを含む全7戦のスケジュールを予定するが、ふたたび猛威を振るうCOVID-19によりオンスケジュールでの実施は不透明な状況となっている。

■TCRオーストラリア・シリーズ2022年暫定カレンダー

Round Date Circuit

Rd.1 2月11~13日 シモンズプレイン・レースウェイ

Rd.2 3月18~20日 フィリップアイランド

Rd.3 4月15~17日 バサースト・マウントパノラマ

Rd.4 5月27~29日 シドニー・モータースポーツパーク

Rd.5 8月5~7日 クイーンズランド・レースウェイ

Rd.6 9月16~18日 サンダウン

Rd.7 11月11~13日 バサースト・インターナショナル

シリーズ創設初年度から3年連続でトニー・ダルベルトの起用をアナウンスしたWall Racing(ウォール・レーシング)
ウィル・ブラウンとともに初年度を制覇したHMO Customer Racingは、18歳の新鋭ベイリィ・スウィーニーを起用
S5000にも参戦した23歳のブレイダン・ウィリントンは、古豪Garry Rogers Motorsport(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ)に加入

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