除隊後の30代、時代劇で魅せる韓国俳優イ・ジュンギ

韓国ドラマ「悪の花」で、複雑な内面をもつ難役を真に迫る演技で魅せた俳優イ・ジュンギ。そこで、彼がこれまで演じてきた主なキャラクターを分析。俳優人生の集大成ともいえる「悪の花」のペク・ヒソン役に、いかにしてたどり着いたのか。引き続き除隊後の30代、役者人生第2期を迎えた作品を中心に振り返ります。


銃アクション、人間味、ロマンス、演じ分け――。飽くなき挑戦

「朝鮮ガンマン」 2014年

剣から銃へ、近代化が進む激動の時代を生きた1人の男の波乱の運命と愛を描いた挑戦作。“時代劇ヒーローもの”というジャンルを確立したイ・ジュンギが、「王女の男」を演出したキム・ジョンミン監督とタッグを組み、“時代劇ロマンス”の新しい魅せ方を探求。銃使いの刺客というフィクションを、史実に絡ませ、ドラマチックな物語に。 また、現代劇・時代劇問わず一人多役を演じてきたジュンギが、さらに難しい演じ分けを披露。

「朝鮮ガンマン」Licensed by KBS Media Ltd. c 2014 KBS. All rights reserved

序盤のユンガンは、気になるスインをからかうなど、やんちゃな少年風だが、父の復讐を誓って以降は、軽薄で冷淡な日本人・半蔵を装いながら、覆面ガンマンとして仇を追うという“2つの顔を持つ男”に変貌。

愛するスインを前に、わざと冷たく突き放すも、彼女がキケンな目にあえば、思わず身体が動き、見事な武術で救う“切り替わりスイッチ”にシビレる。 最愛の妹の前で見せる“兄”の表情、仕事の相棒・金丸(扮大谷亮平)との絆、変革をめぐり王と対峙する“革命の士”としての姿など、ロマンス以外の人間的姿にも魅せられる。

イルジメを彷彿させる覆面姿、長い銃をくるりと回し、馬を走らせながら銃をかまえるなど、ジュンギ自ら考案した銃アクションも見もの!

妖しく、美しい妥協知らずの演技、人間離れしたオーラ

「夜を歩く士〈ソンビ〉」 2015年

朝鮮王朝時代のバンパイアを描いた同名の人気ウェブ漫画を原作にしたファンタジーアクション。王室を陰で牛耳るバンパイア、クィを倒す宿命を背負い、守護鬼となる主人公ソンヨルの愛と戦いを描いていく。

原作のキャラクターとシンクロ率100%と評されたイ・ジュンギに加え、クィを演じたイ・スヒョク、クィを倒すために戦いを準備する世孫を演じたチャンミン(東方神起)、3者による攻防は、この世のものと思えぬ美しさ!

白い肌に憂いを帯びた眼差し、感情を抑えたストイックな演技で、バンパイアの妖しげで、なまめかしい美しさを体現したイ・ジュンギ。韓服を優雅に翻して戦うアクションは、品があり、人間離れしたオーラさえ感じられる。

初恋の痛みから逃れられないソンヨルが、ヤンソンによって頑なに閉ざしてきた心が揺さぶられていく様、唇を奪いながら、夢だと突き放すツンデレぶりなど、切ないロマンスも展開。

次回は、15キロ減量して挑んだ「麗」以降の3作品に迫ります!


TEXT:高橋尚子(編集・ライター)

Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)

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