「またか」「時短で解決するのか」 まん延防止適用、翻弄される飲食店

店内で仕込みをする店主の妻の下重和恵さん=25日午後1時、宇都宮市大通り5丁目

 新型コロナウイルスの感染急拡大で栃木県への「まん延防止等重点措置」の適用が決定した25日、時短営業を迫られる県内の飲食店は諦めや落胆、感染対策を理解する声が交錯した。「時短営業で解決するのか」と疑問も。県の感染防止対策認証制度の取得店以外は酒類が提供できず、認証店も提供する、しないの判断が迫られる。飲食業界は翻弄(ほんろう)され続けている。

 「同じ事の繰り返し。またか、としか言えない」。宇都宮市大通り5丁目、日本酒専門の居酒屋「國酒(こくしゅ)の仕業」の店主下重勝美(しもじゅうかつみ)さん(49)は200~300種の日本酒をそろえる店内を見回し、頭を抱えた。

 昨年10月からは午後1~4時に店内で妻の和恵(かずえ)さん(39)が定食屋も始めた。県の感染防止対策認証制度は取得していない。取得は任意の上、店は常連各が多く、消毒の徹底など感染対策に最大限の注意を払っている自負があるからだ。

 しかし今回は認証店以外は酒類を提供できない。当面は時短営業と食事の提供で踏ん張り、認証取得を検討するという。勝美さんは「年末は客足も戻り、いい雰囲気だった。喜ぶとすぐにまた突き落とされる」と嘆いた。

 認証店は「酒類提供なしの午後8時閉店」か「午後8時までの酒類提供と同9時閉店」のどちらかを選ぶ。協力金の額も変わる。

 認証店の大田原市山の手1丁目の食堂「岡繁(おかしげ)」は午後8時まで酒類を提供し同9時に閉店する。「どれくらいの人が来てくれるだろうか…」。取締役の岡野繁雄(おかのしげお)さん(69)は不安を語る。

 近隣の歓楽街はコロナ禍で人通りがまばらになった。「街全体が落ち込んでいる。飲食店だけを時短にしたら現状が解決するのか」

 足利市田中町、コース料理とワインが人気のフレンチレストラン「オープティ ブション」も認証店。酒類提供の自粛を考えているという。

 オーナーシェフの福田雄一(ふくだゆういち)さん(54)は「協力金では資金繰りが追いつかず非常に厳しい」と落胆しつつ、「感染も止める必要がある。苦しいがやっていくしかない」と前を向いた。

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