<社説>統計不正で検証報告 統計行政の抜本改革を

 建設工事に関する基幹統計を国土交通省が無断で書き換え、二重計上していた問題で、国交省が設置した第三者委員会の検証報告がまとまった。 委員長の寺脇一峰元大阪高検検事長は「隠蔽(いんぺい)工作と評価されても仕方ない」と断じた。政府の統計不正は繰り返されてきており、国民の信頼は失墜している。統計行政の抜本改革に踏み込む必要がある。

 国交省は建設受注実績を集計する「建設工事受注動態統計」で、提出期限遅れの調査票を回収月の実績として合算するよう都道府県に書き換えを指示。会計検査院から問題を指摘された後の2020年以降、指示はやめたが、国交省が書き換えていた。

 一方で未提出の業者の数値を他の業者が提出した調査票から推計して計上していた。

 歴代担当者約60人から聞き取った第三者委は、以前からの手順で業務をこなすことに疑問を持たず、不適切処理が無批判に継続されたと指摘した。一方で「真実をゆがめる何らかの意図が働いたとはいえない」と分析した。

 二重計上も作為的ではなく「時の政権のために生じさせたとは確認できなかった」と結論づけたが、第三者委による検証は踏み込み方が生ぬるくはないか。

 一部報道によると、不正によって20年度の統計は約4兆円過大になっていた疑いが持たれている。そもそも第三者委の調査は昨年末から1カ月足らず。国内総生産(GDP)への影響は検証していないなど、十分とは言えない。

 報告がまとまり、事務次官らが処分を受けたが、統計法は真実と異なる基幹統計を故意に作成することを禁じている。罰則規定の適用はどうなるのかなど、疑問は尽きない。

 国交省は是正の機会をみすみす逃してきた。隠蔽と取られても仕方がないとされるゆえんである。

 厚労省の統計不正を受けた19年の各省庁の一斉点検の際、国交省職員は書き換えを報告すべきだと上司に相談。その後も担当の課長補佐が書き換えの取りやめを進言したが、いずれも見送られた。第三者委は幹部職員らに「責任追及を回避したい意識があった」「問題の矮小(わいしょう)化を図った」と指摘した。原因には統計業務の軽視による担当部門の人員不足、情報共有の不十分さがあったと認定した。

 基幹統計への回答は国民の義務だが、政策に生かされるとの信頼があっての回答協力だ。不正に扱われるのであれば時間を割いて答える気持ちになるだろうか。回答率が下がれば、統計の精度や価値は損なわれてしまう。まさに国民の信頼は失墜している。

 処分で問題を終わらせず、改めて全省庁でチェックし、不正の要因をあぶり出すべきだ。統計部門の定員の削減で、専門外の職員が担当することも増えているという。政府統計の実務、統計行政の在り方を見直し、不正が生まれない仕組みを講じる必要がある。

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