ホンダ陣営4名のドライバーは不変も、チーム・エングストラー加入でシビックにスイッチ/WTCR

 WTCR世界ツーリングカー・カップに参戦するホンダ系チームは、2022年シーズンに向け引き続きエステバン・グエリエリ、ネストール・ジロラミ、ティアゴ・モンテイロ、そしてアッティラ・タッシの継続起用をアナウンスしたが、過去2年間で4台すべてのFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRを走らせたミュニッヒ・モータースポーツが規模を縮小。代わって、同時期にヒュンダイ勢の一員として活動してきたチーム・エングストラーがホンダ陣営にスイッチし、モンテイロ、タッシと2台の車両運営を担当することが決まった。

 これによりチーム・エングストラーとしては、2021年にルカ・エングストラーを擁してシリーズチャンピオンを獲得したTCRドイツのプログラムでもヒュンダイからホンダへのスイッチをアナウンスし、その新王者ルカはGTへのステップアップを見据えて、アウディスポーツとのカスタマーレーシングプログラム契約を発表している。

 2020年はヒュンダイi30 N TCRで、2021年は新型エラントラN TCRで戦ってきたチーム・エングストラーは、ホンダ製TCR規定車両の設計・製造を担当するJASモータースポーツからの技術サポートを得て、2022年よりホンダ陣営へのスイッチを決めた。

「リキモリ・チーム・エングストラーとして、WTCRでホンダと仕事をする機会を得たことは、本当に誇りに思う瞬間であり、個人的には素晴らしい発展だと感じている」と語るのは、チーム代表でルカの父でもあるフランツ・エングストラー。

「このパートナーシップには良い未来があるように感じる。チームがWTCRで成長する絶好の機会だし、ドライバーラインアップも非常に強力だ。ティアゴ(・モンテイロ)の持つ豊富な経験は明らかな利点をもたらすだろうし、可能な限り若いドライバーと協力することもチーム哲学の一部であるため、アッティラ(・タッシ)の存在は素晴らしい追加になる」と続けた、元WTCC世界ツーリングカー選手権ドライバーのエングストラー代表。

「我々チームとしても、ホンダ・シビック・タイプR TCRでこの新プロジェクトを開始することに本当に意欲的であり、最高の結果を得るために最大限の投資をするつもりだよ」

WTCRとの並行プログラムで、2021年のTCRドイツでもヒュンダイでシリーズタイトルを獲得したチーム・エングストラー
フランツ・エングストラー代表のもとで、引き続きWTCRを戦うティアゴ・モンテイロ(左)とアッティラ・タッシ
TCRドイツでは王者に輝きながら、新型エラントラN TCRで戦ったWTCRではランキング15位に終わったルカ・エングストラー

■チームの御曹司ルカ・エングストラーはアウディスポーツと契約

 一方、JASの技術責任者を務めるマッズ・フィッシャーも、強豪チームとの新たなるパートナーシップに「興奮している」と期待を寄せた。

「我々も、彼らのような確立された実力派チームと組めることは待望の瞬間だ。ここ数年、彼らとのジョイントに関して熱心に協議してきたし、リキモリ・チーム・エングストラーのような血統を持つチームが参加するのは素晴らしいことだね」とフィッシャー。

「WTCRでホンダ・シビック・タイプR TCRを走らせるという彼らの決定は、世界戦で通算20勝以上を記録し、5年目のシーズンに向け今なお、競争力を維持するマシンに対する真の自信の表れでもある。同時に、我々JASモータースポーツのカスタマーサポートへの信頼でもあるんだ。2022年シーズンにさらに成功を収めることを目指し、彼らのサポートができるのを楽しみにしている」

 こうしてWTCRではミュニッヒ・モータースポーツから2台を引き継ぎホンダ陣営に加入するチーム・エングストラーだが、FK8シビックはTCRドイツでも使用することが確認され、チームのマーケティング・ディレクターを務めるピーター・バウマンは「来季から始まるグローバルなホンダ・モータースポーツ・プログラムに参加できることを非常にうれしく思う」と意気込みを述べた。

「我々としても、ホンダとともに企業価値をうまく活用することができると確信している。フランツ(・エングストラー代表)率いるチームのモータースポーツでの専門知識と情熱により、ホンダと一緒に働くことの喜びは非常にうまく調和し、ホンダとリキモリのブランドだけでなくスポーツの面でも望ましい成功に繋がるはずだ」

 そのTCRドイツで新チャンピオンに輝いたチームの御曹司ルカ・エングストラーは、2022年に向けアウディスポーツとの契約をアナウンス。昨季のWTCRでもヒュンダイをドライブした21歳の若手有望株は、ツーリングカーでそのままアウディ陣営に移籍するとは考えられておらず、GTへのステップアップに照準を合わせていると見られる。

「アウディのような素晴らしいブランドで働くことは、僕にとっても大きな夢だった」と、自身のSNSを通じてコメントしたルカ・エングストラー。

「キャリアの次のステップを実現するため、GT3の世界でアウディをドライブし、レースを戦うという僕の夢を具現化するのを助けてくれた、すべての家族、友人、パートナーに感謝したいと思っている」

エステバン・グエリエリ、ネストール・ジロラミのペアもホンダ陣営に残留。まだ発表前ながら、引き続きミュニッヒ・モータースポーツがチーム運営を担うと見られている
レネ・ラストら18名のアウディスポーツ契約ドライバーの陣容に名を連ねたルカ・エングストラー
GT3に限らず、GT2やGT4でもカスタマープログラムを展開するアウディスポーツ。直近のドバイ24時間では、GT3で1-2を飾っている

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