日本人留学生が台湾プロ野球のドラフトにかかる? 第1号が来夏にも誕生か

2021年の台湾王者・中信兄弟【写真提供:CPBL】

コーチ陣の引き抜き合戦 5チーム中4チームに日本人指導者が在籍

台湾プロ野球でも新たなシーズンへ向け、各チームで首脳陣の入れ替えが行われている。今オフ目立つのは“引き抜き”の多さだ。

5チーム中、年間4位に終わった富邦はGMが交代した。2008年の北京五輪で台湾代表を率いたこともある洪一中監督が球団顧問に退き、新監督には昨季まで中信の1軍ヘッドコーチを務めた丘昌榮氏が就任。新たなヘッドコーチに元中信の黄泰龍内野守備コーチが就任した。また2軍監督には元ドジャースで、アジアシリーズなどで日本のチームとも戦ってきた「台湾の大砲」陳金鋒氏が就任する。現役引退後、プロのユニホームに袖を通すのは初めてだ。

日本人コーチの就任も相次いでいる。年間3位とはいえ負け越した楽天は新たな1軍ヘッドコーチに、昨季まで富邦でバッテリーコーチを務めた古久保健二氏を招聘、1軍総合守備走塁コーチに元東北楽天の西村弥氏が就任したほか、昨年10月にチームへ合流した川岸強コーチが2軍投手チーフを担当、引き抜きの噂があった許銘傑(元西武)、林英傑(元楽天)というNPB経験がある投手コーチも残留した。かつての3連覇チームもこの2年は半期優勝を逃しており、日本野球を知る指導者による立て直しが期待される。

統一には、2003年から2018年まで同球団でトレーニングコーチを務め、チームの黄金時代を支えた一色優コーチが復帰した。

そして、ヘッドと内野守備コーチを富邦に引き抜かれた中信は、昨季まで阪神で2軍打撃コーチを務めた平野恵一氏が1軍の打撃・内野統括コーチに就任。阪神時代の同僚だった林威助監督を支える。味全には、今季が3年目となる高須洋介内野守備コーチがおり、5球団中4球団に日本人コーチが在籍することとなった。

富邦ガーディアンズの丘昌榮新監督【写真提供:CPBL】

日本人留学生が台湾でドラフト対象に!? 注目のルール改正が決定

日本のファンだけでなく、上のレベルで野球を続けたい選手にとっても注目のルール改正があった。

12月のGM会議で決定されたのは、台湾の中学、高校、大学に一定期間就学した外国人留学生について、外国人枠に含めず、ドラフト指名対象にするという改革だ。日本には同様のルールがあり、陽岱鋼(福岡第一高-日本ハム)や大豊泰昭(名商大-中日)らの台湾人選手はこれを適用され、日本人扱いでNPB入りしている。

今回台湾のルール改正ではさらに、台湾に居住5年以上、社会人チームで3年以上プレーした選手もドラフト対象としている。そこで注目を集めているのが、国立台湾体育運動大学の3年生で強打の遊撃手、永田颯太郎だ。ほかにも、台湾の大学球界には日本、韓国の出身者を中心に複数の留学生が在籍しており、近い将来に外国籍初のドラフト指名選手が誕生しそうだ。

また今季は新球場の会場という話題もある。後期シーズン(7月15日)以降の使用開始となりそうだが、味全が北部の新竹市に建設中の新球場を本拠地の1つとすることが決定しているほか、台北市に建設中の台北ドームで、プレーオフや台湾シリーズを開催することへの期待も高まっている。

新球団誕生への動きも加速する。昨年12月7日には、スポーツ産業へ参入する企業に対する所得税の控除などを定めた「運動産業発展条例」修正案が立法院(国会に相当)で可決、第6の球団参入に弾みがついた。中華電信、台湾鋼鉄など候補企業の名も浮上し、台湾鋼鉄は最速で2月にもリーグ加盟の意向表明書を提出するという報道もある。より具体的な話へ進展しそうだ。

最後に、3月5、6日の2日間、東京ドームでは栗山英樹新監督率いる「侍ジャパン」の初陣として、台湾代表との「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2022」が行われる。台湾代表は、統一の林岳平監督が台湾プロ野球の若手主体の選抜チームを率い、NPBでプレーする台湾選手が合流する可能性もあるという。ここに来て、日台ともに新型コロナウイルスの感染拡大がみられるが、1日も早く落ち着きを取り戻し、無事に開催されることを願うばかりだ。今年こそ感染症が収束し、日台双方の球団による本格的な交流、ファンの往来が再開されることを心から願いたい。(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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