マイルドハイブリッド車における車載48V/12V電気システム向け高電力コンバータ

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48Vマイルドハイブリッド車についての課題は増加傾向で、48V/12Vコンバータは将来的な要件を満たすために柔軟性が求められます。自動車のオプションに応じて、最低1.2kW~3.5kWの電力レベルが必要です。この幅広い電力範囲だけでなく、自動車のオプションは車両ごとで異なるため、コストを抑えるために最適化されたスケーラブルなコンセプトを提供することが優先事項になります。

自動車電気システムを制御する電圧コンバータ

近年では、アクティブセーフティ、消費電力削減、排出の最適化といった分野で多数のアプリケーションが自動車に導入されています。例としては、スタートストップシステム(マイクロハイブリッド)、電動ウォーターポンプ、エアコンコンプレッサー、ターボチャージャー、ステアリング、ロール安定化、パーキングブレーキ、オートマチックトランスミッション、バキューム機構を無くしたパワーブレーキ、そして最近ではADAS(レーダー、LiDAR、超高速プロセッサ付きカメラ)やSCRシステムなどがあります。このため自動車電気システムを1kWまで制御する電圧コンバータ、3.5kWまで制御する双方向性の48V/12V電圧コンバータが必要になります。

従って、開発者には、すべての車にどのように48V/12Vコンバータを組み込み、またどのように理にかなった形で最大3.5kwまで供給可能にするのか、という課題があります。自動車はオプションに応じて1.2kW~3.5kWまでの電力を必要とします。48Vスタータージェネレーターはすでに広く使われており、自動車メーカーは48Vベルト駆動のスタータージェネレーターを搭載するディーゼル車の出荷を増やしています。

42V電気システム

2000年に実施された、初の42V自動車電気システムの試験はいくつかの理由で失敗しました。これを受け、これらのシステムは2003年より12Vマイクロハイブリッド車に置き換えられました。この一時的なソリューション(スタート-ストップ)により消費は5%最適化されました。この技術は今現在で60%以上の自動車で利用されています。12V電気システムは最大変動を3V(11V~14V)までの電圧範囲に規制しています。これにより、他の電気デバイスを負荷変動から保護し、電気システムが危険な状態に陥ることを防ぐことができます。

12Vシステムの電圧がその規制範囲の下限電圧レベルである11Vを下回ると、高電流を必要とするシステムに供給されていた電力は状況に応じて低減されます。さらに9Vを下回るレンジに入ると、さらに制御ユニットが機能し電流供給は負荷の電力要求や機能に応じ低減されるか遮断されます。6V以下になると車の電気システムが完全にダウンする危険性があります。このため、すべてのマイクロハイブリッド車は、その他デバイスにマイナス影響を与えずにスタートストップ機能を保証するために、電力範囲が400W~1.5kWのDC/C電圧コンバータ(図1)を必要とします。

電気システムを制御するDC/DCコンバータ

12Vマイクロハイブリッド車は、DC/DCコンバータにより電気システムを制御することで、再起動時の12V電気システムの電圧降下を防ぎます。インフォテインメント、オーディオ、照明システムは中断せずに動作します。シャント抵抗器付きのスマートバッテリーセンサーは、バッテリーのパワーレベルと消費電流の両方を計測します。12Vシステムで伝送できるエネルギーは限られています。最大出力のパワージェネレーターを設けてもさらに大きな電流が必要な高電流システムを増やすことはできません。

これを理由に電気システムには高い動作電圧が設定され、新しいオルタネータが開発されることになりました。これにより、自動車メーカーは高電力電気デバイスを自由に実装することで、車全体の効率性向上が可能になりました。これらの自動車をマイルドハイブリッド電気自動車(MHEV)と呼びます。

48V電気システムは制御されていない

12V車両電気システムと比べて、48Vシステムは16V(52V~36V)の幅広い範囲で動作し意図的に制御がされていません。すべての48V制御装置はこの16V電圧スイングで安定した動作を提供する必要があります。多数の設定やアプリケーションテストにより48Vシステムでは48Vを超すダイナミック上限電圧は最大3秒、下限電圧は100秒維持されることが示されています。48V MHEVはガルバニック絶縁を必要としませんが、12Vの場合では電気ショックに対する保護のために、最大上限電圧として60Vを維持することが必要不可欠になります。これを規定するテスト仕様がVDA 320です。VDA 320準拠の部品は、指定の電圧範囲内で安定した動作を提供します。

48Vシステム(60VDC未満の低電圧システム)向けに設計されたスタータージェネレーターは、15kW~20kWの高ピーク電力と5kW~10kWの連続電力を提供します。このオプションにより、エアコンコンプレッサー、フロントガラスデフロスター、電動コンプレッサー(ターボチャージャー)、PTCヒーターブースターなど、すべての大電流アプリケーションを48Vで直接稼働することが可能になります。しかし、多くの600W未満の12Vアプリケーションはコスト上の理由で48Vに交換することが困難です。

双方向電圧コンバータ

MHEVは48Vと12Vの2つのバッテリーを必要とします(図2)。今後5~10年の間で、12Vオルタネータの代替として、48Vマイルドハイブリッド車に双方向の48V/12V電圧コンバータを実装する必要があります。600Wを超える電気システムは徐々に48Vサブシステムに交換されます。エンジンをスタートする際の電動アシストパワーステアリングなどのダイナミックシステムの場合は、12Vバッテリーをバッファーとして使用する必要があります。

スタートストップシステムはCO排出削減の鍵になります。ハイブリッド車は2つ目の電圧を必要とします。48V自動車(MHEV)は16%までCO排出を削減しますが、同時にエンジンパワーも23%増加します。ここで大きな問題です。48V/12Vコンバータはどのように構成され、全自動車モデルに対して常時3.5kWまでの最大出力を提供するのは正しいのでしょうか?つまり、車両オプションに応じて1.2kW~3.5kWの電力が必要であるということです。

バック・ブースト動作

バック・ブーストタイプのコンバータの要件は極めて厳しいものです。48V入力(端子40)の電圧は24Vから最大54Vまでと幅広く、出力側(端子30)も6V~16Vの動作範囲、という厳しい課題が提示されます。極めて高い入力電流(ブースト)と出力電流(バック)による結果は想定通りで、バック・ブースト電流は双方の車両電気システムの低電圧レベルに対して反比例的に増加します。3.5kWでのバック・ブースト動作、特に最小電力電圧を仮定した場合では、一時的に極めて高い電流が流れることがあります。

96%以上の高効率という目標の他にも、スケーラビリティとコストの最適化という難題も提示されます。将来的には多くの自動車(主にディーゼル車)が48Vマイルドハイブリッドに入れ替わるとされているため、スケーラブルな電圧コンバータ戦略が重要になります。新たな半導体は80Vと100V向けに最適化されている必要があり、またこれらの定格電力に対応するメモリとフィルタアプリケーションの大電流インダクタも同様の最適化が必要です。

ビシェイが提供する製品にはあらゆるトポロジー(3、4、6、8フェーズの同期コンバータ)に対応します。IHDMシリーズの大電流インダクタ(図3)、IHLPシリーズの対称および非対称インダクタなどです。また、高効率を特長とするパワーMOSFET、15Wまでの精密級シャント抵抗器、TVSダイオードなどのラインアップも用意されています。IHDMシリーズの大電流鉄製コアフィルタの他にも、新しいIHSR SMDインダクタは端子40(48V)向けの主要部品の出力フィルタの1つです。

3.2kWの電力レベルでは端子40から約74Aの出力が必要となり、12V(端子30)にはコンバータが292Aで12Vを供給します(図4)。供給電流が約300Aの端子30には、マルチフェーズコンバータシステムがコストおよび効率/体積比率の観点で適しています。

まとめ

さまざまな電力レベル(1kW~3.4kW)に対応するコスト効率良い12Vシステムを実現するためには、アナログ双方向式電圧コンバータの代替としてデジタルレギュレータが推奨されます。

理由は下記の通りです。

柔軟性

  • 部分入力か可能な可変の電力プロファイル
  • ソフトスタートまたはデジタル式電流制御
  • 異常認識(バスシステムを介した通信)と可変のフェーズシフト
  • スペクトラム拡散によるEMIの軽減

効率性

  • 部分的負荷範囲における各フェーズのシャットダウン
  • 可変周波数の選択による効率の最適化:理論的にはMPPT方式による自動の効率最適化
  • シングルフェーズ効率分析 - 最適化された部分負荷戦略

温度

  • 部分負荷範囲のシングルフェーズにおけるサイクリックな全負荷の適用
  • 温度モニタリング
  • オンデマンドファン制御
  • 各フェーズに向けた温度依存の負荷分散

電力レベルの安定したスイッチイング、例として48Vレベルでは、60Vまでの電力(端子40)、70Vの最大ピーク電力、最小80VのMOSFETが必要です。

最後に、自動車のオプションはそれぞれ異なるため、デュアル電気システム向けにコスト最適化されたスケーラブルなコンセプトを提供することが大きな課題になります。48Vマイルドハイブリッドの将来は明るいとされ、2025年までに自動車全体の25%まで普及するといわれています。

著者プロフィール

Mustafa Dinc

Vishay Electronics

Business Development Automotive 担当Vice President