市民らが平和統一政策要求/南朝鮮大統領選挙 “軍拡中止し、終戦・平和協定締結を”

南朝鮮の第20代大統領選挙が3月9日に行われる。今後の北南関係、朝鮮半島情勢を左右する一つの分岐点となる大統領選挙を前に、市民らは次期大統領に平和統一政策の推進を求めている。

野党候補の即時退陣要求

2016年の朴槿恵弾劾をもたらしたキャンドル革命を受けて17年に文在寅政権が発足した。しかし文在寅政権下で始動した朝鮮半島の平和プロセスは膠着状態に陥り、軍事費は過去最大を記録、さらに不動産価格の高騰、格差拡大など民生でも課題は山積している。

選挙戦は事実上の一騎打ちで、与党・共に民主党候補の李在明・前京畿道知事と、政権交代を掲げる最大野党・国民の力候補の尹錫悦・元検察総長が僅差で混戦を繰り広げている。だが徹底した積弊清算を訴える民衆の求めとは相反して、両陣営では不正疑惑や失言、家族のスキャンダルといった問題が噴出。大統領選は混迷を極めている。

とりわけ尹錫悦候補の「北への先制打撃」発言は物議をかもした。尹氏は11日の記者会見で、朝鮮のミサイル試射に関する質問に対し、「Kill-Chainという先制打撃しか、防ぐことのできる方法はない」などと強弁した。

停戦状態にある朝鮮半島で「先制打撃」を持ち出すことは、戦争の危機をもたらす極めて危険なものだ。尹氏のこのような発言は、戦争状態にある分断国家の指導者として堅持すべき安全保障の基本的観点すらも同氏が備えていないことを露呈させた。

これを受けて、キャンドル革命を主導した全国民衆行動は、13日、国民の党庁舎前で記者会見を開き、尹氏の候補辞退を訴えた。南朝鮮のインターネットメディア・統一ニュースが伝えた。

韓国進歩連帯のキム・ジェハ常任代表は、「先制打撃を躊躇なく口に出す候補は即刻辞退すべきだ。(尹氏の発言は)朝鮮半島のすべての人々の命を奪う共滅をもたらす。この国を率いようとする大統領候補が南北を戦争のどん底に陥れる先制打撃を口にした。尹氏が大統領になれば、朝鮮半島は常に戦争の危機と不安に包まれることになる」と警戒心をあらわにした。

全国民主労働組合総連盟のキム・ウニョン副委員長も、「大統領は国民の安全を守る責任を負う。候補の口から国民を戦争の惨禍へと追いやる発言がどうして出てくるのか。(大統領の)資格がない」と喝破。「真に平和と繁栄を望むなら、2018年の南北首脳合意を遵守せよ」と訴えた。

民間統一運動への支援を

21日には、宗教および市民団体の代表145人が、「第20代大統領選挙に際した宗教・市民社会平和統一会議」と題した集会をソウル市内で開き、大統領候補に向けた「平和統一要求案」を発表。「軍備増強ではなく、平和軍縮が必要だ」と訴えた。6・15共同宣言実践南側委員会の李昌馥常任代表議長、民族和解協力汎国民協議会(民和協)のリ・ジョンゴル代表常任議長などの統一運動人士が名を連ねた。

平和統一要求案は、「朝鮮半島で70余年間続いてきた分断と戦争は、われわれの社会の基本的権利の実現と社会の均衡的発展を妨げてきた根源的な問題」だとし、「分断と戦争の克服、平和統一はわれわれに課された歴史的な責務だ」と主張した。

尹錫悦の即時候補辞退を訴える全国民衆行動

大統領候補に向けては、「共存と尊重、言行一致は関係改善における基本」とし、「口先では関係改善を話しながら軍事演習と武器増強に没頭すれば、むしろ信頼を損なうということを、われわれは3年にわたる膠着状態の中で再確認した」と指摘した。

そのうえで、▼南北共同宣言と合意の継承、実現▼朝鮮半島の平和体制を構築し、核兵器と核の脅威のない朝鮮半島をつくるための軍備競争の悪循環克服と終戦・平和協定の締結▼平和と主権に基づいた均衡的な外交展開、不平等な対外関係の改善▼平和統一プロセスへの民衆の参与をジェンダー平等に基づいて実現すること――を提案した。

とりわけ、民間の統一運動に対する支援と協力を強化すべきだとし、「南北交流への民間の参与を保障し、民族合同行事など各界各層の交流に対する支援と協力が重要だ。北に関する情報へのアプローチと、平和統一を目指す活動を依然として統制する南北協力法、国家保安法などの法律も再整備すべき」だと求めた。

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