最寄りのコンビニまで車で1時間かかる秘境の村、奈良県十津川村に生まれたHARA。 幼い頃、父親に付いて上京した際に井の頭公園で見たマジックに心を奪われ、その瞬間から「僕はマジシャンになる!」と心に決めたものの、実家は山の中。マジックを教えてくれる人もマジックグッズを販売するお店も周りにはなかった。「欲しいものは自分で作れ! 考えろ!」そんな父の教えを忠実に守り、独学でマジックを習得。数々の挫折も経験しながらもそれを乗り越えて今があるのは、両親、兄弟、友達、先生……、困った時に手を差し伸べてくれた人々から受けた愛とそれに対する感謝の気持ちを忘れず、何よりも自分自身の夢を信じて努力を怠らなかったからだ。 「この自身の経験を子供たちに伝えて、夢を諦めずに抱くことの大切さを伝えたい」 そんなHARAの思いを受けて小説化プロジェクトがスタート。株式会社小学館 全面協力のもと、小説家・涌井学の執筆により児童小説の出版化が決定した。
悪戦苦闘して何かを習得するということの意義
秘境の村にマジックを教えてくれる人はいなかった。ではHARAはどのようにマジックを習得したのか。答えはテレビの中にあった。 当時頻繁に放送されていたマジックの番組をビデオ録画し、ビデオデッキに付いているスロー再生機能やコマ送り機能、逆再生機能をフル活用して「なんとなくこうなっているのではないか」とタネを解明。それをひたすら繰り返していくことでマジックの原理を学んだ。あまりにもビデオデッキを酷使することにより壊した再生機は数知れず。今でもHARAの実家にはマジック番組が録画されたビデオが挟まったままで壊れたデッキが放置されている。 そして家の周りに何もない環境が故に集中してマジックの練習に取り組むことができる、何よりも時間があった。小学校までは路線バスで1時間。その移動中、バスの窓を鏡に見立ててHARAはひたすら練習に励むことにより、超絶のテクニックを習得したのであった。 今やスマートフォンやYouTube等の動画サイトの普及により、人々は簡単にいろんなノウハウを知ることができる時代となったが、この小説は苦労して何かを習得することも悪くはないと思わせてくれる。
自分を信じて努力を続けていると、困ったときに手を差し伸べてくれる人はきっと現れる
“独学”と言いつつも、HARAはずっと一人で生きていたわけではない。悩んだときや壁にぶち当たって絶望したときには、親や兄弟、友達や先生、はたまた近所のおじいちゃんおばあちゃんが常にHARAを助けてくれた。 ただ運がいいということではなく、努力を怠らないこと、感謝の気持ちを忘れないことで“ラッキー”が寄ってきてくれたのだ。本作の中で具体的なエピソードも交えながら、このことが巧妙に描かれている。 コロナウィルスの影響で人と人との繋がりの大切さを改めて実感する昨今、この小説を通じて人々の愛の力も感じて欲しい。
HARA コメント
最寄りのコンビニまで車で1時間。お風呂は薪風呂。携帯はもちろん圏外。
世界遺産、熊野古道の山奥で僕は生まれました。
何もない山奥からラスベガスで活躍できるマジシャンを夢見て、
師匠にもつかず独学で
起きている時間全てをマジックに注ぎました。
振り返ると、僕にはマジックしかありませんでした。
マジックに出会った5歳のあの日から世界大会で優勝するまでの
漫画のような日々が本になりました。
不可能を可能にするのは、自分を信じる勇気。
やりたいことがあるけど、自分には無理かも?と諦めている人に
是非読んでもらいたい一冊です。
大人が読んでも子供が読んでも楽しめる、そんな内容になっています。