【東名あおり差し戻し審】被告、胸張り無罪主張 遺族らと目を合わせず

差し戻し審初公判が始まった横浜地裁=27日午前10時すぎ、横浜市中区

 「事故になるような危険な運転はしていません」

 約3年ぶりに横浜地裁101号法廷の証言台に立った被告の男(30)。青沼潔裁判長から認否を問われると、おもむろに両手を前に掲げ、力を込めて訴えた。

 被告は午前11時の開廷前に、短髪に銀縁の眼鏡を掛け、上下黒のスーツと紺色のネクタイ姿で出廷。一審のジャージー姿とはまるで違ういでたちだった。顔は以前よりも色白に見えたが、証言台では胸を張り、堂々とした様子だった。

 検察官が起訴内容を読み上げている約20分間は両腕を体の横に下ろして拳を軽く握り、じっと前を見つめて微動だにしなかった。だが、手ぶりを交えて無罪を主張した後、一仕事を終えたかのように被告人席に深く腰を掛け、眼鏡を外して目をしばたたかせた。

 検察側と弁護側の冒頭陳述などでは、大柄な体を猫背に丸めて机上の資料に目を落とし、証拠の写真が廷内のモニターに映し出された際には画面を食い入るようにのぞき込んでいた。

 一、二審と同様、死亡した男性の母ら遺族は被害者参加制度を使って検察側の席に座った。正面の被告に険しい視線を向けたが、被告は目を合わせず、頭を下げることもなかった。

◆傍聴希望者は7倍超

 この日は朝から一般傍聴者向けに用意された21席を求め、7倍を超える151人が集まった。横浜市内でドライバーとして働く男性(45)は「今後にとっても重要な裁判。裁判官と裁判員には世間の声に流されることなく、しっかりと判断してほしい」と話した。

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