RKBの佐藤泉新社長が年頭会見。アバター姿で新サービスをPR

RKB毎日放送は、1月19日に社長年頭会見を開催。2021年6月に就任した佐藤泉代表取締役社長が、ネコ耳を付けた女性のアバターとして会見上のモニターに登場した。これは、昨年11月からスタートした、VR空間での取材や番組制作を代行するサービス「メタプロダクション」をアピールする演出。その後、ゴーグルやコントローラーを外したスーツ姿の佐藤社長が会見上へ現れた。

まずは、「昨年、創立70周年を迎え、中期経営計画のタグラインを『Be Colorful! rkb』と定め、彩り豊かでワクワクするカラフルな未来を願い、それぞれの色の主張、すなわち多様性を許容する社会を目指し、お手伝いをしたいと思っています」と企業方針を打ち出した。

次に、新サービス「メタプロダクション」の説明へ。「昨年末に、国内の放送局としては初となる、VR空間すなわちメタバース上での取材や番組制作を代行する放送局向けのサービス『メタプロダクション』をリリースしました。メタバースとはインターネット上に存在する(コミュニケーションを伴った)仮想空間のことで、利用者がアバター(化身)となり、距離を越えて多くの人と会話できたり、金銭を使って服や土地を売買できたりと、将来的には生活の一部をデジタルで行える空間です。メタプロダクションは、世界中で関心の高まるこのメタバースでの取材や番組制作のサポートを行うサービスです。カメラ撮影やディレクション、映像編集など技術面、演出面でハードルの高いメタバース内での取材を、制作経験が豊富なチームがサポートします」と語った。

RKBでは、19年から「エンタテ!区~テレビが知らないe世界~」(水曜深夜0:55、福岡ローカル)を放送してきた。佐藤社長は「その中で、AIやVR、Vtuberなど、最新テクノロジーを活用した番組制作に一早くチャレンジしてきました。番組では2年前からメタバースに注目してきましたが、奇しくもコロナ禍というタイミングが重なり、取材にさまざまな制限があった中でも、メタバースでは安全に取材することができ、その将来性を大きく感じることができました。2年間に蓄積されたメタバースでの実績が、今回のメタプロダクションへの発表とつながったのです」と解説。

さらに、「このノウハウを放送局や系列といった垣根を超えてシェアすることで、放送業界のテクノロジーを活用した制作の技術向上を牽引し、新たなコンテンツ作りや収益源の開拓に貢献していきたいと考えています。コロナ禍で番組制作やイベントにさまざまな制約を受けましたが、現場の部署の垣根を超えた連携と創意工夫で、新しい技術を取り入れながら、RKB全体が進化を続けていきたいと思います」と意気込んだ。

メタプロダクションの業務を担うRKBメディアイノベーションセンターの安増高志プロデューサーは「『メタバース上で行われているイベントと、それを見に行っているお客さんの模様を撮影してほしい』などの依頼を請け負うイメージです。現実の取材とは異なる技術の面をはじめ、メタバース内における慣習や、権利関係といったさまざまな条件をクリアできるノウハウを持ち合わせている点が強みです」と自信を見せる。現実社会の取材とは異なる許可や確認などの業務を、すべて委ねられるメリットは大きい。

佐藤社長に体験した感想を問うと「ゴーグルなどを着けて入った空間はゲームみたいな印象です。昨年6月に就任して以来、前任者より若返ったためか、(周囲の社員から)『あれやれ、これやれ』といわれておりますが(笑)、やってみて楽しかったなと思っております。メタバースの中で取材や撮影を行うサービスについては、すぐに理解することは難しかったですね。(自身も)しっかり勉強して、ほかの放送局に先駆けてやっていきたいなと感じております。実は先ほどのアバターもメタバース内にドローンを飛ばして撮影した映像なんですね。なので『何ができるのか』ということに興味がありますし、『どんな新しいことができるのか』を大変楽しみにしています」と答えた。

安増プロデューサーによると、メタバース内のデザインや広告といったプロデュースも想定しているとか。発表から約2カ月、すでに大きな案件が動きだしているという。今後の展開が楽しみだ。

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