犯罪行為に直面…対応「正解」難しく 車内で喫煙注意、高校生暴行事件

JRの各車両に設置されている非常通報装置(中央下部、JR東日本提供)

 JR宇都宮線の電車内で、喫煙していた男を注意した高校生が殴る蹴るの暴行を受けた傷害事件に対し、県内外から男を非難する声が上がっている。男は自治医大駅のホームでも執拗(しつよう)に暴力を振るっていた。専門家は「社会的規範より自己の目的達成を第一に考える人が一定程度いる」と指摘する。理不尽な犯罪行為に直面した時、どう行動すべきなのか。

 下野署や捜査関係者によると、傷害容疑で逮捕された宇都宮市、ホストクラブ従業員の男(28)は23日正午ごろ、優先席の壁側に足をもたれかけた状態で寝そべり、加熱式たばこを吸った。

 「お兄さん、たばこ吸ってますね。やめてもらえますか」。ぜんそくの持病がある那須塩原市、高校2年男子生徒(17)から注意されると、顔を近づけ威嚇。生徒が手で押しのけたところ逆上し、殴る蹴る、土下座を強要して足で踏みつけるなどの暴行を重ねたとされる。ダウンジャケットを脱ぎ、半袖から入れ墨をのぞかせて威圧した。

 一緒にいた容疑者の同僚や車掌らが止めても収まらず、自治医大駅で車両から降りても、ホームに血が飛び散るほど暴行を続けた。「相手が先に手で押してきたからやり返しただけ。俺は悪くない。正当防衛だ」と供述をしている。

 事件が報道されると同署には「高校生は立派だ」とたたえたり、容疑者を厳しく非難したり、「乗客は何をやっていたのか」など反響の電話が相次いだ。

 白鴎大の玉宮義之(たまみやよしゆき)准教授(社会心理学)は、規範意識の低い人の特徴を指摘する。「特定のパーソナリティー特性が複合した人は反社会的行動を取りやすく、子どもや女性など自分より弱いと考える人間に非を指摘されると特に不快感が強くなる」とする。「乗客には、周りも(制止するなどの)行動をしていないから、自分もしなくていいという『傍観者効果』が発生する。閉鎖空間ではさらに止めづらい」

 同署も迷惑行為者が刃物を持っているなどさまざまなケースの可能性を挙げ「状況ごとに適切な行動は異なり、一概に正解はない」と加える。迷惑行為を受けたり見たりした場合、JR東日本は「各車両に取り付けられているSOSボタン(非常通報装置)をちゅうちょなく押し、乗務員に知らせてほしい」と推奨している。

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