WRC開幕戦でGRヤリスの信頼性を確認。次は「サスペンションとデフに集中」とラトバラ代表

 1月20~23日、WRC世界ラリー選手権第1戦モンテカルロが行われ、同イベントでハイブリッドシステムを組み込んだ新型ラリーカー『トヨタGRヤリス・ラリー1』をデビューさせたTOYOTA GAZOO Racing WRTは、スポット参戦のセバスチャン・オジエが総合2位表彰台を獲得した。また、チームメイトのカッレ・ロバンペラが総合4位に入ったほか、エルフィン・エバンスとTOYOTA GAZOO Racing WRTネクストジェネレーションからの参戦となった勝田貴元の両名もポイントを獲得している。この結果に対し、チームを率いるヤリ-マティ・ラトバラ代表は「全体的に満足している」と語った。

 競技初日から元9冠王者のセバスチャン・ローブ(フォード・プーマ・ラリー1)と、現チャンピオンで8冠を誇るオジエによる“セバスチャン対決”が繰り広げられた2022年のラリー・モンテカルロ。

 最終的に47歳のローブがWRC通算80勝目を最年長優勝記録更新のおまけ付きで飾った同ラウンドにおいて、トップカテゴリーに参戦するトヨタ、ヒュンダイ、Mスポーツ・フォードの3チームは、共通プラグイン・ハイブリッドシステムを搭載したまったく新しいラリーマシンをデビューさせ、ラリー1レギュレーション下でスタートした“WRC新時代”の扉を開いた。

 そのなかで、ラトバラが代表を務めるトヨタ陣営は、優勝こそのがしたものの3チーム中唯一、出走した全車が完走を果たしている。

 4台全車が完走を果たしポイントを持ち帰ったことについて、ラトバラは「我々は全般的には、モンテカルロでのリザルトに関して満足している」と述べた。

「もちろん優勝できなかったことには少しがっかりしたが、一番重要なのは“勝てるクルマ”を作ることができたということだ」

「それに信頼性も充分に確保できた。さらに、ドライバーたちも満足してくれたということが重要なことだと考えている」

 ラリー1レギュレーション下で製作された車両は、シリーズ共通仕様のハイブリッドシステムの搭載だけでなく、アクティブセンターデフと6速パドルシフトの廃止、チューブフレーム構造ならびに5速シーケンシャルシフトの採用など、さまざま部分で従来のWRカーと異なるマシンとなった。トヨタは2022年の車両規定変更に合わせて、トヨタ・ヤリスからWRCで勝つために開発されたホットハッチモデル、トヨタGRヤリスへのベース車両変更も同時に行っている。

 2021年シーズン中から繰り返しテストが実施され、ついにモンテカルロでデビューした新型マシンのトヨタGRヤリス・ラリー1。このハイブリッドラリーカーの開発段階ではどこに主眼を置いたのかを尋ねたところ、同代表は次のように答えた。

「開発の主眼ということに関しては、もっとも重要な3つの分野が最初にあり、安全面と信頼性、あとはハイブリッドのソフトウェアの機能がそれらにあたる」

「そういった意味では、我々は初戦が終わったいま、ある程度の範囲でどのような機能が確保できているかということを理解している。そうしたこと踏まえたうえで、今後は他のエリアや分野などに(開発の)次の主軸を置きたいと考えている」

TOYOTA GAZOO Racing WRTのヤリ-マティ・ラトバラ代表 2022年WRC第1戦モンテカルロ
サービスパークで整備を受けるトヨタGRヤリス・ラリー1 2022年WRC第1戦モンテカルロ

■スウェーデンでのポイントはトラクションの確保

 開幕戦を終えたWRCの次戦はシーズン唯一のフルスノーラリーであるスウェーデンだ。約1カ月ほどあるインターバルの間にクルマのカイゼン(改善)していきたい箇所を問うと、彼は足回りをポイントに挙げた。

「我々のクルマはモンテカルロで信頼性が良好であることが分かった。また、ハイブリッドシステムも(大きなトラブルはなく、基本的には)問題なかったと言える」とラトバラ。

「次戦はスウェーデンなのでスノーラリーになる」

「だから、よりトラクションを確保しなければならないということで、もっとサスペンションやデフのセッティングに集中していきたいと考えているんだ」

■勝田には「確実にフィニッシュすることを心がけてほしい」

 開幕戦モンテカルロではコースオフや複数回のスピンがあったが、最後には8位でラリーを完走しポイントを持ち帰った勝田について、トヨタチームのボスは「次戦はトップ6に入れる」との考えを持っている。

「おそらく2018年だったと思うが、タカ(勝田)はスウェーデンで(WRC2で)クラス優勝を達成している。だから、彼がスノーラリーが好きだということは分かっているし、全般的には良いマインドで次のイベントに臨んでくれると思う」

「したがって、モンテカルロと比べてもう少しプッシュできるのではないかと思っているんだ」

「だが、一番重要になってくるのは、やはりラリーを無事にフィニッシュすることだ。そして、それによって自信をつけること」

「2021年のシーズン序盤は非常に好調だった。その意味では高いリスクを負わず、確実にフィニッシュすることを心がけてほしいと思っている。またモンテカルロのようなパフォーマンスを見せることができれば、彼は確実にトップ6に入れると考えている」

開幕戦を総合8位で終えた勝田貴元/アーロン・ジェンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第1戦モンテカルロ
スポット参戦した第1戦モンテカルロで総合2位となったセバスチャン・オジエ/ベンジャミン・ヴェイラ組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第1戦モンテカルロ

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