アブダビGP問題を調査中のFIA、F1レースディレクターのマイケル・マシ退任の可能性を認める

 FIAは、2021年F1最終戦で起きた問題の再発を防ぐための調査を行うなかで、新たなレースマネジメント体制を導入することを計画している。また、問題の原因を作ったFIA F1レースディレクター、マイケル・マシが現ポジションから外れる可能性があると、FIAモータースポーツ事務総長でありシングルシーター部門責任者のピーター・バイヤーが認めた。

 タイトル決定戦となったアブダビGPにおいて、F1レースディレクターであるマシが終盤のセーフティカー運用をレギュレーションに反する形で行ったことが、ルイス・ハミルトンとマックス・フェルスタッペンの勝敗に影響した。

2021年F1第22戦アブダビGP表彰式 ルイス・ハミルトン(メルセデス)&マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 マシはセーフティカー下でレースを終えたくないがために、レギュレーションに忠実に従わなかったものとみられている。レースのほとんどをリードしながら、著しく不利な状況に陥れられてタイトルを逃がしたハミルトンとメルセデスは、マシの行動に対して怒りと不信感を示し、メディアやファンからも強い批判の声が上がった。これを受けて、FIAは、今後の改善のための対策を講じるべく詳細な調査を行うことを約束した。

 FIAは、レースディレクターの負担を減らし、より落ち着いた環境のなかで、チームからの干渉を受けることなく判断を下せるよう、サポートを提供できる体制作りを行うことを計画している。

「レースディレクターは、スポーツディレクターでもあり、安全およびトラック上のデリゲートでもある。そのさまざまな仕事を分割することを検討している」とバイヤーが述べたとオーストリアの新聞『Vorarlberger Nachrichten』が伝えた。

FIAモータースポーツ事務総長ピーター・バイヤーとF1マネージングディレクターのロス・ブラウン

「単純に仕事が多すぎる。こういった役割を複数の人間に割り当てるのだ。それによりレースディレクターの負担が軽減される」

 また、バイヤーは、レース中のチーム代表とレースディレクターのコミュニケーションを遮断する意向を示した。

 2021年には、レース中に、マシに対してチーム代表らから問い合わせや要求が寄せられる場面が頻繁に見られ、アブダビでもレッドブル・レーシングやメルセデスの代表が自分たちに有利にレースが運用されるよう、マシにプレッシャーをかけていたことが分かっている。FIAは、レースディレクターに対してチーム代表が直接的に働きかけることを防ぐための体制を作りたい考えだ。

「チームマネージャーであれば(コミュニケーションをとることは)引き続き可能だ。彼らは質問できる状況でなければならない。だが、こういった要求を受け入れる従業員を緩衝の役割として置きたい」とバイヤーは言う。

「将来的には、レースディレクターは自分の仕事に集中できるようになり、他のことに気が散ることはなくなる」

■「マシはチーム側の信頼を完全に失ってしまった」という声も

 一方、マシが引き続きレースディレクターを務めていくのかどうかについて、注目が集まっている。『BBC Sport』によると、一部チームはFIA会長モハメド・ビン・スライエムに対し、マシを外して新たな人物をレースディレクターに起用するよう提言しているという。何人かの上級職に就く人物は、マシは2021年シーズン、あるいはそれ以前から何度も間違いを犯しており、アブダビでついに最大のミスをしたことで、彼に対する信頼は致命的に損なわれたと述べている。

FIAのF1レースディレクターを務めるマイケル・マシ

 しかし、レースディレクターを効果的にサポートするシステムが構築されるなら、マシが留任することに問題はないという意見を述べているチームもあるという。

 そんななかでバイヤーは、マシがレースディレクターのポジションから外れる可能性を認める発言を行った。

「マイケルはさまざまな面で最高の仕事をした。彼にもそう伝えた」とバイヤーは言う。
「だが、新しいレースディレクターが登場する可能性もある」

 FIAの調査は現在も継続中で、2月14日のF1コミッション会合において、提案を行い、それについての議論が行われるものと考えられている。

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