尾道でラーメンといえば、ご当地ラーメンの「尾道ラーメン」をイメージしませんか？
醤油味や豚の背脂が入っていて、味が濃い印象がありますよね。
アッサリとした味わいのラーメンが食べたいと思うときもあるかもしれません。
そんなときにおすすめの、尾道ラーメンと違ったアッサリとしたラーメンが人気の店が尾道市街にあります。
それが「めん処 みやち」。
昭和20年代に創業した老舗で、中華そば(ラーメン)のほかにうどん・そばなども楽しめる店です。
しかも看板メニューは、中華そばにてんぷらが入っているめずらしいメニュー「てんぷら中華」。
地元のかたはもちろん、観光客にも人気がある店です。
めん処 みやちの魅力や歴史を掘り下げていきます。
尾道本通商店街にある老舗・みやち
みやちは尾道市の中心市街地・尾道本通商店街(尾道本町センター街)にあります。
中華そば(ラーメン)、うどん、そばをメインとする麺処です。
創業は、なんと昭和20年代。
長年にわたって尾道市民のお腹を満たしてきた、市民におなじみの店です。
店舗は商店街に面していますが、店内への入口は商店街から延びる細い路地(浮御堂小路)側にあります。
店内はとてもこぢんまりとしており、席数は全部で10席のみです。
次から次へとたくさんのお客がやってきて、人気店なのがわかります。
いまでは尾道市周辺だけでなく、遠方から来た観光客も立ち寄るほど盛況です。
みやちのメニュー
価格は消費税込。 2021年(令和3年)12月時点の情報
みやちのメニューは、基本的に中華そば・うどん・そばの3種類です。
そして、それぞれにバリエーションがラインアップしています。
基本の「中華そば」は550円、基本の「うどん」「日本そば」は450円で、非常にリーズナブルです。
バリエーションも豊富で、どれもおいしそう。
どれにしようか選ぶのも楽しいのではないでしょうか。
「てんぷら中華」は、中華そばにてんぷらが入っためずらしいメニューです。
実はみやちの一番人気のメニューで、てんぷらが売り切れになることも多いそう。
また「中華うどん」は、中華そばのスープに麺はうどんというメニューです。
なお、みやちのメニューは持ち帰りができます。
持ち帰る場合、容器代としてプラス50円が必要です。
みやちのおすすめメニュー・人気メニューを紹介
たくさんあるみやちのメニューのなかから、おすすめのメニューや人気のメニューをピックアップし、紹介します。
「中華そば」はアッサリとしたやさしい味わいのスープ
「中華そば」(550円)は、みやちの基本的なメニューのひとつ。
とてもシンプルな見た目の中華そばです。
スープを飲むと、とてもアッサリとしたやさしい甘味と塩味です。
ダシの奥深い風味が広がります。
麺はプリプリとした弾力があっておいしいです。
チャーシューは薄めの味付けで、肉のうまみが楽しめます。
みやちの中華そばは、尾道ラーメンとは違ってとてもあっさりしていました。
スープまで全部飲み干せるような、昔懐かしい味だと思います。
「てんぷら中華」は一番人気の看板メニュー
「てんぷら中華」(680円)は、中華そばにてんぷらをトッピングしたものです。
中華そばにてんぷらという組み合わせは、めずらしいですよね。
てんぷら中華はかなりの人気メニューで、午後には売り切れることも多いとか。
入っているてんぷらは、小エビのかき揚げてんぷらです。
スープをシッカリと吸ったてんぷらは、フワフワとした衣の食感と、スープの味わいと衣の味わいが混じり合って絶妙においしいです。
そこにエビの風味や食感も加わります。
スープは基本の中華そばと同じものです。
しかし、てんぷらの衣から染み出た味わいが加わって、中華そばよりもコクのある味わいに感じました。
メンマやチャーシューも、中華そばと同じものです。
食べる前は中華そばにてんぷらという組み合わせは意外な印象でした。
しかし食べてみると「シンプルでアッサリとした味わいのスープだからこそ、てんぷらの味わいと合うんだろうな」と思いました。
また食べたくなるような味わいで、一番人気なのもわかります。
「カレー中華」も根強いファンが多い人気メニュー
「カレー中華」(700円)は、名前のとおりカレー風味の中華そば。
とにかくかなり熱々で湯気が立ちこめ、カレーのいい匂いがしてきます。
上に載っている糸トウガラシが印象的ですね。
カレー色をしたスープは、とろみが強めです。
熱々なので口の中をヤケドしないように注意しましょう。
スープは甘味とカレー特有のスパイシーさ、ダシの風味のハーモニーが絶妙です。
カレーうどんのような和ダシ風味と、中華そばのスープの味わいが混じり合っておいしい。
そこにタマネギの食感や甘味、牛肉の甘味なども感じられました。
麺は、中華そばと同じものです。
ちなみに希望すれば、飛び散り対策用に紙エプロンがもらえます。
長年にわたって尾道で愛されている老舗、めん処 みやち。
店主の加藤滋(かとう しげる)さんに話を聞きました。
みやちの店主・加藤 滋さんにインタビュー
長年にわたって尾道で愛されている老舗、めん処 みやち。
店主の加藤滋(かとう しげる)さんに開業の経緯や店の歴史、こだわり、今後の展望などの話を聞きました。
常連客だったが、みやちの味を残すために継承
──開業の経緯を知りたい。
加藤(敬称略)──
「みやち」は私で二代目です。
先代が昭和20年代に創業しました。
みやちという店名は、先代の名字「宮地(みやち)」から取られています。
実はもともと私は、みやちの常連客だったんですよ。
今(取材時=令和3年)から約30年前、先代が店を閉めると聞いたんです。
私はみやちの味が大好きだったので、なくなってほしくないと思いました。
実は先代の息子さんと私は友達でして、息子さんと話をしているときに、みやちを私に継がせてほしいとお願いしたんです。
息子さんが先代に話をしてくれまして、特別に私が継がせてもらうことになりました。
それから先代の元でみやちの味の指導を受け、店の運営を始めたんです。
──加藤さんは飲食店の経営の経験はあったのか？
加藤──
はい。
私は東北出身でして、尾道に来るまでのあいだほとんど飲食業界で働いてきました。
いろいろな店を経験しましたが、みやちを継ぐ直前は尾道市内でスナックを経営していたんです。
みやちを継ぐことになって、さすがにスナックとみやちを両方運営するのは大変そうだったので、スナックは閉めてみやち一本でいくことにしました。
先代から受けついだ味をしっかりと守る
──こだわっていることがあれば、教えてほしい。
加藤──
先代が昔から守ってきた味を継承させてもらいました。
だから、先代から受け継いだ味をこれからもしっかりと守り続けていくことがこだわりです。
メニューのほとんどは、先代の時代から同じなんですよ。
私が新たにつくったのは、「中華うどん」と「カレー中華」「カレーうどん」「カレーそば」くらい。
この4つも、ベースとなるスープは先代の味を元にしています。
中華うどんは中華そばのスープにうどんの麺を入れたものです。
尾道のラーメン店では、ときどきあるメニューなのでつくりました。
カレーうどん・そばは、うどん店やそば店で定番のメニューだったからつくってみたんです。
カレー中華も、ラーメン店のなかにはカレーラーメンを出す店があるからつくりました。
うどんとそばにカレー味があって、中華そばにないのもバランスが悪いというのもありますが。
なお、当店の基本のスープは中華そばのスープと、うどん・そばのスープの2種類。
これに載せる具材でいろいろなバリエーションを展開しています。
あとサイドメニューにちらし寿司だったり、期間限定のメニューを出していますね。
一番人気の「てんぷら中華」誕生秘話
──「てんぷら中華」が一番人気と聞いたが、中華そばにてんぷらを入れるのはめずらしい。誕生の経緯は？
加藤──
てんぷら中華は、先代の時代にすでにありました。
創業時にはまだメニューになかったそうですが、いつごろ考案されたのかはわかりません。
誕生の経緯は先代から聞いたことがあります。
てんぷら中華は、もともと店員のまかない料理だったんですよ。
てんぷらが余ったとき、いつもてんぷらうどん・てんぷらそばだと飽きるから、中華そばにてんぷらを入れて食べることがときどきあったと聞いています。
あるとき、まかないでてんぷら中華を食べているときにお客さんが来て、てんぷら中華を見て、おいしそうだから自分にも食べさせてほしいとお願いされたそうです。
それで出してみたらそのお客さんに大好評だったそうで、そのまま試しにメニューへラインナップしてみたところ、一気に人気メニューになったんです。
まかないから人気メニューへ大出世ですね(笑)。
今では店の一番人気のメニューになって、昼過ぎにはてんぷらが売り切れてしまうことも多くなりました。
毎日をしっかりと営業していき、長く店を続けていきたい
──今後の展望ややってみたいことは？
加藤──
これだけ長いあいだ、多くのお客様に愛されてきた店です。
少しでも長く、ボチボチと店をやっていくことですかね。
そのために毎日毎日を、しっかりと営業していくことが目標でしょうか。
尾道市民に愛されてきた老舗・みやち
70年以上にわたって尾道市民に愛されている老舗・みやち。
昔懐かしい店構えと中華そばやうどん・そばの味は、また食べに来たくなる味わいです。
尾道といったら尾道ラーメンもおいしいですが、尾道ラーメンとは違うアッサリとしたやさしい味わいのみやちの中華そばもぜひ食べてみてください。
