無線で孤立集落の通信訓練 大災害に備え、和歌山

防災行政無線で集落の住民から状況報告を受ける田辺市の職員(29日、和歌山県田辺市役所で)

 巨大地震による道路の寸断や電話回線の断絶など集落が孤立した場合に備えた通信訓練が29日、和歌山県内各地であった。田辺市やみなべ町など20市町村の約150集落が参加し、集落の住民が防災行政無線を使って被害状況などを役所に連絡した。

 訓練は、午前9時ごろに、県南方沖でマグニチュード(M)8.7の地震が発生し、地滑りなど土砂災害によって、各地で孤立集落が発生したとの想定で、約360人が参加した。

 田辺市では11集落が参加。「土砂崩れで道路が寸断された」「重傷者が1人。救急搬送を要するため、ヘリコプターを要請する」―。自主防災組織や自治会の役員が、市役所本庁の防災担当職員に無線で連絡し、動作確認や操作方法の習熟を図った。いずれの集落も通信は良好だった。

 県は2009年度に孤立の可能性がある集落に防災行政無線や衛星携帯電話を配備。各市町村でも配備を進めてきた。11年の紀伊半島大水害ではこれらの通信機器が機能した一方で、バッテリーが充電されていなかったり、無線機が水没したりして、通信できない集落も出た。

 田辺市防災まちづくり課は「集落への道がふさがれても、通信を確保できれば対処できる。使う機会が少ない機材だが、スムーズに運用できてよかった」と話した。

 県内には孤立の可能性がある集落が、御坊市を除く29市町村に合計564あり、今回参加しなかった集落も別日程で訓練する自治体がある。

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