財政難で返礼品競争へ参戦 京都市のふるさと納税寄付額3倍、人気の品は

京都市役所

 京都市は、2021年度のふるさと納税の寄付額が12月末までに約52億円と前年度の約3倍に上り、過去最高を更新したと発表した。京都のブランド力を武器に返礼品を大幅に充実させたことが奏功した。7年ぶりに寄付額が市民税の流出額を上回る「黒字」となる見通しだ。

 市は以前、「返礼品競争にはくみしない」との姿勢を取っていた。その結果、寄付額よりも流出額が上回る状態が続き、20年度は寄付額が約17億円、流出額が約40億円で約23億円の「赤字」となった。財政難に拍車をかける事態に危機感を覚えた市は競争に本格参戦。21年度は返礼品を20年度の約4倍の2300品目に充実させたほか、料亭で芸舞妓と「お座敷遊び」(寄付額100万~120万円)といった京都ならではのメニューを用意するなど力を入れた。

 注力のかいもあって、21年4~12月の寄付額は52億3千万円に達し、21年度を通しては60億8千万円となる見通し。流出額は49億8千万円を見込んでおり、「黒字」は11億円に上ると試算している。最も人気がある返礼品の種類は市内のホテルや飲食店で使えるクーポンやポイントなどの「旅行型返礼品」で寄付額の35%を占めた。2位はおせち料理で32%だった。

 総務省が昨年7月に公表した20年度の自治体別寄付額ランキングで1位だったのは宮崎県都城市で約135億円。京都市への寄付額が見込み通り60億円程度になれば全国でも上位になる可能性がある。ただ、ふるさと納税の市場規模自体が年々拡大する中、他の自治体も寄付額が多くなっており、市は「20位ぐらいでは」とみる。

 課題は、全国上位の自治体のように、年間を通じて寄付を集めやすい肉や米といった返礼品がそろっていないこと。市は「旅行型返礼品やおせち料理に続く3本目の柱が必要」として、さらなる返礼品の充実を見据える。また寄付額見込みが約60億円といっても、このうち半分の約30億円は返礼品の調達代や寄付を募る民間サイトの利用料などの経費に消える。

 市行財政局は「危機的な財政状況の中、流出が続く状態は放置できない。京都の魅力発信の機会にもなる」と意義を強調する。

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