聴覚障害者のシェアハウス 〝暮らしに交流、安心、生きがいを〟 県ろうあ協会など、大村に長崎県内初

建設中の「手話ハウス 結」=大村市黒丸町

 長崎県ろうあ協会などが、県内初の聴覚障害者のためのシェアハウスとなる「手話ハウス 結(ゆい)」を大村市黒丸町に建設している。企画してから約8年。3月末の完成を目指している。県聴覚障害者居場所づくり推進委の坂口義久委員長(68)は手話で「以前から寄せられていた開設を望む声を実現させられることになり、感慨深い。さまざまな人が交流する場にしたい」と語った。
 同協会によると、高齢の聴覚障害者の中には、手話はできるが、日本語を言語として理解できていない人も多い。こうした聴覚障害者は当然、日本語の文字を読むことができず、健聴者が利用する老人ホームなどに入所することは「言葉がわからない外国で暮らすようなもの」で、他の利用者や職員とうまくコミュニケーションが図れず孤立することがよくあるという。
 そこで、同協会は2014年に高齢聴覚障害者が安心して暮らせる施設づくりを計画。ニーズを把握するため、県内の55歳以上の同協会会員ら計202人を対象に実態調査をした。
 この調査で、県内に聴覚障害者専用の老人ホームがあれば入所したいと考える人が一定数いること、気持ちを伝える一番いい方法は手話であることが分かった。社会活動ではコミュニケーションを取ることができなかったり、生活情報が入らなかったりして困っている状況なども把握した。
 調査結果を踏まえ、18年に県ろうあ協会や全国手話通訳問題研究会のメンバーなどを中心に同推進委を結成した。当初は老人ホームを建設予定だったが、多額の費用が必要となるなど課題が多く断念し、シェアハウスに変更。昨年11月初旬に着工した。
 施設は延べ床面積約230平方メートル。1人用の個室が8部屋あり、各部屋の専有面積は12平方メートルでトイレと洗面所付き。共同風呂は二つ、交流スペースにキッチンや冷蔵庫などを整備している。総工費は約1億2千万円。半額は寄付、半額は金融機関から借り入れた。入居は4月末からになる予定。

 同推進委メンバーの本村順子さん(74)は手話で、「手話と日本語は別物で、目が見えても日本語が読めるとは限らない。この点をわかってもらえず、さみしい人生を送ってきた人をたくさん見てきた」として「このような人たちが日々生きがいをもって暮らすことができる、居心地のいい場をつくりたい」と話す。
 同推進委は施設が完成した後も、入居者にどのようなサポートが必要なのか協議を続ける。
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 県ろうあ協会は、施設の入居者を募集している。初期費用は12万8千円で、月の利用料は4万8千円。対象は成人の聴覚障害者。申し込みの締め切りは2月28日。問い合わせは県ろうあ協会(電095.847.2681、メールroua-ngs@siren.ocn.ne.jp、ファクス095.847.2572)。


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