デイトナ初参戦のロペス、実現には可夢偉の助けもあったと語る。決勝前にはトヨタWECのテストに“弾丸”参加

 2021年のWEC世界耐久選手権チャンピオンであり、2022年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第1戦デイトナ24時間に小林可夢偉と同じアリー・キャデラック48号車キャデラックDPi-V.Rで参戦しているホセ・マリア・ロペスは、デイトナの参戦契約に先立って、ともにWECを制した可夢偉とマイク・コンウェイが、IMSAでアリー・キャデラック陣営を運営するアクション・エクスプレス・レーシング(AXR)に対し、「いい話をしてくれた」と語っている。

 トヨタGAZOO Racingで7号車GR010ハイブリッドを駆って2021年のWECタイトルを獲得した3人は、ともにAXRが運営する2チームからデイトナに参戦している。コンウェイは48号車の姉妹車である、ウェーレン・エンジニアリングがスポンサードする31号車キャデラックDPi-V.Rのサードドライバーとして、ステアリングを握る。

 一方、ロペスは可夢偉のほか、7回のNASCARカップ王者であるジミー・ジョンソン、そしてマイク・ロッケンフェラーというラインアップで、自身にとって初となるデイトナに参戦する。

■可夢偉とは「お互いの目を見れば」分かり合える関係

 ロペスは、2021年のル・マンを訪れていたゲイリー・ネルソンやチャド・クナウスといったAXRおよび(IMSA参戦においてAXRと協業している)ヘンドリック・モータースポーツのキーパーソンと、初めて接触を持ったという。

 その頃、2021年に48号車から参戦したシモン・パジェノーはアキュラ陣営のマイヤー・シャンク・レーシングへの移籍が決まっており、48号車のシートは空いている状況だった。

 ル・マンで優勝した後、ロペスはデイトナで48号車をドライブするための正式な話し合いをもったが、そこではトヨタでのチームメイトに部分的に助けられたこともあったと示唆した。

「そこにチャンスがあると分かる度に、デイトナでレースをしたいと思っていた」とロペスはSportscar365に対して語った。

「この種のことのためには、すべてをうまくまとめる必要がある。昨年のル・マンでゲイリーやチームの人々と会ったことでチャンスが生まれ、そして僕はそれを手にした」

「確かに、チームメイトとして可夢偉とマイクがいることは助けになった。彼らは僕について、いい話をしてくれたんだ!」

 可夢偉は、ロペスのような耐久レース経験のあるドライバーに加わってもらいたかった、と付け加えている。

「シモンはアキュラへ移籍しなければならず、チームは新たなドライバーを探していました」と可夢偉。

「自分たちなら何をできるか分かっていたので、僕はホセを推しました。彼は耐久レースでの経験があるので、僕らは彼を乗せようとしたのです」

「AXRの人々は昨年のル・マンに来て、シモンの状況について話してくれました。そこでチームはホセに話をして、最終的には契約に至ったのです」

「若くて速いドライバーを雇うよりも、これははるかに簡単なことだったと思います。耐久レースは、他のレースとは違いますから。ホセは(WECで)いつも同じクルマに乗っているので、彼のことは良く分かっています。これはベストな決断でした」

ジミー・ジョンソンのクルーチーフとして7度のNASCAR制覇にも貢献したチャド・クナウス(右端)と話す可夢偉とジョンソン

 ロペスは世界チャンピオンである可夢偉との協力関係のおかげもあり、うまく48号車のシートを手に入れたように感じているという。

「僕は彼を知っているし、彼もまた僕のことを知っている。これはいいことだ」とロペスは語っている。

「僕らは長いこと一緒に働いてきた。お互いの目を見るだけで、多かれ少なかれ必要なことが分かるんだ」

「クルマを速くするために、可夢偉が何を必要とするかは分かっている。可夢偉もまた、僕が何を必要としているか知っている。明らかに、これは助けになることだ」

「だけどこのレベルでマシンをシェアするドライバーは、全員が最高だ。マイク・ロッケンフェラーはこれまでに多くの勝利を収めているし、彼に合わせることは問題にはならない」

「ジミーも素晴らしい。彼は偉大な人間でありドライバーで、学ぶこと、チームを助けることに対して常にオープンだ。本当に素晴らしいクルーとともにいられて、最高だよ」

 IMSAにおけるルーキーであるロペスは、選手権のスポーティング規則を含むいくつかの新しい要素に適応する必要があったという。

「イエローやウェーブ・アラウンドなど、いくつかの慣れるべきことがある」

「僕らが(WECなどで)通常行うこととは、異なるものがたくさんある。だけど、映像を見たりして準備をすることは必要不可欠だし、僕はレースへの準備ができているよ」

「いつもとは異なる働き方、異なるクルマを見ることは、素晴らしい」

■トヨタの“ドライバー不足”のため、スペインを往復

ロペスが可夢偉、ジョンソン、ロッケンフェラーと走らせるアリー・キャデラックの48号車キャデラックDPi-V.R

 また、デイトナ24時間の決勝はコンウェイとロペスにとって、「クレイジーな1週間」の終わりも意味している。

 彼らは決勝前週の公式テスト『ロア・ビフォア・ザ・ロレックス』を終えたあと、トヨタのル・マン・ハイパーカーの開発テストに参加するため、日曜日にはスペインのアラゴンに飛んだ。

 ふたりは月曜日と火曜日の耐久テストに参加した後、木曜から始まるプラクティスに間に合うよう、水曜日の午後にはアメリカ・フロリダ州のデイトナビーチに舞い戻っていた。

「とりわけトヨタのドライバーをやりくりするのが困難だったことから、僕らがアラゴンにいることが重要だった」とロペスは述べている。

「セバスチャン・ブエミとニック・デ・フリースはフォーミュラE参戦のため、早くに移動しなければならなかった。今回は耐久テストだったので、ドライバーが不足していた。だから僕らが行かなければならなかったんだ」

「夜に走らなければいけなかったから、寝ないでいるのはキツかった。だえど、僕らはチームプレイヤーだからね」

 デイトナとアラゴンのテストにおける、潜在的な類似点のひとつは寒さだった。デイトナでも決勝夜の気温は1度まで下がると予測されているが、ロペスによればアラゴンでは氷点下に達していたという。

「昨年(テストで雪が降ったとき)よりは良かったけど、とても、とても、とても寒かったよ」とロペス。

「夜には、走れなくなるくらいのところまでいった。路面温度はマイナス15度に近かった」

「外気温はマイナス3度とか4度といったところだった。路面温度は本当に低かったけど、僕らはなんとか夜を通してプログラムを成し遂げた」

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