引退したユース選手を見捨てない!プレミアクラブが「引退後3年ケア」を初導入したワケ

日本でも話題になるサッカー選手が引退した後のセカンドキャリア。

クリスタル・パレスはアカデミーの段階で退団した元選手たちを3年に渡ってケアをする試みをプレミアリーグクラブで初めて導入した。

『The Football Family』によれば、アカデミーのディレクターであるギャリー・イソット氏はこう述べているそう。

ギャリー・イソット(クリスタル・パレス アカデミーディレクター)

「(なぜトップチームに選ばれたなかった選手に3年間のアフターケアを提供することを決めたのか)

8歳から18歳までや12歳から22歳までなど、アカデミーで10年を過ごした後のPDP期間(17~22歳)にドロップアウトする選手が非常に多いのは周知の事実です。

そして、アカデミーのシステムが選手の経験を豊かにするものであることも分かっています。彼らはサッカー以外でも役立つ能力を身につけて退団していきます。

ただ、そういう選手たちがプロクラブを去るという最初のトラウマに対処することは、多くの場合、非常に困難なものです。

転職に有利なスキルがあるのか、他の道に進むなかでどんな価値をもたらせるのか、どうやって他のものに興味や情熱を追い求めるのかを理解することはとても難しい。

引退する時に苦しむ子を多く見てきましたし、私自身にも経験があります。

私も90年代初めにルートン・タウンを退団した際に苦しみました。いま振り返ってみると、それはちょっとした悲嘆によるものでしたが、サッカーや友人グループのことが恋しかったんだと思います。

そこで、クラブにいる同じ考え方の人達とともに3年間のアフターケアパッケージを提供することを決めたんです。

会長もこの取り組みにとても協力してくれています。

我々の使命はトップチームに選手を送り出すだけではありません。トップチームに入るか否かにかかわらず、アカデミーの選手を育成して導くという義務があるんです」

「(3年間のアフターケアに至った経緯は)

サポートの期間は偶然思い付いたものではありません。

選手たちがいつ、どのように、なぜ我々のサポートを必要とするのか。その根拠をクラブ内のワーキンググループに検討させました。

例えば、退団した後の気持ちや課題は選手たちによって異なります。

すぐに他のクラブが見つかる選手にはサポートは必要ありません。トライアルを受けたり、フルタイムの選手になるために試行錯誤するケースもありますが、問題はないでしょう。

それ以外に、うちには戻ってきたくないという選手もいます。まだここに立場がある選手は『近しい人間たちばかりがいるクラブに戻る』とは言い出しにくい。残念なことではありますが、戻ってくることには恥ずかしい要素もあるんです。

いま何をしているのか、所属クラブはあるのか、などと聞くことは非常にデリケートで、放出された選手たちにとっては非常にネガティブなものになります。

だから、彼らはクラブやそこで働く人たちから距離を置くことで、恥ずかしさから逃れていることが多いのです。

我々はそれを打ち破らなければいけません。サッカーが好きなら、プレーする以外にもこのクラブで新しい道があると、素晴らしいチャンスがあるとアピールしなければいけません。

メディカル、アナリスト、スポーツ科学、テクニカルディレクター、コーチ、指導役、選手サポート、マーケティング、メディア担当、グラフィックデザインなど無限にあります。

我々はサッカーを愛する選手たちともう一度携わることを続けることで、クラブでプレーする以外にも人生の道があることを示そうとしているんです」

「(どうなれば成功か)

以前は(退団から)5年後くらいに選手がやってきて、指導を求められることがありました。旧システムのせいでそうなっていたんだと思います。

いまはクラブがサポートや窓口を提供しているので、その時間を大幅に縮めて、若者が新たな情熱とキャリアを探す際に直面する壁への解決策を見つけられるようになることを期待しています。

アカデミーシステムの早い段階から『自らのセカンドキャリアビジョン』を全員にアピールしていくつもりです。

なぜなら、サッカー選手としてのキャリアはいつかは終わるものであり、全てのサッカー選手が確実に直面するものだからです。

マイケル・カマラ(現U-13コーチ)のように元アカデミー選手が戻ってきて、私たちのサッカープログラムにいい付加価値を与えてくれることはまさに望んでいることです。

そういう選手たちはサッカー以外にも転用できるスキルを多く持っているので、クラブ内外での新たな進路を照らして、彼らが私たちを必要としなくなるまで、そのプロセスをナビゲートする手助けができれば、私たちのサクセスストーリーになるはずです。

それはサッカー選手を生み出すという第一の目的と同じように祝福されるものになるはずですよ」

イソット氏はパレスでウィルフリード・ザハやヴィクター・モーゼスを育成してきた人物。

【写真】「10代で衝撃デビューした逸材10人と彼らのその後」

同氏はU-18選手とともにシャワーを浴びたとして、2018年に一時的に職務停止となったが、不適切な行動はなかったとして復職している。

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