実在のセクハラ事件に基づいたフィクション 無意識の悪意に囲まれ孤立する被害者 「ある職場」公開決定

第33回東京国際映画祭の「TOKYO プレミア 2020」に出品された映画「ある職場」が、3月5日より劇場公開されることが決まった。

「ある職場」は、実在したセクシャル・ハラスメント事件に基づき、その後日談として創作されたフィクション。ホテルチェーンでフロントに務める大庭早紀は、上司に密室でセクシャル・ハラスメントを受ける。事件は瞬く間にホテルの内外に知れ渡り、SNS上でも誹謗中傷を浴びて炎上する事態に発展する。職場の暗い雰囲気を変えようと、ホテルの同僚スタッフたちは大庭を誘い、湘南の海辺にある社員用保養所への小旅行を企画。旅行先で大庭を励まそうとする同僚たちだったが、 SNS上でバッシングをしているアカウントが、職場の同僚である可能性が浮かび上がる。

監督を務めるのは、「フタバから遠く離れて」などのドキュメンタリー映画も制作している、映画作家の舩橋淳。当初はドキュメンタリーとしての映画化を考えたが、実在の人間を映すと、個人名や職場を特定される恐れもあり、制作は困難と判断。フィクションとして再構成することになった。同調圧力の空気がいつしか無意識の悪意のかたまりとなり、二次加害、三次加害と増幅して被害者を孤立させていく様子を描く。シナリオはなく、舞台設定だけ与えられた俳優たちが即興に近い演技を見せる。 映画・ドラマで活躍する平井早紀が主演している。

舩橋淳監督、平井早紀のコメントは以下の通り。

【コメント】

■舩橋淳監督
僕は映画作家として時代の無意識を描き出したいと考えている。
「ある職場」は、今の社会がいかに未成熟かを描きだした作品である。人権意識の希薄な人間が寄り集まり、正しいことと間違っていることの線を引く事ができないとき、混乱は続くしかない。
人間関係は悪化の一途を辿り、誹謗中傷の二次被害は様々な善意と悪意に翻弄され、広がり続ける。

差別意識が微塵もない加害者の悪意、穏便に揉み消そうとする上司の保守意識、互いを疑う同僚たちの闇、そして傷ついた被害者女性の悲哀――
心の奥底に降りてゆくような精神の映画にしたいと考え、モノクロームの色調を選んだ。

人間の弱さと愚かさが露呈した大混乱のあと、本当に大切なものとはなにか?
と問いかける映画になってほしいと願っている。

■平井早紀
この作品で繰り広げられる議論は、もしかしたら現実の同僚同士の会話としては非現実的に感じてしまうかもしれません。ですが作中の彼らの心の中に生まれた苦しみや憤りは、現実の皆さんが抱くものと、大きくは変わらないのではないでしょうか。映画には観た人の明日を変えてしまう力があると思っています。
この作品が、観てくださった方の明日に少しでも勇気をもたらすものであることを、切に願います。

【作品情報】
ある職場
2022年3月5日(土)ポレポレ東中野にてロードショー
配給:株式会社タイムフライズ
© 2020 TIMEFLIES Inc.

© 合同会社シングルライン