なべやかん遺産|「モアイ」 芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「モアイ」!

新婚旅行でモアイを

新婚旅行で行ったイースター島。

8年前、新婚旅行でイースター島に行った。新婚旅行をイースター島に決めた理由は、奥さんがモアイ好きでグッズを集めていて「イースター島に行ってみたい」と言っていたし、自分も昔から興味があった場所なので行く事にした。

イースター島はチリから飛行機で行くため、どえらい時間がかかる。新婚旅行のコースは、イースター島に行った後にハワイに寄って帰るというコースにしたのだが、日本→イースター島→ハワイ→日本だと飛行機代が高額になってしまうので仲の良い旅行代理店さんが最安値コースを選んでくれた。

それが地球一周コースだった。

羽田からイギリスに行き飛行機を乗り換えてスペインへ。スペインのマドリードで一泊してチリに行き、そこからイースター島に入る。帰りはチリからアメリカ本土のマイアミに行き、そこからハワイに入り日本に帰るコースだ。

文章で読むだけなら簡単なフライトだが、実際にこのフライトをエコノミークラスで行くと地獄だ。狭い空間で何度寝て起きてもまだ雲の上。

イギリスでのトランジットも数時間だし、機内で書いて空港で出す書類もラテン語なのでわからないし、空港の入管で職業を聞かれコメディアンと言ったら信用されないし、とにかく大変だった。

チリからイースター島に行く飛行機は小型機パンパン状態で日本人は我々夫婦だけ。

マタベリ国際空港に着くと乗客全員が拍手と歓声を上げる愉快なフライトだった。空港から歩いてもすぐの所に島の中心地であるハンガロアの街がある。宿泊したホテルはハンガロア中心地と空港の間だったので、本当に近かった。

モアイの誤った知識

ガイドの川口さん

空港にもホテルの外にもモアイ像があったのだが、本物か偽物かわからない。早く本物が見たい。そんな気持ちを抑えながらホテルでガイドさんが来るのを待った。少しすると日本人ガイドの川口さんがやって来た。芸人仲間の柴田容疑者に容姿も声も似た感じの人だったので、とても親近感がわいた。(川口さんの説明で本物と判明!)

川口さんの案内と説明を聞きながら二日間島中を見て回ったのだが、今まで自分が持っていたモアイ像に対する知識がいかに糞だったかというのがわかった。

まずモアイとは、ラパヌイ語で“像”という意味があるので、モアイ像という言い方は間違えなのだ。
こういった間違えって他にもあるよね?

チゲ鍋とかもそうでチゲが鍋という意味だし、フラダンスもフラが踊りという意味のように重複して言っている場合がある。「TBSラジオ『爆笑問題の日曜サンデー』、ゲストは寺門ジモンさんです」みたいな重複かな。(笑)

子供の頃、モアイはピラミッドくらい古い建造物で、建造には宇宙人が携わっていたと信じていた。ところが川口さんの話を聞くと、全く違う事がわかる。ポリネシア人がイースター島に渡って来たのは5世紀くらい。

つまりハワイの先住民と同じ民族という事になる。そして、モアイが作られたのが10世紀くらいだそうだ。クフ王のピラミッドは紀元前2500年頃だから、モアイの歴史はわりと浅い。

日本でいえば平安時代で古今和歌集が作られた頃になる。モアイといえば皆が頭に思い浮かべるのは、直立しているものだが、初期の頃には正座しているモアイもある。

現在、完全な形で確認できるものは一体しかないが、パーツはいくつか見つかっているようだ。

正座モアイ、前から見た図と後ろから見た図。
双頭のモアイ。胴体部分しか残っていない。

検査員に笑われくらいのモアイグッズ

世界で一つのモアイの目。

モアイはアフと呼ばれる祭壇に祀られていて、そこで目を入れられる。モアイの製造所である採石場のラノ・ララクにあるモアイは祭壇に祀られていないので目をハメる溝がない。

そのモアイの目だが、現在イースター島の博物館に実物が一個残っているだけで、他には無い。1722年、オランダ人が島を発見し、その後、島を訪れたヨーロッパ人が祭壇に祀られているモアイを確認している。

1838年、フランス人が一体のモアイがアフに立っていたのを確認しているが、その後、全てのモアイは倒された。何故倒すのかというと、村同士の争いや、白人が入って来てキリスト教を広めた事により土着の宗教が失われたからである。祭壇に祀られてモアイを倒し、目を破壊する。

目にパワーが宿ると言われていたので目を恐れるのだ。現在立っているモアイは観光の為に日本企業が協力し復元したもの。倒されているモアイよりも、やはり立っているモアイを見ると感動する。

イースター島やチリの空港にお土産物のモアイが沢山売られている。がしかし、オリジナルのモアイと同じ石で作られている物は無い。本物のモアイは凝灰岩で作られている。

凝灰岩を使ってしまうと島から凝灰岩が無くなってしまうためである。似た感じの石、木彫り、様々なモアイが売られているのでアホみたいに買ってしまった。帰り、チリの空港で荷物チェックをされた時、トランクからモアイがゴロゴロ出て来て検査員に笑われてしまったくらいだ。

ハワイに行く度、モアイグッズを買っている。同じ民族というのもあるのだろうか、モアイを発見する事が多々ある。

自分好みのモアイを探す楽しさ

大魔境20世紀、こういった記事に騙された我々世代。(笑)
南村喬之先生の描いたモアイ画。
南村喬之先生の原画。

それでは、モアイグッズを紹介しよう。まずは、70年代の少年マガジンに掲載されたモアイ。当時、こういった記事が多かった為、間違った知識を持った人達が多いのだ。もちろん自分もその一人。当時の少年マガジンと南村喬之先生が描いた原画。原画はペンで描かれている。

イースター島で買って来たモアイは軽石、木など様々。作家の個性が出てしまっているので、自分好みのモアイを見付けるのが楽しいが、より本物に近い物をなるべく買うようにした。

ティキマグとランタンのモアイ。目のビー玉が素敵だ!

ハワイで買ったモアイはティキマグが多い。ビールジョッキとして使われるのだが、飲みにくいよな~。マグに似ているが、ランタンのモアイはお気に入り。

ハワイの『SPARK』で買った物で、目にビー玉がハメられていて蝋燭の炎で目が輝く。ランタンとして使った事は無いが、火がともったら幻想的な感じになる気がする。

モアイグッズ色々。家中のモアイをかき集めればまだまだある。
モアイグッズ色々。家中のモアイをかき集めればまだまだある。
イースター島で売っていたモアイ。
イースター島やチリ空港には木彫りや石堀、色んなモアイが売っている。

その他、日本で買ったモアイ置物など様々あるがどれも味わいがある。ただ、本当にモアイを理解して作られた物がどれだけあるかは疑問ではあるが…

コロナ禍でイースター島には観光客が無い。観光でなりたっている島なので、一日も早くコロナが収まり元の島の生活に戻ってもらいたい。そうしたら川口さんも島で活躍出来、日本に帰って来る事も出来る。

たまイースター島に行きたいな。その時は川口さん、ガイド宜しくお願いします。日本に帰って来た時は東京観光はお任せください。

自宅ベランダに置いているモアイが良い感じになって来た!
自作モアイ。イースター島から帰って来た後に作ってみた。まだまだ未完。

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