〔海外〕2021年下半期の災害を振り返る<7月~12月>

2021年下半期(7月~12月)に発生した海外での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。

※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。

●7月
【政変・政情不安】ハイチで大統領暗殺
[被害]死者1人
7日未明、ハイチでジョブネル・モイーズ大統領の私邸に武装集団が押し入り、モイーズ大統領が暗殺された。捜査により、武装集団の中にはコロンビア人26人、ハイチ系米国人2人がいたことや、計画に同国の政治家や大統領の警備隊が関係していたことが判明。捜査当局は政治的な目的で暗殺が行われたと発表している。その後、ハイチの政府・経済機能は混乱し、国内では拉致事件が相次いで発生した。

【政変・政情不安】南アフリカで大規模な暴動
[被害]死者337人、略奪被害4万件
9日、南アフリカで大規模な暴動が発生し、南東部クワズールー・ナタール州を中心に1週間ほど続いた。この暴動で、死者は22日時点で337人にものぼった。また、4万件の店舗や事業所が略奪や放火などの被害を受け、2500人以上が逮捕された。発端になったのは、癒着疑惑のあった前大統領ズマ氏の収監で、長引く経済停滞への不満が暴動を激化させる要因になった。

【自然災害】ドイツ西部とベルギー東部で豪雨
[被害]死者216人、負傷者多数
14日、ドイツ西部を中心に豪雨とそれに伴う洪水が発生した。24日までにドイツでは180人、ベルギーでは36人の死亡が確認された。現地では14日夜を挟んで一晩で150ミリから200ミリと、2ヶ月分に相当する激しい雨が降り、小さい河川を中心に一気に増水した。また、地下室にいて洪水の被害にあった人も多く、人的被害が拡大した。

【自然災害】中国河南省で豪雨
[被害]死者302人、行方不明者50人、被災者1450万人、経済被害1.9兆円
中国の河南省では17日から大雨が続き、省内の各地で冠水や河川の堤防決壊による大規模な洪水が発生した。特に省都の鄭州市では17日から20日にかけ、累計で平年の1年分の雨が降り、20日には時間雨量が200ミリを越えた。被害は大規模なものになり、鄭州市内ではトンネルや地下鉄への浸水が発生。40人弱が地下空間で溺死した。8月2日の河南省政府発表によると、この大雨で省内では302人が死亡、50人が行方不明となった。また、被災者は1453万人、経済被害は1142億元(約1.9兆円)にものぼった。

●8月
【政権・政情不安】アフガニスタンでタリバンが政権掌握
[被害]-
15日、イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧、大統領府を占拠し政権を掌握した。20年にわたり駐留していた米軍が撤退開始した4月下旬以降、各地で戦闘を行い、次々と州都を制圧していた。9月8日には新政権発足を宣言した。タリバンが政権を主導するのは、2001年米同時多発テロ後の米軍などによる攻撃で旧タリバン政権が崩壊して以来20年ぶりとなる。9月6日には抵抗勢力が拠点とするパンジシール州も掌握し全土で戦闘は終了したとしたが、抵抗勢力は否定している。旧政権時に国際テロ組織アルカイダを擁護したタリバンに政権が移行したことで、アフガニスタンが再びテロの温床となることが危惧されており、既に過激派組織「イスラム国」系勢力のテロ攻撃が頻発している。旧政権時にはイスラム法に基づく厳格な統治が行われており、再び同じような統治が復活することを懸念し、国外への脱出を望む市民がカブールの空港に殺到した。新たな暫定政権もイスラム法に基づく統治を宣言しており、旧政権同様に女性の権利に対する抑圧が再び行われているため、各国から批判の声が上がっている。

【自然災害】ハイチでM7.2
[被害]死者2189人、負傷者1万2000人以上、建物損壊13万棟以上(8月18日時点)
14日08:29(日本時間同日21:29)、ハイチ西部を震源とするM7.2の地震が発生し、地元当局は18日までに2189人が死亡、1万2000人以上が負傷したと発表した。公共施設を含む13万棟以上の建物被害も発生した。16~17日にかけて熱帯暴風雨が通過し、屋外避難者や救助活動へ打撃を与えた。
7月に大統領が暗殺されて以降治安の悪化や貧困が深刻化しており、9月にはアメリカ国境にハイチからの移民が押し寄せた。
ハイチでは2010年にも首都近郊でM7.0の地震が発生し、31万人以上が死亡した。

【テロ】アフガニスタンの空港近くで爆弾テロ
[被害]死者約180人
26日、アフガニスタンの首都カブールにある空港近くで爆発と銃撃があり、100人以上が死亡した。犠牲者は、13人が米兵、約170人がアフガニスタン人で、タリバンのメンバーも含まれている。当時空港内外には、国外へ退避する各国の滞在者らや、同じく脱出を望むアフガン人が多数集まっていた。タリバンと対立関係にある過激派組織「イスラム国」系の集団による攻撃とみられる。27日と29日には米軍が報復として空爆を行った。しかし29日の攻撃では、市街地に停められた車両を狙った際に市民10人が巻き添えで死亡し、米軍が誤爆を認めている。

●9月
【火災】インドネシアの刑務所で火災
[被害]死者41人、負傷者81人
8日01:50(日本時間同日03:50)頃、インドネシアの首都ジャカルタ近郊にある刑務所で火災が発生した。火は1時間半後に消し止められたが、1区画が全焼し、受刑者ら41人が死亡、81人以上が負傷した。出火元は電気系統とみられている。インドネシアでは刑務所が不足しており、火災が起きた区画には定員の2倍以上の人が収容されていた。

【事件】ロシア中部の大学で銃乱射
[被害]死者6人、負傷者28人
20日午前、ロシア中部の都市ペルミにある国立大学で銃乱射事件があった。この事件で6人が死亡、28人が負傷した。犯人は大学に通う18歳の学生で、駆けつけた警官と銃撃戦になったのちに拘束された。ロシアでは発砲事件は比較的少ないが、今年5月には西部カザンで銃乱射事件が発生しており、事件後には銃が購入できる年齢を21歳に引き上げる法改正が行われた。今回の事件を起こした学生は銃を法改正直前に購入していた。

【事故】アメリカ西部で列車脱線
[被害]死者3人、負傷者50人以上
25日16:00頃(日本時間26日07:00頃)、アメリカ西部モンタナ州でアムトラックの都市間列車が脱線、一部車両が横転した。この事故で3人が死亡し、50人以上が負傷した。列車は機関車2両と2階建て客車8両からなる10両編成で、脱線したのはそのうちの7両。事故当時、146人の乗客と乗員16人が乗車していた。

●10月
【自然災害】インド各地で豪雨
[被害]死者116人
15日頃からインド各地で豪雨となり、洪水などによる被害が相次いだ。南部のケララ州で地滑りや鉄砲水が発生し39人が死亡したほか、北部のウッタラカンド州でも複数の場所で土砂崩れが発生するなどして46人が死亡した。これらの地域で10月に豪雨となることは珍しく、現地メディアによると、ウッタラカンド州では例年の10月の約5倍の降水量を観測した。また、隣国ネパールでも豪雨被害が相次ぎ、少なくとも54人が死亡した。

【政権・政情不安】スーダンで軍事クーデター
[被害]死者46人(12月20日時点)
25日、スーダンで国軍によるクーデターが実行され、当時のハムドク首相が拘束された。2019年に民主化デモをきっかけに長期政権が崩壊して以降、軍民共同で統治を行ってきたが、民主派を排除し軍が実権を掌握するかたちとなった。軍側は、軍と民主派の政治対立が続いていたことで内戦に向かう恐れがあり、政情安定のために必要な行動だったと正当化。各国からの批判に対しては、軍事クーデターではないと主張した。クーデターを受けて、市民による大規模な抗議デモが全土で発生したのに対して軍は実弾や催涙弾を用いてデモ隊を弾圧し、12月20日時点でデモ参加者46人が死亡した。

●11月
【事故】ナイジェリアで建設中のビル崩壊
[被害]死者42人
1日、ナイジェリア最大の都市ラゴスで建設中の高層ビルが崩壊した。がれきの中に多くの人が取り残され、6日までに42人の死亡が確認された。建設現場は高級住宅エリアで、崩壊当時50人以上が作業に従事していたとみられる。ナイジェリアでは建築基準が遵守されないことが多く、崩壊事故がたびたび発生している。

【事故】ブルガリアの高速道路でバスが炎上
[被害]死者46人
23日02:00頃、ブルガリアの首都近郊の高速道路でバスが炎上した。この事故で未成年者を含む46人が死亡した。バスはトルコのイスタンブールから北マケドニアに帰る途中で、死亡した人のほとんどが北マケドニア国籍だった。

【火災】ロシア・シベリア西部の炭鉱で火災
[被害]死者52人
25日、ロシア・シベリア西部にあるケメロボ州の炭鉱で火災が発生した。坑内には煙が充満、窒息などで52人が死亡した。発生当時、坑内には285人の作業員がいたが、46人が取り残され、救出にむかった救助隊員も巻き込まれた。火災の原因について捜査当局はメタンガスの爆発と発表した。

●12月
【自然災害】アメリカ南部・中西部で竜巻多発
[被害]死者91人、負傷者多数
10日夜から11日未明にかけて、南部や中西部で竜巻が多発し、8つの州で被害が発生した。米全土で91人が死亡し、そのうち特に被害の大きかったケンタッキー州では77人が死亡した。一晩で観測された竜巻は59個にのぼり、壊滅的な被害を受けたケンタッキー州メイフィールドでは風速約85メートルに達する竜巻が通過した。

【自然災害】フィリピンに台風22号上陸
[被害]死者405人、行方不明者82人、負傷者1147人、被害家屋約53万軒
16日午後、台風22号が猛烈な勢力でフィリピンのシアルガオ島に上陸。17日にかけてフィリピンを横断し、ボホール州やセブ州を中心に中部や南部で洪水や地滑りなどの被害をもたらした。12月31日時点で405人が死亡し、82人が行方不明、1147人が負傷した。家屋被害は約53万軒にのぼり、学校や病院などの公共施設も甚大な被害を受けた。

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