FSモータースポーツS.A.が2022年新規参戦を表明。フィアット・クロノスSTC2000を投入

 2022年2月18~20日の週末にアルゼンチン・コルドバ州北部アルタグラシアのアウトドローモ・オスカー・カバレンで予定されるシーズン開幕を前に、同国が誇る人気ツーリングカー選手権、スーパーTC2000(STC2000)のグリッドに新規チームの参戦がアナウンスされた。

 自身も元プロドライバーとして活動したフェデリコ・スアレス・サルビア率いるFSモータースポーツS.A.は、クライスラー、フォード、フィアットなどと続けてきたモータースポーツでのヘリテージを基盤に2台の『フィアット・クロノスSTC2000』を投入、アルゼンチン最高峰カテゴリーへの参入を発表した。

 2019年からフランス・オレカ製の2リッター直列4気筒直噴ターボのワンメイクエンジンを採用し、新たな時代へと突入したSTC2000だが、時を同じくして地元インポーターの支援を受けたフィアットは、ユリシーズ・アルメリーニ率いるDTAレーシングとジョイントし、ファクトリーチームの“フィアットDTAレーシング”としてシリーズを戦ってきた。

 ワークス参戦当初は『ティーポ』を投入し、その後はBセグメント・セダンの『クロノス』を採用してきたフィアット製車両だが、今回FSモータースポーツS.A.はアルメリーニのチームが基本骨格を製作した車両を活用し、かつてはF1やル・マン24時間などで活躍し、ダラーラ、ウィリアムズ、フェラーリ、ロータス、プジョースポールなど錚々たる組織で働いた経歴を持つ名デザイナー兼エンジニア、エンリケ・スカラブローニの協力を得てSTC2000への新規参入を果たす。

 チーム代表を務めるスアレス・サルビアは、新たにSTC2000に挑戦するこのプロジェクトが、どのように考案され、産声を上げたかを説明した。

「この機会は、我々が引き続きこのスポーツのレベルで何かを証明し成し遂げるため、シリーズオーガナイザーとの親密な協議から生まれたんだ。我々は15年以上の活動を通じてフィアット・コンペティツィオーネの一員であり、これこそがチームに新しい挑戦を生み出す方法だった」と語るスアレス・サルビア代表。

「我々はこの挑戦に際して非常に快適な対話を持ち、このカテゴリーを愛する気持ちもあり、そこからプロジェクトはスタートした。その後、こうしてフィアットの車両を担当する可能性が与えられ、今ではそれが現実になったというわけさ」

プジョーのファクトリー参戦から転換し、2020年までFIAT DTA Racingから参戦した『フィアット・クロノスSTC2000』
かつてはF1やル・マン24時間などで活躍したエンジニア、エンリケ・スカラブローニの協力を得てSTC2000への新規参入を果たす

■チャンピオンシップに向けて素晴らしい状態に仕上げたい

 チームの本拠地がある首都ブエノスアイレスのワークショップには、すでに2台の『フィアット・クロノスSTC2000』がデリバリーされ、車両製作と新たな開発タスクが立案されているという。

「車両はすでにワークショップにあり、我々も最初の宿題を始めたところだが、アルメリーニは2台の真っ白な車体を届けてくれたんだ。それらは(かつての参戦車両でありながら)まるで“0km”のような状態だったよ」と続けたスアレス・サルビア代表。

「チームの美学を反映する取り組みと、シーズン開始のためにそれらを『更新』する必要がある。チャンピオンシップに向けて素晴らしい状態に仕上げたいね」

 また代表は、新シーズンに向けドライバーと技術分野の両方で、チームがどのように構成されるかについても言及した。

「ワーキンググループは(他のカテゴリーを戦っていた)現在の構造と混ざり合う予定だ。ヘルマン・エデルがチーム管理を担当し、来週は2名のエンジニアと話し合い、その他の概要詳細を説明する計画だ」

「すでに新体制に興味を持ったドライバーが何人かいるので、誰がステアリングを握るかを見極めるためにも、一生懸命に努力を傾けるつもりだよ。初年度から非常に“武装した”組織としてスタートが切れそうだね」

 またSTC2000の運営組織は現地1月31日に、2022年のチャンピオンシップに向けオンライン上での“エンジン・ドロー”を開催。シリーズのエンジン部門が新型タービンの採用とファインチューンを実施した2022年仕様ワンメイクエンジンのリビルドを完了し、新シーズンに向けた配布を開始する。

 封印されたエンジンの抽選は、コルドバ州ヴィラ・カルロス・パスにあるプロ・レーシングの施設で行われ、アルゼンチン自動車クラブ(ACA)の自動車スポーツ委員会(CDA)監督の元で実施されている。

シリーズでは、2019年からフランス・オレカ製の2リッター直列4気筒直噴ターボのワンメイクエンジンを採用している
2021年新王者シボレーを筆頭に、トヨタ、ルノー、ホンダ、シトロエン、そしてフィアットの各陣営にエンジンが配布される

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