「女子野球を広めるためではない」巨人女子・島野愛友利がプレーを続けられた理由

2021年9月に東京ドームで始球式を行った神戸弘陵・島野愛友利【写真:荒川祐史】

巨人の背番号1はたとえ女子でも「恐れ多くて付けられません」

昨年、史上初めて甲子園球場で行われた全国高校女子硬式野球選手権の決勝戦。歴史的な一戦で優勝投手に輝いた神戸弘陵のエース・島野愛友利投手は巨人が新設した女子硬式チームに入団する。“1期生”として注目を浴びる右腕は「性別は意識していない」と、男子に負けない野球への思いを胸に女子野球の未来を切り拓いていく。

【動画】神戸弘陵エース・島野愛友利のダイナミックな投球映像

「環境が変わると体調に出やすいタイプなんですが、でも楽しみの方が大きいです。本当にレベルの高い場所で野球ができると思っているので、数えだしたらキリがないくらい、(巨人の男子選手)全員に話を聞きたいです」

チームは今年の春以降にトライアウトを実施するなど2023年の本格始動に向けて準備を進めていく。1期生として入団する島野は2月の春季キャンプへ参加し、現地で野球教室なども行う予定。女子選手が男子の春季キャンプへ参加するのは、先に創設された埼玉西武ライオンズ・レディースと阪神タイガーズWomenには無い取り組みだ。

2度の日本一、原点は「上手くなりたいという気持ち」

幼い頃から“女子選手”として大手スポーツメーカーのプロモーションビデオに出演し、イベントや地方大会の始球式に登場した。女子野球普及のアイコンとして練習以外にも精力的に取り組んできた島野だが、彼女をそこまで突き動かす原動力はなんだろうか。

「女子野球を広めたい思いだけで競技をやっているわけではないです。自分自身が野球選手として上手くなりたいと思う気持ちが“はじめ”だと思っています。でもそこを忘れかけてしまう時があるのは確かで。自分が自分がとなるとしんどくなるけど、野球選手として上手くなりたいという気持ちはずっと持つように意識しています」

巨人では全日本クラブ選手権や全日本選手権の2大会制覇を目指す。進路相談を受けていたという埼玉西武ライオンズ・レディースの内野手で神戸弘陵の川中ももコーチは「教え子がライバルになって、早く対戦したいし、燃えますね。他の教え子たちからの目もありますから、コーチとして絶対に負けられません。こちらもモチベーションが上がります」と語る。

野球をする上で島野は「性別は意識していない」とキッパリ。自身が成した中学で日本一、高校でも日本一の肩書が後ろ盾になっているのだろう。背番号は高校時代と同じく「89(やきゅう)」を背負う。

中学時代の大淀ボーイズでエースの座を争った京本と再びチームメートに

「遊び心のあるデカ番がいいかなって。背番号1は中学のときにずっと目指していた番号で、なかなか取れず、やっと取れた思い出深い番号。だから簡単に付けたくはない。それに永久欠番(王貞治氏の1)は女子チームも付けられないんじゃないですかね? 恐れ多くて付けられません(笑)」

中学時代に大淀ボーイズでエースナンバーを奪い合った仲間も、巨人から育成7位指名を受けて同期入団する。2021年春の選抜で大分県勢54年ぶりの決勝へ進出した明豊の元エース・京本眞だ。切磋琢磨した男子選手と女子選手が、時を経てNPB球団で再びチームメートとなる。

「大淀ボーイズでは、中学3年でエースになって、(2018年ジャイアンツカップ)優勝後の高校生活では、燃え尽きている感じを出したかった時期がありました。野球に熱中している自分が恥ずかしいというか、熱中するのが嫌になって逃げていました。でも、(2021年夏の選手権大会で)優勝したあとは燃え尽きることなく、野球が上手くなりたいと思い続けています。次に燃え尽きるのは結婚を考え始めた頃じゃないですかね(笑)」

巨人軍のユニホームをまとい更にパワーアップした島野の試合を見られるのが、今からとても楽しみだ。(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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