金正恩政権が1月末から大赦(特赦)を計画している。刑期を短縮されて教化所(刑務所)から大勢が出所するが、再犯、報復行為、貧窮などによる社会秩序の混乱を懸念した当局が、出所者の監視・管理計画に注力していることが分かった。(カン・ジウォン)
北朝鮮の最高人民会議(国会)の常任委員会は1月20日、金日成生誕110年、金正日生誕80年にあたり、1月30日から大赦を実施する政令を発表した。
大赦により出所する大量の「元犯罪者」をどう管理するのか、当局が神経を尖らせている。北部地域に住む取材協力者によれば、出所者の監視と管理を徹底させるために、当局が機関や企業に次のように通知したという。
・収監前の職業に関係なく、犯した罪によって管理する。
・企業に配置する出所者は人民委員会(地方政府)の労働部で選別し、社会に適応できるよう全出所者に党員を一人ずつ担任させ、思想教養事業を行うようにする。
・出所が問題を起こしたり社会定着が失敗した場合は、党組職、行政幹部、担当安全員、保衛員(秘密警察)に連帯的責任を負わせる。
・出所者の生活のために1週間分の食糧を供給する。
◆出所者は徹底監視
調査した協力者は、中国国境に近接する地域では、「国境関連犯罪」で収監されていた人が多く、監視・管理が厳格だとして、次のように説明する。
「密輸、脱北幇助、人身売買、麻薬取引など、中国と関連した事件で捕まっていた人たちは特別管理対象に指定され、担当する安全員(警察官)が付き、配置先の企業と監視監督する事前準備をすることになった。
実は、市では出所者を建設専門組織の「突撃隊」「建設隊」などに集団配置して管理することを提案したのだが、労働党委員会が反対して、結局、分散配置させることになった。法的制裁を受けた大量の人が、報復行為に走ったり、徒党を組んで事件を起こしたり、脱北するのを警戒してのことだ」
社会秩序の維持に当局がピリピリしているのが分かる。
◆問題は出所者をどうやって食わせるか
もうひとつ当局を悩ませている問題がある。大量の出所者をどうやって食べさせるのかだ。現在、北朝鮮住民の大半が生活苦に喘いでいる。家族にも余裕がない中で出所してくる人たちが、
「現時点では、出所者本人に一週間分の食糧を与えることだけが決まっている。出所してきても栄養失調状態なのは分かり切っており、家族にしてみれば、どうやって暮らしていくのか心配なのは当然で、関心が集まっている」
金正恩政権は建国70年に当たる2018年8月にも大赦を実施しているが、環境の劣悪な教化所から出所した人たちの大部分が栄養失調にかかったり感染症を持っていたり、行き場がなかったりして、混乱が生じていた。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。