「子宮ミルク」を細胞から分泌 ホホジロザメの繁殖メカニズム、美ら島財団などが解明

 【本部】沖縄美ら島財団(本部町)と東京大学大気海洋研究所(千葉県)は、ホホジロザメが妊娠初期に子宮表面のミルク成分を含む細胞を破裂させ、脂質を多く含む液体(子宮ミルク)を放出して受胎している子ザメを成長させていることを解明した。1月29日に米国の解剖学の学術誌「アナトミカル・レコード」の電子版に論文が掲載された。同財団は「謎の多いホホジロザメの繁殖メカニズムを解明した非常に貴重な成果だ」としている。

 ホホジロザメは全長1.4メートルほどの子ザメを1度に2~10尾ほど産むことで知られている。最初は胎内の子ザメ自身が持つ卵黄を栄養源として成長するが、途中から子宮表面から分泌される脂質に富む液体(子宮ミルク)の供給を受けるようになることを美ら島財団が2016年に明らかにしていた。

 今回は、世界で唯一の妊娠初期の子宮標本を調査したところ、子宮内面の細胞がミルクを蓄え、細胞が破裂することでミルクが供給されることを突き止めた。ほ乳類の場合は乳腺からミルクを分泌させるが、ホホジロザメは細胞にミルク成分を蓄積。細胞が破裂してミルクを供給した後は新たな細胞ができるという。

 2014年に読谷村漁協が捕獲した妊娠メス個体の提供を受け、研究を続けてきた。

 代表研究者を務めた沖縄美ら島財団総合研究センター動物研究室の冨田武照さんは「ホホジロザメは今のところ唯一、授乳するサメだと言われているが、ほ乳類とは違う仕組みでミルクを分泌していたことが分かった。今後、早産の子ザメを人工子宮装置で飼育する研究にもつなげることができれば」と話した。

 (松堂秀樹)

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