「麗」「クリマイ」「無法弁護士」…カリスマ性と円熟味と大人の余裕。唯一無二の存在感を放つイ・ジュンギの魅力

韓国ドラマ「悪の花」で、複雑な内面をもつ難役を真に迫る演技で魅せた俳優イ・ジュンギ。そこで、彼がこれまで演じてきた主なキャラクターを分析。俳優人生の集大成ともいえる「悪の花」のペク・ヒソン役に、いかにしてたどり着いたのか。最終回は黄金期編。15キロ減量して挑んだ「麗」以降の3作品に迫ります。

「無法弁護士~最高のパートナー」©STUDIO DRAGON CORPORATION

多面性をもつ孤独な皇子役でカリスマ性が爆発!

「麗〈レイ〉~花萌ゆる8人の皇子たち~」 2016年

高麗時代を舞台に、現代から魂だけがタイムスリップしたヒロインと、8人の皇子たちが繰り広げる愛と王位争いを描いた王宮ロマンス。“血の皇帝”の異名をもつ光宗の皇子時代ワン・ソに扮したイ・ジュンギのカリスマ性が爆発。

イ・ジュンギ&ヒロイン、へ・スを演じたIUとの好相性、野望と愛の間で葛藤する皇子たちの物語も見る者を惹きつけ、新たなファン層を獲得する名作となった。

仮面と長髪により片目を隠したビジュアルがすでに最強。全身にヒリヒリした壁を作り近寄りがたいが、へ・スに顔の傷を見られた瞬間、戸惑い、表情が震えるなど、もろく弱い面が見え隠れ。久々に会う母に精一杯の笑顔を見せるも、すげなくされてしょげたりと、常に不憫で、いじらしい子供のよう。

へ・スに心を許して以降の強引な愛情表現もたまらない。「お前は私の人だ。勝手に私から離れることも、死ぬことも許さん」などと、キュン死必至のセリフでぐいぐいアプローチする俺様ぶり、悪くない(むしろ良い)。

王座についてからのワン・ソの孤独、切ない求婚、すれ違いの王宮生活など、物語終盤は胸締め付ける展開に涙涙。愛と王位をめぐる兄弟間の対立にハラハラし、唯一信頼で結ばれたペガ(扮ナム・ジュヒョク)とのブロマンスにグッとなりと、8人の皇子たちのドラマも熱い。

頭脳明晰、研ぎ澄まされた身体能力。犯罪捜査のエース役

「クリミナル・マインド:KOREA」 2017年

世界中にファンをもつ大ヒット米ドラマシリーズを世界初リメイク。NCI(国家特殊犯罪捜査局)犯罪行動分析チームに所属する個性豊かなプロファイラーたちを主人公に、緻密でスリリングな捜査劇を繰り広げていく。

真っ先にキャスティングにあがったイ・ジュンギは、チームのエース的存在の捜査要員キム・ヒョンジュン役に。シリアスで恋愛色ゼロだが、さまざまな事件に挑むなかで徐々に浮き彫りになっていく要員たちの背景、人間ドラマに魅せられる作品になっている。

「悪の花」で夫婦役を演じたイ・ジュンギ&ムン・チェウォンは、過去のある事件あるに因縁をもつチームメイト役で初共演している。

ヒョンジュンが使うのは、ロシアの格闘術システマを元にした武術。随所で見せるシャープなまわし蹴り、スピーディかつ生身を感じさせるアクション、無駄のない動きで敵を制圧する姿は、文句なくカッコいい。

また、事件を推理、分析していていく落ち着いたセリフまわしも聞きやすく、捜査ドラマの緊迫感を高めている。

茶目っ気を封印し、感情は抑制されているが、被害者の心に寄り添う優しさ、温かな微笑みのなかに時折見せる寂しげな眼差しが心惹く。名優ソン・ヒュンジュ演じるチーム長ら仲間とのチームプレイと絆、犯人との緊張感あふれる対峙など、見応えも多く、イ・ジュンギ現代劇演技の真骨頂が見られる作品に。

破天荒だけど人間味あふれる弁護士役。格闘技も披露!

「無法弁護士~最高のパートナー~」 2018年

法の抜け道をかいくぐり、ときには拳も使いつつ勝訴を導くアウトロー弁護士が、母を殺した仇でもある巨悪に挑んでいく痛快な法廷復讐劇。「犬とオオカミの時間」でイ・ジュンギの“アクションを魅せる俳優”としての才を引き出したキム・ジンミン監督と11年ぶりにタッグ。

脚本は、「リメンバー~記憶の彼方へ~」のユン・ヒョンホが担当。社会派エンターテイメントとしての痛快さに、ロマンスの胸キュン、仲間たちとの愉快なシーンも盛り込んだ見どころ満載ドラマに仕上がっている。

図々しく大胆なやり方で、法廷をかき回すなど問題を起こしがちだが、実は仲間を助けるためだったり、貧しい負債者たちを助けていたり、知れば知るほど意外な人間力を魅せるイ・ジュンギ演じるサンピルに夢中。 気の強いジェイとサンピルがコンビを組んで事件を解決していく様も痛快。2人の掛け合いも小気味よく、ときに仕事の相棒として、ときに頼れる恋人として、彼女を命がけで守り抜こうとするサンピルにはときめくしかない。

危ない橋を渡ることも多く、大勢の男たちを相手に繰り広げる華麗な蹴り技、手技に魅せられる(アクションでは、得意のブラジリアン柔術を駆使)。「兄貴」と慕うチンピラたちとの愉快なやり取りと熱い絆に泣き笑いし、巨悪の根源を怪演したチェ・ミンスとイ・ヘヨンというカリスマ俳優たちとの演技バトルにゾクゾク。ジュンギには珍しい甘いロマンスシーンもあり。

チンピラ弁護士という、一歩間違えれば、泥臭いはみ出し者になりがちなキャラクターを、大人の余裕を感じさせるスマートさで魅せ、軽妙洒脱で緩急の利いたキャラクターに作り上げている点が目を惹く!


TEXT:高橋尚子(編集・ライター)

Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)

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