<社説>プロ野球キャンプイン ウィズコロナの試金石に

 プロ野球12球団がキャンプインした。オフに準備をしてきた選手たちが3月末の公式戦開幕に向け、チームとして総仕上げを図る。 県内では7球団が始動した。2次から沖縄入りする2球団を含め、9球団がこの地で最終調整に当たる。2年ぶりの観客入りだ。受け入れ市町村、球団は感染防止に知恵を絞る。「ウィズコロナ」のイベントの運営について、プロ野球キャンプは試金石ともなろう。

 まずは選手、監督ら球団関係者、運営に当たるスタッフに報道陣、そして球春の到来を待ちわび、来県されたファンの皆さんを歓迎する。

 キャンプイン初日は暖かな日差しが降り注いだ。天気ばかりはどうにもならないが、本州に比べれば温暖な沖縄を満喫してもらいたい。

 昨季は浦添でキャンプを張るヤクルトが日本一に輝いた。県出身選手の2年連続の新人王獲得など、県勢の活躍が目覚ましい。開幕1軍、レギュラー定着を目指す選手にとっては勝負どころだ。日本ハムの新庄剛志監督の手腕にも注目が集まる。全チームの順調な日程消化を祈念する。

 昨年は緊急事態宣言下でのキャンプインで、無観客となった。今年もまん延防止等重点措置の発令によって、観客なしが懸念されたが、どうにか避けられた。注目されるのは、感染防止対策を講じながら観客を入れての運営である。

 入場者数の制限や観覧場所の規制のほか、ワクチン接種の有無、PCR検査による陰性確認を必要とする球団もある。観客に個人情報の登録を求めるのは、球場などで感染者が確認された場合の追跡調査のためだろう。

 それぞれ手探りで、期間中の変更なども考えられる。有効な手だてを確立し、可能であれば、各球団共通の仕組みも構築してもらいたい。球場巡りがより容易になれば、キャンプの集中する沖縄だからこその売りとなる。

 観覧可能なことしも、自重して来場を控えるファンもいるはずだ。足を運ばずともトップ選手の息づかいを感じることのできるような、引き続きの配信やその他サービスの拡充にも期待したい。

 りゅうぎん総合研究所によると、無観客だった昨年のプロ野球キャンプの経済効果は約23億6600万円で、121億円超だった一昨年の5分の1以下となった。

 落ち込んだ関連収入を戻していくためにも、ファンへのインセンティブの付与など、沖縄キャンプの魅力をより高める戦略的な観光施策を県は検討する必要があるのではないか。

 今後も感染の波が予想され、変異株や派生株の出現も考えられる。感染防止と観光は一見、相反するように見えるが、感染を抑制しつつ、観光客を戻していくために両立は必要だ。キャンプ期間中の実績やデータを蓄積し、今後の施策に有効活用すべきだ。

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