「成長とともに“変身”するグラブ」 桑田真澄氏も愛用する老舗メーカーの工夫

桑田真澄氏も愛用する老舗メーカーの工夫とは

子どもの成長に合わせて自在に調整できる「フィンガーループ」

巨人の桑田真澄投手チーフコーチが現役時代から愛用しているのが、「ワールドペガサス」のグラブだ。グラブには特に強いこだわりを持つブランドで、少年用グラブには子どもの成長に合わせて調整できる工夫が凝らしてある。大人の手も入るようになっており、親子で感触を確かめられる。

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「ワールドペガサス」の名前を聞くと、巨人の桑田真澄コーチの顔を思い浮かべる野球ファンは多いだろう。プロ入りした巨人でもメジャーリーグのパイレーツでもワールドペガサスのグラブが相棒で、指導する立場になった現在も使っている。

ワールドペガサスジャパンの専務でグラブマイスターの西島唯博(にしじま・ただひろ)さんは、「手にフィットするグラブ」を追求してきた。その考えはプロ用だけでなく、少年用のグラブでも同じ。グラブの入口を広げたり締めたり調整できるようにしたのも、こだわりの1つだ。西島さんは「お子さんの成長に応じて調整できるようになっています。手を入れる部分を広げられるようにしたのは、親御さんが実際にグラブをつけて感触を確かめるためです」と意図を説明する。

グラブの手口の大きさを調整できるワールドペガサスの少年用グラブ【写真提供:ワールドペガサスジャパン株式会社】

子どもは大人と比べて握力が弱い。グラブが手になじまなければ捕球の確率は下がる。手にフィットし、さらに成長しても対応できる、もう1つの工夫が中指と薬指の部分に付いた「フィンガーループ」。紐を引っ張るだけでループの大きさを自在に調整でき、中指と薬指のどちらかのみをループに通すことも可能だ。

グラブと手のフィット感を向上させる「フィンガーループ」【写真提供:ワールドペガサスジャパン株式会社】

「フィンガーループ」採用は女子選手の悩みがきっかけ

少年用グラブに「フィンガーループ」を付けるきっかけになったのは、3年ほど前の女子野球との出会いだった。女子野球の普及に熱心だった桑田コーチの影響もあって、ワールドペガサスでは女子の硬式野球用のグラブにも力を入れている。西島さんが実際に全国の女子チームを訪ねると、これまでに聞いたことのない悩みを耳にした。

「グラブが弾かれる、グラブが落ちると初めて言われました」

当時、女子選手は男性の硬式用グラブをつけていた。手のサイズはジュニア用が適していても、軟式用では柔らかすぎて耐久性もない。女子用のグラブが販売されておらず、男性用グラブでプレーするしか選択肢がなかったのだ。サイズが大きくて手に合っていないため、ライナーを捕球しようとするとグラブが弾かれ、グラブを下に向けて構えたり打球を追ったりするとグラブが外れて落ちてしまったという。

そこで、西島さんが取り入れたのが「フィンガーループ」だった。女子選手の中でも手が小さい人や指が細い人も、グラブが手にフィットする。西島さんは「グラブが手に合わないと悩んでいる女子選手や少年は多いので、フィンガーループを知ってもらうのは意義が大きいと思います」と語った。選手の悩みを解決し、親子で感触を確かめられるワールドペガサスのグラブは、少年野球や女子野球も支えている。(間淳 / Jun Aida)

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