新庄監督は「派手な選手を使うのかと…」 意外と地道なスタイルに勇気得た元・育成選手

日本ハム・宮田輝星(左)と新庄剛志監督【写真:荒川祐史】

プロ3年目の宮田輝星、新庄監督はテレビと「全然違った」

新庄剛志監督の指導に触れるにつれ、勇気をもらっている日本ハムの若手選手がいる。2020年に育成ドラフト1位で日本ハム入りし、昨年8月末に支配下昇格した宮田輝星外野手だ。足と肩に“自信あり”の元・育成選手は「派手な人を好んで使うのかなと思っていたら、全然違う」と新庄監督のイメージが大きく変わったという。現役時代の指揮官のような俊足好守で、プロの世界を生き抜いていく。

キャンプイン初日、新庄監督は予告通り沖縄県国頭村を訪れ、2軍キャンプの視察からスタートした。「君たちは2軍じゃない」と伝えたいという思いからの行動だ。宮田は昨秋、新庄監督が就任直後のキャンプにも参加。ここまで指揮官の言葉に触れる中で、見方が大きく変わったという。

「本当にテレビで見ていた人なので……。派手な人を好んで使うのかなと思っていたら、全然違った。野球に向かって真摯に取り組んでいる選手、マジメにやっている選手を平等に見てくれている印象です」

1日、新庄監督のキャンプはまず見ることからスタートした。最初に直接指導が飛び出したのは走塁だ。チームの得点力を上げるのに必要不可欠なのは、より攻撃的な走塁改革。二塁走者が三塁を回るとき「ベースを“ストッパー”に」使い、鋭角に回るようにと指導した。この中で宮田は新庄監督から、お褒めの言葉をもらったのだという。

「一番始めに、足の速さは走塁の巧さに直結しないという話がありました。1点を取るところでの三塁ベース周りの動きや、使い方を教えてもらいました」。出来る限り本塁へ一直線に入るという、普段からの心がけを認められたのだ。

好守俊足が売りの宮田にとっては「同じ価値観でいてくれる監督」

大学から入団3年目、2軍キャンプからのスタートに、焦りがないわけではない。それでも「最初は代走や守備固めが多いのかなと思っています。でも昨年以上に、レギュラーにこだわってやっている。両打の特性をアピールしていきたい」。そう思えるのも、新庄監督の目指す野球を肌で感じているからだ。

この日指揮官は、2軍野手陣の「4か所ノック」をグラウンドの中に陣取って見つめた。気が付けば自身の“古巣”である中堅にいることが多く、ノックを受ける宮田、木村文紀、片岡奨人の外野手3人に声をかける場面も目に付いた。フライを捕るとき「もっと後ろから意識して入ろう」というアドバイスだったという。打球に対するわずかなチャージが、アウトとセーフを分けることがある。そんなギリギリの場面を、何度も経験して来たからこその言葉だった。

新庄監督の就任で、チームは守備や走塁を重視し、数少ない得点を守り切るスタイルに変化していくのではと見る関係者は多い。そこで必要なのが宮田のようなスペシャリスト。すでに秋のキャンプから「足には注目しているよ」との言葉を新庄監督からもらったという。

「バッティングは水物とよく言います。その年やその月によって変わる。でも守備や走塁はそうではありません。1回つかめば変わるものではない。同じ価値観でいてくれる監督は、僕にとってはいいのかなと思っています」

新庄監督のキャンプ初日は、球場まで“三輪オートバイ”で登場、2日には陸上十種競技の元日本王者で“百獣の王”こと武井壮氏が臨時コーチとして登場する。グラウンド内外で話題を提供する一方で、細かなこだわりを忘れない。言葉のひとつひとつが、選手とチームを変える原動力になっていく。

○宮田輝星(みやた・ほくと)1997年12月2日、鹿児島県出身の24歳。出水中央高から福岡大へ進み、2020年に育成ドラフト1位で日本ハム入団。当時の背番号は111。1年目は2軍公式戦40試合に出場し打率.319。チームトップの13盗塁を記録した。2年目の昨季は、8月31日に支配下登録され、背番号が69に変わった。9月1日のオリックス戦(札幌ドーム)でプロ初出場。5試合で2打数無安打という成績を残した。身長177センチ、体重76キロ。右投げ両打ち。(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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