【在宅医・佐々木淳】潮目は変わってきた。あまり良くない方向に。

(佐々木医師提供)

明らかに潮目が変わってきました。
遠隔診療では対応できないケースが徐々に増えています。

今日は、第六波で初めてコロナ肺炎と思われる低酸素血症に、在宅酸素を導入しました(さまざまな事情で入院ができない人もいるのです)。

感染から1週間前後で重症化するのはデルタと同じ、というか、重症化するケースはデルタによるものも含まれているのかもしれません。
「オミクロンは重症化しない」という安心感は、いろんな意味で危険です。特にワクチン未接種の方は、しっかりと自分の身を守ってください。本当にお願いします。

第六波の最大の特徴は、第五波の時には全くなかった高齢者施設におけるクラスター対応。全数PCR検査で陰性確認後、発熱者→再検査→陽性、というケースも経験しました。数十人単位のクラスターも複数出てきています。
連携医が新型コロナに感染し戦線離脱、入居者の約半数が陽性という状況で、間違いなく全員が濃厚接触者であろう職員たちが疲弊した様子でケアを継続しているという現場も。

ウイルスが侵入するのが先か、ブースター接種が完了するのが先か、ギリギリ、というか、やはりギリギリアウトでしょうか。もしかすると消耗戦になるかもしれない、という嫌な予感がしてきました。
施設向けのブースター接種は1月中には概ね完了予定ですが、あと2週間早く終えることができていたら・・・と思うと、本当に悔しいです。

現在、往診専従1ルート+遠隔診療専従1ルートで対応していますが、往診専従をもう1ルート増やすことにしました。
重症化のピークが7日後くらいと考えると、在宅コロナ対応のピークはまだまだ先。バレンタインデーのあたりが怖いです。

東京の病床稼働率は50%を越えました。

限られた病床を守るために、重症化しやすい高齢者が集住する介護施設を守ることが最も重要であると考えます。

早期発見・早期対処によるクラスター化の抑制、適応症例への中和抗体薬の投与、入院を希望しない高齢者のケアの在宅療養支援の継続、やれることはやります。

早期退院の支援も重要だと思います。在院日数を半分にできれば、2倍の患者さんを受け入れることができます。容態が安定したら自宅または療養施設へ、そんな流れが作れるよう、積極的に支援に関わりたいと思います。

いずれも看護・介護専門職の方々と連携しながら、連携医・在宅医としての責任を果たしていきたいと思います。

繰り返しになりますが、ワクチン未接種の方は、ご自分の身をしっかりと守ってください。

明けない夜はないはずだけど、まだ実は丑三つ時のあたりなのかもしれません。

佐々木 淳

医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長 1998年筑波大学卒業後、三井記念病院に勤務。2003年東京大学大学院医学系研究科博士課程入学。東京大学医学部附属病院消化器内科、医療法人社団 哲仁会 井口病院 副院長、金町中央透析センター長等を経て、2006年MRCビルクリニックを設立。2008年東京大学大学院医学系研究科博士課程を中退、医療法人社団 悠翔会 理事長に就任し、24時間対応の在宅総合診療を展開している。

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