村治佳織によるポッドキャスト、Spotify Music+Talk『村治佳織のMusic Gift』#4

昨年12月、7年ぶりのベスト・アルバム『ミュージック・ギフト・トゥ』をリリースしたギタリスト、村治佳織によるポッドキャスト、Spotify Music+Talk『村治佳織のMusic Gift』がスタート。コロナ禍を耐え忍んでいる全ての人に、音楽で癒しやエールを送りたいというアルバムのコンセプトにちなんで、「ギフト」「贈り物」をテーマにしたショートストーリーを村治佳織が朗読、その内容にぴったりの楽曲をセレクトしてご紹介する内容になっている。ここでは、村治佳織が朗読した、心がほんのりあたたかくなるショートストーリーをご紹介。今回は、最終回、エピソード4。

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1. ありささん(東京都)の「ギフト」なエピソード

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ニューヨークのタクシー

大学3年生の頃、周囲は就活をするなか、私はせっせと留学の準備をし、親しい友人達が内定をもらう春頃、私は留学のため渡米しました。アメリカでは、4人も現地の大学に通うルームメイト達がいましたが、シャイを極めており、あまり積極的にコミュニケーションは取らなくても、必要最低限の会話で、なんだかんだ生活ができていました。

そんな自分を変えてくれた言葉があります。

「もっと話しなよ!シャイになっちゃダメだ。君は君自身で人生をつくっていかないといけないんだ」

友人を訪ねに旅行に出掛けた時に、ニューヨークのタクシーで、運転手から言われたひとことでした。タクシーに乗ってすこし会話をした、一瞬のうちに見抜かれていたのです。タクシーの運転手は、母国からアメリカに来て、最初は全然英語も話せず職もなかったこと、自分でここまで道を切り開いてきたことを真剣に話してくれました。

私は、とにかく衝撃的だったのですが、これは胸に刻みこまなくてはと思い、タクシーから下車した時にもらったレシートにその言葉を書き留めて、ずっとお財布のなかにしまっていました。

旅行から帰り、ルームメイトとは勇気を出して少しずつ話すようにしてみたり、受講を躊躇していたプレゼンテーションのクラスや、社会人やネイティブの多いマーケティングのクラスをとってみたり、すこしずつですが、その時の言葉が自分の行動を変え、今の自分に繋がっているなぁと感じます。

名前も聞けずにタクシーを降りてしまいましたが、今でもその時の一瞬の出会いに感謝しています。

村治佳織セレクト・・・Music Gift to ありささん

トロイメライ ~ 「子供の情景op.15」より(シューマン/A.セゴビア:編曲)

© Ariga Terasawa

2. シャインマスカットさん(島根県)の「ギフト」なエピソード

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ある日突然、50歳のおじさんは女子高生に恋をしました。

YouTubeを見てたらタモリさんの番組に高校生からぬ落ち着いた雰囲気の女の子がクラシックギターを持って現れました。切れ味鋭くそして美しい演奏で「グリーンスリーブス」を弾いた女子高生は村治佳織さんと言うプロギタリストさんでした。お顔も可愛いかったのですが凛とした佇まいと演奏に一目惚れをしてしまいました。

おじさんはそれから彼女のCDを聴きまくり、そしてギターと「グリーンスリーブス」の入った彼女の楽譜本を買い、練習を始めましたが、全く歯が立たず。クラシックギター教室に通い始め今ではギターが恋人となっています。

辛い時も苦しいときも音楽があったらから乗り超えられた気がします。夢はレパートリーが増えたら子供たちの前で演奏会をして歩くこと、憧れのロマニニョスさんのギターと共に。

村治佳織セレクト・・・シャインマスカットさん

フラジャイル(スティング/ドミニク・ミラー編)

© Ariga Terasawa

3.  Uraraさん(兵庫県)の「ギフト」なエピソード

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2年前に白血病になった。

1年程の抗がん剤治療の入院。それまでは、3人の子育て、家事、仕事で毎日が業務作業の様に追われる日々だった。3人の子供達の毎日ある塾や習い事の送迎のやり繰りやフォローに半ば意地になっていた。夫に頼る事もゆっくり向き合う事も無かった。緩やかに破綻していたのだと思う。

病気になった事で、改めて家族の存在と自分の役割を見つめ直せた。子供の為にも、私はまだまだ生きていたいと強く思えた。夫がこんなに大事に思ってくれていたのを知った。あと、私自身の人生の存在を気づかせてくれた。

きっとこの病気はギフトだったのだろう。 ギフトのお返しは、再発させないように自分を大切にして、家族の為にも長生きする事なのだと思う。

村治佳織セレクト・・・Music Gift to Uraraさん

応援歌「いのちの停車場」

© Ariga Terasawa

■リリース情報

2021年12月1日発売
村治佳織『ミュージック・ギフト・トゥ』

© ユニバーサル ミュージック合同会社