「役員のパワハラで苦痛」と提訴 和歌山南漁協の元職員

 和歌山南漁協(本所・和歌山県田辺市)日置支所で主任として働いていた男性(50)がこのほど、在職時に役員からパワーハラスメントを受けて退職を余儀なくされたとして、漁協と組合長ら役員3人に1100万円の損害賠償を求める訴えを和歌山地裁に起こした。

 訴状や男性の話によると、漁協が田辺市や白浜町から補助金などを不正受給した問題を巡り、2018年春にテレビ局の取材を受け、事実関係を認める趣旨の話をした。問題を受けて当時の役員が辞任し、19年10月に新役員が決まった後、呼び出されて不正の告発者との関係を何度も問いただされ、懲戒免職の話も持ち出された。これらが原因で眠れなくなり、神経症と診断され、昨年4月に退職した。役員の言動は、内部告発者を保護する公益通報者保護法に違反するとも主張している。

 男性は、すでに別の仕事に就いていて、精神的な苦痛を和らげるための薬を現在も服用しているという。取材に対して「ずっと続けるつもりの仕事だった」と語った。

■組合長は否定

 漁協は「訴状が届いておらず、コメントできない」としている。三栖敏一組合長は取材に対し、パワハラを否定。「注意することはあったが、そうした発言の背景には人生を預かっているという親のような思い、責任感があった。パワハラと受け止められているのであれば残念。組合へ戻ってきてほしいというのが願いだ」と語った。

 和歌山南漁協では、田辺市や白浜町から約20年にわたって計約7600万円を不正に受給していたことが発覚。漁協は市に解決金3500万円、町には返納金約2118万円を分納で支払うことにしている。このほか、町には約574万円を返納している。

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