ミャンマー軍事クーデターから1年…今、日本ができることは

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。1月31日(月)放送の「フラトピ!」のコーナーでは、2月1日で軍事クーデターから1年を迎える“ミャンマー”について深掘りしました。

◆武力で自国民を制圧したミャンマー国軍の軍事クーデター

2021年2月1日、ミャンマー国軍がアウンサンスーチー氏とウィン・ミン大統領を拘束・軟禁しました。まずはそこに至る経緯から見ていくと、2020年11月、総選挙でスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)が改選議席8割を獲得し、圧勝します。しかし、国軍は選挙結果が不正だと主張し、クーデターへと発展。

国軍が政府関係者を次々と拘束するなか、「建国の父」アウンサン将軍の長女で民主化運動の指導者、NLDの党首でもあるスーチー氏も例外ではなく、現在は禁固6年の有罪判決を受け、汚職や機密情報漏洩の裁判次第では禁固150年以上になる可能性もあります。

こうして民主主義が暴力によって奪われていくミャンマーの現状に、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは「軍隊というのは暴力装置」と言い、「それが自国民の制圧に向かったときに社会規約は崩壊する」と主張。武力で自国民を制圧したミャンマーの軍事クーデターを批判します。しかし、「一方で西側の価値観だけで判断してもいけない」とも。

政治プラットフォーム「PoliPoli」代表の伊藤和真さんも「暴力による制圧は民主主義の根本を揺るがす」と大空さんの意見に同調しつつ、現代社会の情報発信に関して言及。今やSNSなどを通してミャンマーの状況が世界へと発信されているだけに「海外の人が『これはおかしい』と声をあげられる、個人が発信できる時代になってきているので、引き続き勇気ある行動を応援したい」と述べます。

◆軍事クーデターから1年経ったミャンマーを振り返る

軍事クーデターから1年が経ったミャンマーですが、その間にはさまざまな出来事が。2021年3月27日には国軍記念日の式典が行われ、デモ参加者114人が死亡。

そして、4月には日本人ジャーナリストの北角裕樹さんが拘束(5月14日に開放)。7月には国軍が任命した選挙管理委員会が総選挙は正式に無効と判断し、その後2022年1月には国軍が全ての少数民族武装勢力と2022年末まで一方的に停戦すると表明していますが、その間の国軍弾圧による死者数は1,400人以上にのぼっています。

さらには、クーデターによって国内の飢餓も進行し、一部の地域では内戦とみられる戦闘も。政情安定時には多くの投資を受け、経済発展を目指していましたがそれも頓挫。とにかく深刻な状況にあるミャンマーですが、大空さんは「これは中国の問題でもある」と指摘。というのも、かつてミャンマーは軍政が経済発展を目指すあまり、中国の影響力が拡大。それに対抗するために西側諸国の価値観を持ったスーチーさんが台頭したという背景があるから。

また、2月1日にはミャンマーで「サイレントストライキ」が計画されていて、現地ではSNSなどを通じて沈黙の抵抗があり、国軍側もそうした抵抗勢力を排除しようと躍起に。そこで大空さんは「SNSは繋がっている、日本にいても繋がっているので、(どこにいても)応援する方法はいくらでもある」と伊藤さん同様、支援を呼びかけます。

◆ミャンマーを巡る国際社会、日本はどうするべきなのか?

一方、ミャンマーを巡る国際社会については、アメリカやイギリス、カナダ、EUでは国軍に経済制裁を与えています。しかし、中国は内政干渉にあたるとして静観。そして、ASEAN(東南アジア諸国連合)は議長国をカンボジアとして仲介外交を行っています。

そうした状況に、キャスターの堀潤は「カンボジアと中国の関係も今、非常に緊密化している」と危惧。実際、カンボジアのフン・セン政権は中国からの支援とともにやっていくと表明しており、ミャンマー国内では民主派グループが国際社会に対して「国軍と交渉しないでほしい」という声をあげています。

では、日本政府の対応はどうなのか。現在は国軍に対し「暴力の即時停止」、「拘束された関係者の解放」、「民主的な政治体制の早期回復」を要求し、新規の政府開発援助(ODA)を停止していますが、継続中の案件を含む全面停止には踏み込んでいません。

そこには日本政府に日本企業、さらには現地企業も絡み、雇用面でもさまざまな影響があるなどODAの意義はとても複雑で、停止か否か大きなジレンマがありますが、伊藤さんは「外交はすごく複雑に絡みあった難しい問題」と熟考。その上で「今の時代、ネットでいろいろな情報が落ちていて、繋がっているので、日本からでもそういう情報を取りにいったり、声をあげることは効果的だと思うので、意見のある方はぜひ声をあげてほしい」とネットの有用性を語り、改めて日本からの支援を希求します。

かたや大空さんは、この状態を終わらせるための手段として「武力を取るより、経済を取ったほうが、利益があると国軍側に思わせること」と言います。そして、そのためには「日本はASEANを支援しつつ、経済的な支援は円借款(民間金融機関の融資より低い金利で長期の資金を貸し付ける制度)というスキームがあるので、そのなかで最大限やっていくことしかない」と私見を述べました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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