<南風>干潟の鳥、干潟のゴミ

 観測船勤務のころ、那覇入港中に必ず訪れていたのが豊見城市の「三角池」だ。有名な野鳥観察地で、世界的希少種クロツラヘラサギが毎年越冬する。今季は16羽が滞在している。
 三角池は期待を裏切らない。日本で観察機会が少なく、「珍鳥」と呼ばれる鳥がしばしば観察される。近くの具志干潟や漫湖でも数多くの野鳥を観察でき、遠くへ出掛けられないコロナ禍にあっても、人とほぼ接することなく鳥見(バードウオッチング)を楽しめる。
 しかし、三角池や漫湖でいや応なく目に入るのが大量のゴミだ。目立つのはペットボトルや弁当容器などのプラスチック類。飲料缶やスプレー缶、大物ではタイヤや自転車まで、ゴミは実に“多彩”だ。鳥見は楽しいのだが、このゴミを見る度に悲しい気持ちになる。
 そんな時知ったのが、「漫湖・水鳥湿地センター」が主宰するボランティア活動だ。センターの木道沿いや漫湖周辺の湿地でゴミの回収・分別を行うほか、野鳥観察のガイド補助など、センター主催のイベントを手伝う。センターの木道を歩きながら、「あれを取れないか」といつも気掛かりだったゴミを自らの手で除去できた時、喉のつかえが取れたような感覚を覚えた。
 沖縄の海岸には多くのゴミが漂着する。外国語が書かれているものも多数ある一方で、日本の「下流」に位置する米国などでは同様に日本語記載のものも多いのが現実だ。漫湖周辺で回収されるゴミのほぼ全てが事実「国産」だ。我々自身のモラルが問われていることを自覚すべきだろう。
 2月2日は、漫湖も登録されている「ラムサール条約」締結を記念した「世界湿地の日」だ。将来海洋中のゴミの質量が魚の質量を超える予測がある。干潟のゴミが干潟の生物の質量を超えないこと、そして干潟を含む湿地が健全な水辺環境であり続けることを願う。
(河原恭一、沖縄気象台 地球温暖化情報官)

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