ベッテル、F1におけるサステナビリティへの取り組みの遅れを指摘。ドメニカリCEOは環境保護と事業の妥協点を探す

 F1のCEOを務めるステファノ・ドメニカリは、サステナビリティへの取り組みが遅いとF1を批判したセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)の発言に耳を傾けており、その内容も「真剣に」受け止めていると語った。

 2019年以降、F1は環境保護に向けた各種の受動的な、あるいは自発的な活動に取り組んでいる。よりサステナブルなF1を実現し、さらに2030年までの二酸化炭素排出量実質ゼロ化を目指すためだ。

 サステナビリティを追求する取り組みの一環として、F1は今シーズンから90%の石油製品と10%のバイオエタノールを混合させた『E10燃料』に切り替える。また、2026年に導入予定の次世代ハイブリッドエンジンについては、できれば完全にサステナブルな燃料を使用したい考えだ。

 F1コミュニティはこうして環境保護意識を高めているものの、ベッテルから見ると、必ずしもその動きが早いとはいえないようで、環境に優しいスポーツを実現するうえでF1にできることはもっとあるはずだという。

「今はより環境に配慮しながらも、スペクタクル、興奮、スピード、チャレンジを犠牲にしないF1を実現させるためのさまざまなイノベーションや可能性がある時代だと思う」と、ベッテルは昨年語っている。

「ここには多くの優秀な人たちがそろっているし、高いエンジニアリング力がある。解決策を見出せるはずだ。現行のレギュレーションは素晴らしい内容だし、エンジンも超効率的だと思うけれど、これでは実際の役に立たない」

「たとえば、2年後に新しい自家用車を買おうと思い立ったときのエンジン規格にはならない。だから、何が妥当なのかをもっと議論できるはずだよ」

2021年F1アブダビテスト セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)

 ドメニカリはベッテルの発言について、その懸念をはねつけるつもりはなく、むしろ前向きなものと捉えているという。

「これを批判だとは考えていない」とドメニカリが語ったと『F1 Insider』が報じた。

「未来について真剣に考えている人による前向きな発言だと思っている。彼とは、この件について幾度となく話してきた。私にとって、これは建設的な批判なのだ」

 しかし、より大局的な見地に立つドメニカリは、サステナビリティを目指すF1の取り組みは現在進行中だと考えている。

「我々は現実的にならなければならない。F1はサステナビリティについて長い間考えてきたし、今後も正しい方向を目指し続ける」

「2014年以降、我々は圧倒的に効率の良いパワーユニットを使ってきた。そして、これからはサステナブルな燃料への切り替えを計画している。この動きは、世界中のモビリティおよび自動車産業に対して大きなインパクトを与えるだろう」

「同時に、各プロモーターには二酸化炭素排出量が実質ゼロになるようなやり方でF1を開催してもらうよう働きかけている。それでもさらに取り組みを進め、もっと良いF1になってほしいというセブの言葉を、私は真剣に受け止める」

 ドメニカリはまた、F1における環境保護への取り組みと、F1事業の優位性とのあいだで、適正なバランスが保たれることの重要性を強調した。

「常に適正なバランスを追求しなければならない。結局のところ、F1はビジネスでもある。全ての当事者間で妥協点を見出すべきなのだ」

「F2やF3でもっと素早い動きがとれるのは、より標準的なマシンと標準的なエンジン、標準的な燃料を使用しているからだ。一方で、開発にかなりの時間を要する巨大なマニュファクチャラーが集まっているのがF1だ」

セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)のヘルメットには『CHANGE THE WORLD sip by sip』と変化を促すロゴが入っている
2021年F1第10戦イギリスGP 『PLEASE DON’T LITTER KEEP IT CLEAN』と書かれたTシャツを着用したセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)

© 株式会社三栄