山川恭弘(2020)『全米ナンバーワンビジネススクールが教える起業家の思考と実践術 あなたも世界を変える起業家になる』東洋経済新報社

今月からスタートした「フクリパブックス」、ビジネス系書籍をアカデミズムの世界から紹介してくださるのは、福岡大学・商学部の飛田努准教授です。アントレプレナーシップを重視したプログラムなどで起業家精神を養う研究、講義を大切にされています。毎年更新されるゼミ生への課題図書リストを参考に、ビジネスマンに今読んで欲しい一冊を紹介していただきます。

今月からスタートした「フクリパブックス」、ビジネス系書籍をアカデミズムの世界から紹介してくださるのは、福岡大学・商学部の飛田努准教授です。

飛田先生は過去にフクリパでもご登場いただきました。

アントレプレナーシップを重視したプログラムなどで起業家精神を養う研究、講義を大切にされています。毎年更新されるゼミ生への課題図書リストを参考に、ビジネスマンに今読んで欲しい一冊を紹介していただきます。

* * *

栄えある第1回は,日本を代表するアントレプレナーシップ(起業家精神)研究者であり,米国ボストン近郊にあるバブソン大学で教鞭を取られている山川恭弘先生の『起業家の思考と実践術』(表題がとても長いので略します)を紹介します。本書は日本における「アントレプレナーシップ教育のバイブル」とも言えるものです。

◆全米ナンバーワンビジネススクールで教える起業家の思考と実践術―あなたも世界を変える起業家になる

本書は会社勤めをしているけれどもパッとしない若者が,あるときに「起業の失敗学」の伝道者である”Dr. Failure”と出会い,起業を志し,失敗を繰り返しながら,やがて成功する。その若者が試行錯誤をする様子を読みながら,アントレプレナーシップのエッセンスを学ぶことができます。文体もやさしく,物語調で進むため,非常に読みやすい本です。

また,己を知る,自問自答と多聞多答といった「自分自身が誰なのか?」を問うこともあれば,生涯をかけて情熱を持ち続ける問題を探そうという「生きる目的,起業する目的」を問いかけてくることもあります。あるいは,「失敗は必然で柔軟な方向転換が必要」,「進んで失敗をすることが新たな価値を生み出す突破口」だといったリスクと不確実性への向き合い方=心構えを教えてくれます。

つまり,本書からアントレプレナーシップを学ぶことを通じて,不確実な社会において「自分がいかにあるか」,「リスクと不確実性に向き合い,いかに新たな価値を生み出すか」に加えて,何より社会人が嫌う「失敗から多くを学ぶ」という姿勢を得ることができます。

PayPalを生んだ世界的な起業家であるピーター・ティールは,「自分たちの頭で考え抜くこと」が新たな価値を生み出す上で重要な考え方だと訴えています。しかし,わたしたちは日々の業務に追われる中で行動や思考が保守的になりがちです。すぐに答えを求めがち。そうした状況でも,先を見据え,事業を通じてどのような価値を提供していくことができるのか。それを考え,実践することがアントレプレナーシップの発揚であり,仕事をより豊かにすることにつながるのかもしれません。起業家だけでなく,誰もが持ち合わせるべき志向性。それがアントレプレナーシップです。一歩踏み出してチャレンジすることと言い換えても良いでしょう。

本書から学ぶことで,「働く」ことを通じて明るい未来を築いていけるようにしませんか。とても仕事に前向きに向き合えるようになれる1冊です。ぜひご一読ください。

* * *

飛田先生のご著書『経営管理システムをデザインする』はこちら

© 株式会社えんメディアネット